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第7話

中立都市に危機せまる!?

 蛮族の大群が都市に迫って来ている報を聞き、冒険者達や治安部隊の幹部組は都市の入り口に集まった。

「まさかこんな早く攻めて来るとはな……」

 藍染はそう呟く。

「大丈夫だよ。門はそれなりに強固だし、この中立都市の周りには強固で大きい壁があるんだから。それに、壁の上には強力な対空兵器もあるし、壁の中には当然重機関銃砲にキャノン砲もついてるわよ」

 ルミエルは自慢げに言う。

「そういえば戦車や戦闘ヘリとかもあったな。それなら奴らの大群ぐらい……」

「駄目よ」

「え?」

「……それは聖王国と魔帝國がもし攻めて来た時のための中立都市を絶対に守るための防衛兵器。でも蛮族ゴブリンの大群でも現代兵器を使うのは流石につまらないでしょ? こういう時は冒険者や治安部隊の彼らも活躍させないと」

「あはは、なるほどな……ところで魔帝國ってなに?」

「ああ、まだ説明してなかったけ? 魔帝國はまあ、言うなれば聖王国とは逆で主に魔族の国と言っていいかな」

「そして、聖王国の長年の敵であると?」

「その通りだよ。藍染君があのままあっちに召喚されてたら、その魔帝國と戦わされる羽目になってたね」

「改めて、君に連れられてよかったと思うよ。ありがとうな」

「いえいえ」


 フリングは門の上の高台から外の状況を双眼鏡で確認していた。

「おいおい、いくら何でも早すぎだろ。つか、どんだけいるんだよ」

「普通なら奴らのアジトがあっても数はせいぜい小隊規模。だけどあの数は中隊以上の……」

「クソ……先手を取られた……」

「フリング殿、いかがいたしましょう……」

「……作戦変更だ。少しキツイかもしれねえけど」


 フリングは冒険者達の前に立った。

「みんな聞いてくれ。蛮族ゴブリンの連中はもうすぐこちらに来る。しかもかなりの大群だ。そこで作戦を変えることにした」

「具体的には?」

 エーレイルが腕を組みながら問う。

「本当だったら討伐組と防衛組を7:3で分けようと考えたけど、9割を防衛組に割いて、残り一割で討伐組にしようかと」

「一割……って何チームで行くんだ?」

「……25人で5チーム」

「どこから来たのか見当もつかねえのに、そんなんじゃ、朝になっちまうぞ」

「逆に考えてもみろ。あいつらの進行方向は北西から来てやがった。そしてあそこには大森林が……」

「そういえば主にあっちの方から奴らが出没するんだったけか?」

「そう。だからあの大森林を探索すれば……」

「だとしても少人数で行けんのかよ」

「そこは僕とリュヴィエルさんと我こそはという腕自慢の冒険者で」

「あたしは?」

「ルーカスさんとここの防衛で」

「……防衛ならあの大軍にツッコんで暴れても文句はねえよな?」

「……あまり無茶はしないでくださいよ?」

「安心しろ。ヘマはしねえよ」

 狂気に満ちた笑みを浮かべるエーレイル。

「じゃあ、任せますよ。リュヴィエルさんもよろしくお願いしますね」

「……いいだろう」

「ルーカスさんもエーレイルやここを頼みますよ」

「あいよ!」

 フリングの指示にリュヴィエルは仕方なく応じ、ルーカスは親指をぐっと出して応じた。

「よし……冒険者共!! 我こそはと思う者はこちらに来い!! ただし、人数は限らせるぞ」

 フリングの言葉に冒険者達の……大半がこぞって討伐組に集まっていた。

「うわ、多すぎ多すぎ!? ヤバいな人選が……」

「適当でいいんじゃね?」

 あっさりそんなことを言うエーレイル。

「……二チームは決まってるとしてあとは……適当でいいか」

「へえ。誰にするんだ?」

「それは……」


 一方で藍染は……何故か討伐組にいた。

 いや、エミエルに引っ張られてここにいた。

「いや、なんで!?」

「せっかくだからなんとなく。こういうのもいい体験だよ~」

「冒険者なり立ての俺を死地に赴かせる気か!? つか、そもそも新人の俺がそっちに行けるわけ――」

「大丈夫大丈夫。フリングに話つけてあるから」

「なんてこったい……」

 そんな時、藍染は振り向くと、フレンや双子にエルデナが防衛組にいた。

 藍染を見るや四人は手を振った。

「あいつら……」

「大丈夫だ。わたしもいるぞ」

藍染のそばにはサイカもいた。

「サイカ……」

「わたしも新入りだが、こういう体験もして強くなるのも悪くないもんだぞ」

「死んだら元も子もないぞ」

「まあ、まあ、とりあえず君のために特別チーム組ませるから。これで生存率100%間違いなし!!」

 エミエルは親指をぐっと立ててそう言ったのであった。

「大丈夫か、これ……」

 藍染は不安だらけだった。


 藍染が組まれたチームはこんな感じだった。

 藍染、ルミ(エミエル)、フリング、サイカ、エミルコ。

「……えっとどちら様で?」

 藍染は一人だけ知らない人物がいたのでその人物に問う。

「わたくしはエミルコよ」

「あ、藍染です」

「アイゼン……か。よろしく頼むぞ」

 そう言ってエミルコは手を出した。

「あ、ああ。こちらこそ」

 藍染はエミルコ手を握り、握手をした。

「そう固くならなくてもいいわよ。新入りとはいえ同じ冒険者なんだから」

 エミルコは人差し指を自分の右頬に触れ、ウィンクした。

「(……なんだか不思議な人だな)」

 エミルコ……なんだかミステリアスな雰囲気を醸し出す美しい女性だった。

 ワンピースのような洋服にベルトには銃のマガジンがいくつもあった。

 そう、彼女の武器は銃剣付きライフルであった。

「(なんでその武器なのかは聞きたいが……まあいいや)」

「そこの騎士殿もよろしく頼むわよ。えっと……」

「サイカだ。よろしく」

 サイカもエミルコと握手した。

「よし、準備はいいかな?」

 フリングが藍染達に話しかけてくる。

「お、あの時の冒険者君だね。改めまして、僕はフリング。治安部隊所属の人間さ」

「あ、藍染です。よろしくお願いします、フリングさん」

「そうかしこまらなくていいよ。気楽にフリングでもいいし、冒険者と同じように接してくれ」

「あ、ああ」

「そちらの女騎士さんもよろしくな」

「ああ。わたしはサイカだ」

 五人が集まり自己紹介やらしてると……。

「おいおい、なんだあのチームは?」

 ガラの悪そうな冒険者達が藍染のチームに絡んできた。

 がたいの大きい角が生えた大男のオーガ戦士にエルフ耳の女魔道士、眼鏡をかけた白いローブを纏った聖術師の男にヤンキーそうな獣耳の弓使い、そして不愛想な感じの犬獣人の女剣士という構成であった。

