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バッド君と私  作者: コヒまめ
本編
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第七話①『ダブルデートに罪悪感』



 それ以来、みる香とバッド君の噂はクラス内だけには収まらず校内中へ広がっていた。


 この事も予想はしていたが、相手があのバッド君であることから皆噂に興味があるようだった。もしこれが大人しめな男子生徒との噂であればこんなに騒がれることはなかっただろう。


 みる香は通る度にチラチラと見られることに嫌気がさしながら廊下を歩いて教室へと向かう。


 しかしそんなみる香とは真逆に爽やかな様子でバッド君が話しかけてくる。


「おはようみる香ちゃん、暗い顔だね」


「バッド君……空気読んでほしいよ」


 みる香は嫌味を込めてそう言ってやるが彼は全く気にも留めない様子だ。


 バッド君が話しかけてきたことで更に周りはざわつき始めていた。こうなることは頭の良いバッド君なら分かるだろうに何故話しかけてくるのか、みる香には理解できなかった。


 みる香は横に並んで歩き出すバッド君と距離を取るように早足で教室に向かっていった。




「森村ちゃん災難だね、でも気にすることないよ! 噂なんて無視しておけばいいんだよ」


 みる香にそう言って励ましてくれるのは檸檬だ。みる香は檸檬こそが天使なのでないかと思ってしまう。現実はバッド君が天使なのだが。


「そうそう、無視に限るよ。それにみる香ちゃんは俺のタイプじゃないんだ、魅力を感じないし」


 そんな失礼な言葉を放ちながら近寄ってきたバッド君をみる香はチラリと見やるが、その場で口に出す事はせずテレパシーを送る事にした。


『そうやって笑ってるけど、バッド君は迷惑じゃないの?』


 彼だって噂を立てられ周りに騒つかれるのは嫌なはずだ。だがバッド君はそんなみる香の考えとは別のことをテレパシーで返してくる。


『俺に関する噂ってみる香ちゃん以外の子とでもたくさん溢れてるからさ~何とも思わないんだよね』


(それもそうか……)


 みる香はその言葉に不本意ながらも納得する。バッド君の噂は確かにみる香との事がなくとも何度か耳にしたことがあったのだ。


 噂に慣れてしまったのかそもそも天使にはそんな事を気にする思考がないのか、どちらかは分からないがみる香はそう考えられる彼の思考が少し羨ましかった。


「半藤のタイプって何でも良さそうなイメージだけど……?」


 バッド君の言葉に反応した檸檬はそんな事を言ってきた。しかしバッド君は気を悪くする素振りもなく楽しそうに笑顔で答える。


「あはは、俺のタイプはおしとやかで色っぽい女の子なんだよね。髪の毛はロングが好きなんだ。みる香ちゃんには全然当てはまらないんだよね~」


 檸檬に事情を説明した日からみる香とバッド君は互いの呼び名を隠すのをやめていた。


 檸檬はそれを知っているので何も不都合はないのだが、『バッド君』という呼び名を人前で呼ぶのはまだ慣れそうになかった。これもこれで変に注目を浴びなければいいのだが。


 三人で他愛もない雑談をしていると授業開始の予鈴が鳴り、学校での一日が始まる。


 みる香は複雑な状況に戸惑いながらも今の自分がぼっちではない事に改めて気がつく。


 去年までの自分を思い返すと誰かと話をしている時に予鈴の音を聞くことなんてなかった。


(噂があっても今の私はぼっちじゃない……)


 みる香はそう思考を動かすと先ほどまで感じていた負の感情が薄まった気持ちになる。


 そこまで考えるとみる香は今のこの状況をどうにかしようという思考を簡単に止めることが出来ていた。




 ダブルデートの日はあっという間にやってきた。みる香はターゲットである桃田と友達になれるように気合を入れながら朝の支度に取り掛かる。


 遊園地だというので動きやすい格好がいいだろうとタイトめな黒のダメージジーンズにTシャツを合わせて仕上げにオーバーサイズのGジャンを羽織る。


 ヘアスタイルは軽くハーフアップをしていくつかヘアピンをこめかみ付近に飾り付ける。


 準備が終わったみる香は「行ってきます」というとそのまま玄関を後にした。


「やっほ~みる香ちゃん」


「……え?」


 玄関を出るとそこにはバッド君の姿があった。登校日なら何か作戦でもあるのかと慣れた光景になってきていたが、今日は休日で、待ち合わせは現地に集合のはずである。


 するとバッド君はいつものようにみる香が何を考えているのかわかっている様子で爽やかに笑いながら言葉を発した。


「全員集まる前に話しておきたいことがあったんだ」


 そう言いながら足を動かし始めるのでみる香も彼の後に続くように歩き出した。


「君も薄々分かっているとは思うんだけど、桃田さんは君のこと良く思わないと思うんだよね」


 そう口に出したバッド君の言葉に驚きはするものの、みる香は納得してしまう。


 バッド君に聞いた話では桃田は最初からダブルデートなど提案していないのだ。


 ダブルデートにしたのはバッド君で、それでも彼と休日に会いたい理由から彼女はこの提案を呑んだのだろう。


「桃田さんからしたら今回のデートは俺が目的なんだよね、だけど俺の提案でやむなくダブルデートになった。つまりさ、邪魔者が二人いるわけなんだよ」


「……」


 バッド君の言っていることは分かるのだが、本当に、もう少し言い方をどうにか出来ないものだろうか。


 みる香は彼の失礼な発言を耳にする度に天使への評価が確実に下がっているのを感じていた。


 しかし今に始まったことでもない。みる香は聞き流してそのままバッド君の話を聞く事にする。



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