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第19話 ジェシカと迷子の少女

 私はエリム

今日は買い物をしに街に出ていた。


「あれは?」


 街を歩いていると友達のジェシカが少女と何か話をしていた。


「ジェシカ、どうしたの?」


「エリム!丁度良かったわ!」


「何があったの?」


 一体何が丁度良かったのか?

気になった私はジェシカに理由を聞いてみる。


「この子、道端で倒れてたのよ」


「道端で?」


「で、私が起こしてあげてどうしてあそこで倒れていたのとかどこから来たのかを聞いてみてもこの子、一切喋らないのよ」


 どうやらジェシカはこの少女が倒れていた理由やどこからここに来たのかを知りたいらしい。


 倒れていたのなら気になるのも無理はないだろう。


「ねぇ...どうして倒れていたの?」


 試しに私が聞いてみる。


「...」


 少女は喋らない。


「あーもうっ!焦ったいわね!」


「ジェシカ落ち着いて...」


 ジェシカが怒ってしまった。

落ち着かせたい。


「そうだ!私、これから買い物に行くんだけど2人もどうかな?」


「え?まぁ...良いけど...」


「...」


「じゃあ行こ〜」


 楽しいことをすればこの雰囲気を和らげられるかもしれない。


 そう考えた私は、買い物に向かう。

ジェシカも少女もついて来てくれている。


「これだっ!」


 私は目当てのペンを買い物カゴに入れ、購入した。


「...」


 少女はどこかに視線を向けている。


「何見てるの?」


 気になった私は少女と同じ方を向いてみる。


「あれは...?」


 猫の着ぐるみが風船を配っていた。


「あれは着ぐ...」


 ジェシカが着ぐるみと言おうとしたが、私が前に出た。


「まだ小さいから!夢守ろうよ!」


「そ、そうね...」


 ジェシカがここで着ぐるみと言って仕舞えば、少女の夢が壊れてしまいかねないので私が止めた。


「見ていく?風船、貰えるかもよ?」


「...」


 少女は頷いた。


「…」


 かなりゆっくりと少女は着ぐるみの方へと近づいて行く。


 そして。


「…」


 少女は風船を貰った。


「ほら、ここで言う言葉…分かる?」


「…ありがとう」


 少女は口を開き、着ぐるみにお礼を言った。


「おぉ!エリム、やるわね」


「ま〜ね〜。でも、この子もちゃんと言えたし偉いよ」


「そうね」


 少女はまた無言に戻ってしまった。


「何か良いスポットない?この子でも楽しめれそうなところ…」


「何かって…あぁ。あそこがある」


 誰でも良さそうなスポット、私が思い当たるところはあそこがある。


 行ってみるとしよう。


「わぁ。綺麗ね」


 ここはフロンティア学園の近くにある展望台だ。

以前、ベルリスにここを紹介してもらったが、とても良い場所なのでまたここに来た。


「...」


 少女はじっと景色を見ている。


「良いよね。ここの景色」


 少女は景色を見ながら私とジェシカの方も向いて見ている。


「えっと...どうしたの?」


 私とジェシカの方を向いて見てきた理由が気になった。


「...恋人同士みたい」


 ここでまさかの一言を放たれた。


「え!?」


「そ、そうかしら!?私たち、そんなにカップルに見えるかしらね〜!?」


 先程のお礼依頼に聞けた一言であったが、まさかだったので私とジェシカも焦ってしまう。


 というか、恋人同士に見えていたのか。


「そんな訳ないわよね〜!ねっ!ねっ!」


「痛い!痛い!」


 ジェシカはかなりの強さで私の肩を叩いてくる。

普通に痛い。


「ふふ...」


 まさかの少女が笑った。


「あ、笑ったわね」


「面白かったのかな...」


 ずっと真顔だったので笑ってくれて良かった。


「そろそろ日が暮れるし降りよっか」


「この子どうするのよ?」


 確かに。

この後どうすれば良いか?


「騎士の人に聞いてみよう。もしかした何か手掛かりがあるかも」


「そうね」


 騎士の人から多分、この少女の両親等を見つけてくれるかもしれない。


 なので、3人で展望台から降りて騎士の人を探した。


「あ、あれは!」


 ベルリスを見つけた。


 だけれど。


「はいこれ」


「くっ、殺せ!」


「ベルリスお姉ちゃん面白い〜」


 ベルリスは近所の子供たちとカードゲームで遊んでいた。


 あれ?仕事中じゃないの?と気にはなるが触れないでおこう。


「ベルリスは...今遊んでるみたいだから違う騎士の人に...」


「あの!」


 そうしていたら、誰かが私たちに話しかけてきた。


「あぁ良かった...心配してたのよ...」


「誰ですか?」


 その人物は少女を抱えた。


「えぇ...この子の母です」


 母親だった。


「この子、倒れていたから私が助けたのよ。で、喋らないから何か分かるまで私たちと一緒にいた訳」


 ジェシカが軽く今までの経緯を説明する。


「そうだったのね...急にどこか行っちゃうから心配で心配で...見つかって良かったわ。迷子になったままだったらどうしようかと...」


 喜んでいる。


 大事な娘が見つかったのだ。そりゃそうだろう。


「じゃあ私たち、行くわね。元気にするのよ」


「うん...ありがとう。お姉ちゃんたち。今日、とっても楽しかった...」


 少女は笑顔で私たちにお礼を言った。


「私、良いことしちゃったわね〜」


 ジェシカは誇りげになる。


「そうだね。今日は大活躍だったよ」


「エリムもよ」


 そうして、私たちはお互いの家に帰った。


 この迷子の少女を助けた日をきっかけに私とジェシカは更に仲良くなった気がした。

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