「見ろよ、あんな鉄くず飛び道具に頼ってる奴が三人もいるぜ」

「しかも女の子ががあんな長物持ってるなんてダサすぎよ」

「銃に頼るなんて冒険者の恥だぜ」

「あんな奴らのお守りをする治安部隊さんもごくろうなこった」

 と、藍染らをバカにするガラの悪い冒険者達。

「なんだ貴様ら」

 サイカは冒険者達を睨む。

「なんだ、てめえ?」

「おい、こいつ最近冒険者になった謎の騎士様じゃねえか?」

「冒険者なりたてがいきなり討伐組に入るとか、調子に乗ってんじゃねーのか?」

「とゆうか治安部隊さん。なんでこんな知らない顔のやつらなんか入れたのよ?」

 フリングにまで飛び火してきた。

「うるさいなぁ。お前らには関係ないだろ。さっさと準備して待ってろよ」

「なんだと!?」

 そんな時だった。

「ちょっとぉ、何の騒ぎぃ?」

 黒のゴスロリ衣装を着たどこか危ない感じの女性が現れた。

 黒いショートヘアの黒い角に黒い羽根に黒い悪魔の尻尾に目の強膜は黒と……何もかも黒尽くしだった。

 まさに悪魔のような人物だった。

「げ!? お、お前は……」

「で、デミス……」

「や、ヤバい……」

 難癖つけてきた冒険者達はそそくさとその場をあとにした。

「……すまなかったな」

 一人だけ難癖つけてこなかった犬獣人の女剣士は謝罪してその場をあとにした。

「なぁによぉ。つまんない人達ぃ」

 やれやれと肩をすくめるデミスと呼ばれた悪魔少女。

「大丈夫だったぁ?」

「あ、ああ」

 少したじろぐ藍染。

 サイカもデミスに少し警戒していた。

「やあ、すみませんねデミスさん」

「別にぃ。なんか騒がしかったからちょっと見に行っただけよぉ。じゃ、そろそろ行くわねぇ。うるさい天使さんが待ってるからぁ」

 そう言って手をひらひらさせながらデミスもその場をあとにした。

 のんびりした喋り方をしているが、どこか狂気のはらんだデミスに少したじろぎ、強張ってしまった藍染とサイカ。

「あの女……見ただけでヤバいと感じた……。只者じゃないな……」

「なんかヤバそうな奴だったなぁ……つか、あれ悪魔だろ?」

「そうだよ。あの子はデミスちゃん。見たまんま悪魔だよ」

 軽く説明したフリング。

「ホントなんでもありだな。この中立都市……」

「そこがいいじゃん」

「ま、嫌いじゃねえけどな」

 そう言って。藍染とフリングは互いに見つめて、にやけた。

「まったく、ある意味面白い所だな」

 サイカは苦笑いしながらそう言った。

 そうこうしているうちに治安部隊の兵士がこちらに駆けつけて来た。

「フリング殿。防衛部隊準備完了しました。いつでも開門可能です」

「よしわかった。……さあ、開戦と行こうじゃないか!!」

『おお!!』

 フリングの言葉に全員が武器を掲げて大声をあげた。


 藍染ら冒険者達や治安部隊は正門の前に立ち、構える。

 そして、門が開門され、全員は中立都市を出た。

 防衛部隊は迫ってくる蛮族ゴブリンらの群れに向かっていく。

 一方で討伐組は防衛部隊から離れ、迂回して蛮族ゴブリンらが出現している大森林を目指す。

 そんな中、藍染はエミエルに思念による会話を試みた。

『そういえば、あの時駆け込んで来た治安部隊が蛮族モンスターがどうとか言ってたけど、蛮族ゴブリン以外にもいるのか?』

『お、君から話すとは珍しい』

 どうやら繋がったようだった。

『まあ、ゴブリン以外にもいるわね。オーガとかオークとかエルフとかも。みんな元々は普通に過ごしてたのに、聖王国と魔帝國の戦争続きの果てに、生き残るために犯罪に手を染めすぎて、このようなことに……』

『……人間もいるのか?』

『いるわね。だいたいの連中は戦争による飢饉、さらに軍から逃げて蛮族に身を落とす者もいるね』

『……なるほどな』

『他のクラスメートが気になる?』

『気にならん……わけではないが、連絡はつけられんし、今はどうしようもできないからな』

