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キミは犬派?猫派?  作者: 冬鳥
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瑛太と圭司と雄一郎



瑛太と圭司と雄一郎の三人は五年前に職場で知り合った。それぞれ部署は違ったのだが導かれるように出会いそして徐々に友好を深めていった。三人は27歳の同い年独身で毎年5月には男性トリオで温泉旅行に一泊でいくのが恒例になっていた。今年も漏れることなく五回目の旅行を実行して北陸で名湯に浸かってきた。そして年末に行われる三人の忘年会も恒例な行事となっていた。出会いの場となったドスブラックな職場はまず雄一郎があんな会社やってられないと退職して、次に圭司がもう限界ですと辞表をだした。一人残された瑛太はなんとか五年間しがみ付くように勤めていたがついに音を上げ意を決して今年転職をした。

ついにあの会社には誰もいなくなったね。


瑛太の両肩を二人は叩きまくった。

ほんとよく頑張ったよ。と。


三人は連絡を日々取り合い、会う約束を何度もするのだがそれぞれに多忙な生活に追われ今年も三人での食事会は五月の旅行以来なかなか開かれなかった。


そんななか雄一郎は友人二人に対してほぼ同じレベルといえる心配事があった。それは出会ったときからおいおいマジかよと気づいていたのだが決してそのことを責めたり笑ったりましてや叱ることなんてなく彼は気づかないフリ見て見ぬフリを貫いてきた。それは何故か?なぁあんたさ二人の友人なんだろ?なら教えてやれよ。と誰かが雄一郎に言ったのなら、心バンて痛く貫いちまう弾丸なんて誰も見たくないし俺もなるべくならヒットマンにはなりたかねえんだよ。とカッコよくいうだろう。いや、喧嘩早い彼なら、おい!俺の友人のこと悪くいうなと拳を握りしめているかもしれない。だが雄一郎の真意はこうだ、人生のイレギュラー的な職場で偶然出会った友人二人の人間性がたまらなく俺は好きなのだ、あいつらはいままでに出会ったことのない男子だ。だからこそ、俺の弾丸で彼らが少しでも痛がるなら俺は辛いのだよ。俺は彼らに変わってほしくないのだよ、と願った。

だが27歳になってもなにも進展がない友人二人(誰か教えてやれよ)に雄一郎は少し焦りを感じはじめた、。

俺たちは先のことを考える段階に来たのではないかと思いはじめた。結婚する同年代がいる、当たり前に一人暮らしをしている同世代がいる。会えば必ず心配事を目の前にこれでもかと出し切ってくる二人のことをはじめて溜め息まじりに見つめていた今年の旅行中の雄一郎はついに友人として親友としてある忠告を二人にする決心をした。本人は忠告ではないアドバイス的なエッセンスだとすぐに訂正を求めてくるだろう。


雄一郎は今年の秋から冬に変わりはじめようとしていたときに

二人に連絡をして1人ずつ日を変えて会った。そして話しをした。



そして少し時は流れて年末となった。





瑛太は前を歩く男性の手から落ちた小さく光るものを素早く拾いあげていた。


「あの。これ落ちました…」


瑛太は途中で言葉を止めた。男性は振り向くこともなく遠さがっていく。

落ちた光るものは菓子が入る小さな空箱だった。


「おっとこれはゴミか」


もし彼女へプレゼントする指輪の入った箱とか大切なものではなくてよかったよ。と瑛太は思った。ゴミはゴミ箱に。瑛太は空箱をコートのポケットに入れた。


師走はとてもせわしく感じる。正確に刻むはずの時間までもなんだか狂い焦っているかのように一日がとても目まぐるしく終わっていく。いろんなことがぐるぐると通り過ぎていってしまうなか一年を振り返る大切な時間は自らが強い意志で足を止めなければならない。早送りな日々、過ぎ去ったクリスマス、チラシにはお節料理に福袋。これです、これがまさに年末。好きだなぁこの生命活力溢れてる感じって。


瑛太はいま愛知県岡崎市の東岡崎駅の北口の改札口付近にいた。怒涛のような人波の流れを群れから弾かれたスイミーのように通路の片隅でぼんやりと見届けながら今年もまあそれなり頑張ってきた自分であるかなと、来年には28歳になる自分を少し照れ臭く少し真面目にふんと頷いて褒めてみた。今年は転職をしたのだ、来年がまだどんな一年になるのかいまではまったく予想ができない。


