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バッド君と私  作者: コヒまめ
本編
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第五話②『新たな提案』



「彼女、俺の事好きみたいなんだよね。それでデートに誘われたんだけど」


 バッド君は何の恥ずかしげもなくそんな言葉を口にする。もう少し恥じらいは持たないのだろうか。みる香は恋愛事には疎かったが、バッド君が軽い男であることは知っていた。


「断るつもりだったんだけどさ、思いついたんだ。みる香ちゃんの友達作りに利用できそうだなってさ」


「え?」


 彼は自分のモテ自慢をしているのかと思い込んでいたみる香はその一言でバッド君を見る。彼は目が合うみる香に涼しげな笑みを向けると「だからね」と声を続けた。


「逆に俺から桃田さんに提案したんだよね~ダブルデートなら行ってもいいよって」


 桃田というのは話の流れからして先ほどの女子学生のことだろう。


「ダブルデートが友達作りとどう関係あるの?」


 みる香は単刀直入にそう問いかける。ダブルデートの目的は男女の仲を深めるためのものではないのか。なぜみる香の友達作りに関係するのか分からない。


 するとバッド君は笑顔のままみる香の疑問に答え始めた。


「ダブルデートであの子と友達になっちゃいなよ」


「ええ!?」


 予想外の言葉にみる香は驚愕した。ダブルデートは友達を作る目的のものだったであろうか。


「俺は君を桃田さんと友達にさせる目的で、君は桃田さんと友達になる目的でダブルデートするんだ」


 だから偽物のデートだよと言ってにっこり笑うバッド君は相変わらずの男であった。


 自分に好意を寄せる女の子の気持ちを利用するのはどうなのだろうと思うみる香だが、彼の提案はなかなかに魅力的であるのも否めない。同性はみる香と桃田だけなのだ。


 それなら学校より話しかけやすいだろうし友達にもなりやすいかもしれない。


「……やってみる」


「うんうん、日付が分かったら教えるね」


 バッド君は頷いたみる香に笑顔を向けながらそう言うとじゃあまたねと言い残してその場を去っていく。


正直、バッド君と休日に顔を合わせるのは気乗りしなかったが、それでも新たな友達が出来る可能性には目を背けたくなかった。


(桃田さん、友達になれるかな)


 そんな事を考えながらみる香はのんびり自宅へ帰宅した。




『みる香ちゃん、ダブルデートは今週の日曜になったからよろしくね』


「え!?」


 突然のテレパシーとダブルデートの決行日に驚いたみる香は授業中にも関わらず素っ頓狂な声をあげてしまう。


 幸いにも担当の教師は休んでおり自習時間だった教室はザワザワと騒がしい声で溢れかえっており、みる香が悪目立ちする事はなかった。


「森村ちゃん大丈夫?」


 しかし真隣にいる檸檬には聞こえていたようで檸檬は心配そうにみる香の顔色を窺ってきた。


「だ、大丈夫! ちょっと考え事してて」


 苦笑いをしながら何とかその場を凌いだみる香は恨みの念を込めてバッド君に抗議のテレパシーを送った。いや、送りつけた。


『今言わなくてもいいじゃん! びっくりするから緊急時以外は止めてよ』


 そう文句の言葉を放つとすぐにバッド君から笑い声と共にテレパシーが送られてくる。


『あははごめんね、別に驚かせるつもりはなかったんだけど。次からは気をつけるよ、たった今決まったからさ。早めに伝えておこうと思ったんだ』


『たった今って……授業中だけど』


 みる香はそう返して考える。そして一番前の席に座るバッド君を見ると、彼は堂々とスマホを取り出して画面上で指を動かしていた。どうやら授業中にスマホを使用して連絡を取っていたらしい。


 バッド君は爽やかそうな性格の割に不真面目なところがある。そんな事を考えていると再び彼からテレパシーが送られてきた。


『詳細は今決めてるから、それに関しては後で屋上で話そうか』


 バッド君はそれだけ言うとそれ以上テレパシーで何かを伝えてくる事はなかった。


 みる香は分かったとだけ返すとそのまま自習課題に取り組んでいった。




第五話『新たな提案』終


                       next→第六話

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