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第16話 ジェシカとバレンタイン

 今日はバレンタインデー

フロンティア学園ではバレンタインの話題で盛り上がっていた。


「はいこれ!」


「ありがと〜」


 生徒同士でチョコレートを渡す光景、かなり楽しそうだ。

私は昔から誰かにチョコを渡したり、貰ったりした経験がないので羨ましい。


「エリム、ちょっと良い?」


 同級生のジェシカに話しかけられた。

一体何の用だろう?


「これ…」


 ジェシカが何かを出そうとしたその瞬間だった。


「エリム、ちょっと宜しいでしょうか?」


 シャロリアが私の前に現れた。


「え…うん…何?」


「これをどうぞ」


 シャロリアが私に高級チョコレートを渡してきた。


「え、これすっごい高いチョコだよね!?」


「はい。しかも、中にはエリムと文字も刻んであります。シェフに頼み、私とシェフと一緒に作ったエリムだけの特別チョコレートです」


「私の名前まで入ってるなんて…嬉しい〜ありがとうっ!」


 高級なだけでなく、私の名前が刻まれた特別なチョコだった。

これは、シャロリアにしか出せないチョコだろう。


「エリムに喜んでもらえるなんて…私にとってはそれが何よりの幸せです」


「ふふ…あぁそうそう。ジェシカ、何の用だったの?」


 ジェシカは隣でただ見ているだけだったので、私にどんな用事があったのかが、知りたくて聞いてみる。


 が。


「…ううん。なんでもないわ」


 そうしてジェシカは何処かへ行ってしまった。


「ジェシカ…?どうしたのかな?」


 気になりつつも、授業が始まるので席につく。


 そして、放課後。


「帰ろ」


 授業が終わったので私は帰ろうとした。


 すると。


「一緒に帰らない?エリム」


「ジェシカ?うん。帰ろっか」


 ジェシカに話しかけられたので一緒に帰ることにした。


「雪積もってるね」


「そうね...あのね?エリム」


「何?」


 ジェシカから真剣な眼差しでこっちを向かれた。

一体なんだろう?


「こ...これを...」


 ジェシカが何かを取り出そうとしたその瞬間だった。


「エリム!」


「わっ!」


 ベルリスが木の上から現れた。


「ど、どうしたの...?」


「木登りの特訓中だった。そろそろ木登り大会が近いからな」


「色々とツッコミたいけど控えとくね。で、何?」


「これを」


 ベルリスは袋に包まれたやたらと硬い物体を、私に渡してきた。


「これは?」


「チョコだ。エリムに食べてほしくて、ガチガチに硬く作った」


「ありがとうっ。帰って食べるね」


 ガチガチに硬いみたいなので帰って少し置いてから食べよう。

でも、ベルリスもチョコをくれるなんて嬉しい。


「で、ジェシカ...あれ?ジェシカ?」


 先程まで隣にいたジェシカの姿が見当たらない。


「ベルリスごめんっ!私、行くね!」


「あぁ」


 ジェシカが心配だ。

とりあえず思い当たるところを、探す。


「ジェシカー!どこー?」


 探すも、ジェシカは見つからない。


「あら?エリムちゃん?」


 探していると誰かに話しかけらる。

体育祭の日に1回見たので誰だか、すぐに分かった。


「ジェシカのお母さん!」


 ジェシカの母親だ。

買い物袋を持っているので買い物か何かの帰りだろう。


「どうしたのよ!?」


「ジェシカが...見つからないんです!」


「あの子が!?どうしましょう...」


「思い当たる場所とかありますか!?」


 ジェシカの母親なので何か知っているかもしれない。

聞いてみよう。


「あの子なら...もしかしたら、あの森に行ってるかもしれないわ...でも夜だからそろそろモンスターが出たりして危ないかもしれないわね...騎士の人に捜索、頼もうかしら...」


「あの森...あそこか。行ってきます!」


「えぇ!?大丈夫!?」


「大丈夫です!行ってきます!」


 ジェシカとあの森で思い当たる場所はあそこしかない。


 以前、調理実習の日にジェシカに人気がない森の中まで連れて来られた経験があるので見当がつく。


「はぁ...エリム...」


 その森の中でジェシカは1人で座っていた。


 いつモンスターが現れてもおかしくはないのに。


「へっへ... 人間が1人...」


 ジェシカの前にゴブリンが現れた。


「...だから?私をどうする気?」


「そりゃあ...決まってんだろう!」


「...」


 ジェシカはこの後、何をされるのかが大体、分かっていた。


 ジェシカなら、魔法で倒せられるが手が震えて杖が持てない。


「助けて...」


「あぁん?」


「...エリム!助けて!」


 ここでジェシカは私の名を呼んで助けを求めた。


 そこで。


「くらえっ!」


「ギャー!」


 私は火魔法をゴブリンに放ち、ジェシカを抱えた。


「エ...エリム?」


「助けに来たよ!さぁ、帰ろうっ」


「私...勝手にいなくなって...」


「そんなのいいよ!無事で良かった...」


 ジェシカを抱えながら、ジェシカの家まで送る。


「ジェシカ!ジェシカ生きてたのね!」


「お母さん...ごめんなさい...」


 なんとか無事にジェシカを家まで送り届けられた。


「エリム、ありがとう。私...助けてもらってとても嬉しかった...貴方は恩人よ」


「そんな...森に行った理由は聞かないでおくよ。無事で良かった」


 どうしていきなりあの森に行ったのか?

理由は気になるが、ジェシカなりの事情がありそうなので聞かないでおこう。


「ありがとう...そう。これ...」


 ジェシカからチョコを渡された。


「受け取ってほしいわ...エリム」


「本当?ありがとうっ」


 ジェシカからも貰えて嬉しい。

なんて喜んでいると。


「そうそう...これもっ」


 ジェシカに頬にキスされた。


「え...え!?」


「また明日ねっ!」


 そうしてジェシカは手を振った。


「あ...うん」


 今のはなんだったのか?


 頬だったけれど、キスはキスなのでジェシカを恋愛対象として意識してしまいそうになった。


「ただいま」


 そして、私は家に帰ってきた。


「おかえりなさいませ。ご主人様」


 メイドのイリスが待ってくれていた。


「どうかなさいましたか?今日はいつもより帰りが遅い気がしましたが...」


「まぁ...ちょっとね?」


 イリスが心配してくれていた。

なんて良いメイドなんだ。


「ご主人様、私からのプレゼントです」


 イリスは私にチョコを渡した。


「ありがとうっ」


「喜んで頂ければ幸いです」


 皆からチョコが貰えて今日は幸せな1日だったな。

読んでいただき、ありがとうございました。

面白いと思った方は、作者のモチベーションに繋がりますのでブックマーク、評価、感想、よろしくお願いします。

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