瑛太は友人の雄一郎ならなんていうか考えてみる。

瑛太は雄一郎を密かにワンツーリーダーと呼んでいる。


なにをするにしてもワンツーだ。

足を組む。コートを羽織る。箸を取る。

リズムはワンツーにカッコよくバシッと決める。


雄一郎と面と向かって話すとあまり話しが耳に入ってこない感覚になる。

雄一郎の仕草につい見惚れてしまっているのだろう。



年末の金曜日、そしていまの時刻は午後六時と。瑛太がここで待ち合わせをしているのは友人の圭司けいじ君だった。雄一郎は少し遅れると連絡があった。


確かにここで六時の待ち合わせだったはず。圭司君は少し遅れるかな。


瑛太はスマホを片手に持ちながらまた人波のなかに視線を移してみた。


自分よりも若い男女が手を繋いでとても楽しげに改札口を通り過ぎていく。

繋がれた手の後ろには天使の微笑みがぼんやり見えるかのように瑛太は目を輝かせる。


すごいよなぁ



瑛太は独り言を呟いた。


世の中のカップルを見ると瑛太はほんの少しだけ必ず感動をしてしまう。


自分より若い男女、年上の男女関係なく楽しそうにしているのを見ると瑛太は必ず少しだけグッと込み上げてくるものがあった。


告白した人だけが辿り着ける高貴な関係。




はっ!告白といえば!


瑛太は一昨日最終話を迎えた


連続ドラマ(キミと二人羽織)のラストシーンからエンディングまでの感動をもう一度じっくり考えてみようと思った。



まずいいたいのはなんていいドラマだったんだという感想だった。

キミと二人羽織の続編が始まるのをとても期待してしまうストーリー展開だった。


画家を目指す若い男性と歌うことが大好きな若い女性。この二人を中心にストーリーが進んでいく。二人の距離はなかなか縮まらない。勘違い、すれ違い、恋のライバルの出現。瑛太はなんども、そこで告白では!違うんですか!とテレビに主人公に話しかけた。


瑛太が海外、国内ドラマ問わず必ずいつも一番見たいと願う告白シーンは二人羽織では最終話までもつれ込んでいった。


絵画コンクールに出品する絵を半年間かけて書き上げていく主人公。期限が明日に迫るなか、歌いながらチャイムを鳴らすヒロイン。


そこからのシーンはまさに圧巻だった。

まず彼は頭を抱えながら彼女に言った。


この絵にはなにかが足りないんだ。と。


そこで彼女はじっくりと絵を見渡してからこう聞いた。


このひまわり畑に立つ麦わら帽子を被った人は誰だろう?


と。


彼は恥ずかしそうにいう。


それは…キミだよ。


顔を赤らめる二人。


そして彼女は。


「じゃあわたしの隣りには貴方がいなくちゃ」


彼女は筆をとり色をつけ

小さな小さな人を描いた。


頭がとても大きな宇宙人のような。


「貴方とわたし」



彼女は鼻歌を混ぜ殺伐とした部屋のなかに色をつけていく。


同じく流れはじめるのは有名ロックバンド、越前マスティフのあの名曲。


決して上手いとはいえない下手くそな彼女の描いた小さな人の頭がやけに大きな宇宙人を主人公は呆然と眺めながらいった。



「こ、これで完成」



瑛太の目に

見慣れた顔が近づいてくるのがわかった。友人は背が高いのでわりと遠くから気付くことができるが今回は遅れてしまった。しかし…瑛太は改めて圭司君は公家のような外見だなと思った。もし友人をししおどしの音のなか烏帽子を被り俳句を読む公家にしたら似合う人コンテスト大会に出てもらうとする、出場者はいま僕の視界にはいる100人だ。おそらく圭司君はダントツ1位ではないだろうか。満場一致で圭司君は選ばれるだろう、それほどに圭司君は公家らしさのどこかぽわんとした確固たる風格があった。


友人が少しずつ視野に入る範囲が大きくなってくるのを瑛太は嬉しそうに眺めた。


「瑛太君ごめん。もしやかなり待ってしまわれた?」



「ううん、待った感覚ほんとないよ」




「ごめんね。なんか手間取ってしまって」



圭司はとにかくまずは瑛太に謝っておこうといった感じだった。


なにを手間取ったのかその主は?



まあいっか。圭司君が言いたいならすぐに言うことではある。


「行こうか」


瑛太と圭司は肩を並べて歩きだした。身長差は10センチほどある。

東岡崎駅から東に数分歩いたところに予約しておいた居酒屋があった。




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