『それもそうだね。私も流石にあっちには近づけないし、近づきたくもないね』

『そうとなれば、今は目の前のことに集中することにしよう』

『ふふ、そうね』

 そんな念話による会話をしていると、防衛部隊と蛮族の群れがぶつかり始めた。

「始まったな」

 フリングは衝突するのを確認し、行軍速度を少し早める。

「急ごう。少しでも早くついて、大本を叩くぞ」


 大森林にたどり着いた討伐組。

「行くぞてめえら! 手柄は俺達のもんだ!!」

『おう!!』

 藍染らに絡んできたガラの悪い冒険者達が我先にと先に森林の中へ突撃しに行ってしまった。

「させるか! 俺達も行くぞ!!」

 別の冒険者達の二チームもあとに続いて森林の中へ突入した。

「やれやれ、血気盛んだな」

 フリングはやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。

「ちょっとぉ、あたしの殺る分いなくなっちゃうよぉ」

 両手に手斧を持って急かしてくるデミス。

 二つの手斧は乾いた血痕が染みついていた。

「おいデミス。アタシが目を光らせてる限り、好き放題に暴れられると思うなよ」

 女性の声と共に突然、背後からデミスの首筋に一筋の剣が現れた。

「おやおや、相変わらず怖いですわね、レミルさん」

 デミスの背後には白い騎士服を身に纏った女性がいた。

 金色の髪に金色の瞳。そして背中には白い羽が生えていた。

「でもぉ、今回の仕事は蛮族共の皆殺しでしょ? だったら好きにやらせてもらってもいいじゃないぃ?」

「お前はいつもやりすぎなんだ。少しは自重しろ」

「…………」

「…………」

 レミルはデミスを睨み、デミスは不敵な笑みを浮かべる。

「え? あれ天使?」

「うん。天使だよあれ」

 フリングがあっさり答える。

「(天使だと? ……この中立都市は何でもありすぎて、なんか頭が変になりそうだな)」

 サイカはレミルを見て少し俯いた。

「……もうこれ以上はツッコまんでおく」

「あはは。いろんなのいるだろ、中立都市は」

「いろいろいすぎてもう笑うしかねえや」

「笑っとけ笑っとけ」

 そう言って藍染とフリング、そしてデミスまでも一緒に笑った。

「ちょ、三人とも静かにしてください!」

 レミルは慌てて三人に注意する。

『すみません』

 二人は揃って謝罪した。

 デミスはやれやれと肩をすくめた。

「……コホン、そこの者とそこの騎士殿、お初にお目にかかる。レミルという。君の言う通り神の御使いであり騎士でもある天使だ。以後お見知りおきを」

 剣を下ろして自己紹介するレミル。

「そういえばまだ自己紹介してなかったねぇ。デミスよぉ。見た目通り悪魔でぇす」

「サイカと申す」

「藍染だ。それにしても神の御使いの天使がなんでここに? 治安部隊所属というわけでもないし」

「うっ……い、いろいろあって……やむを得ず……」

 急に苦い表情になって顔を俯かせるレミル。

「ふーん……(これはあまり触れない方がいいっぽいな)」

 藍染はレミルの表情を見て何となくそう思った。

「おーい、天使と悪魔さーん。なあにしてんだい」

 レミルとデミスを呼ぶ男性の声がした。

「あらぁ、アークス。それにラムネアにリュヴィエルもぉ」

 そこには爽やかそうな冒険者の男に眼鏡をかけた青肌の魔族の女性と治安部隊のリュヴィエルがいた。

「……あの二人は?」

「ああ、あのイケメンなあいつはアークス。あっちの眼鏡ちゃんはラムネア。いつも二人で組んでるコンビだ」

「……コンビというか、カップルだろあれ」

 アークスとラムネアの二人はものすごいべったりしてた。

「ああ、カップルだね。いっつも二人でこんな感じだよ。つかね、できてるからあれ」

 遠い目をしているフリング。

「ああ、できてんのか」

 藍染も遠い目をした。

「ま、魔族と人間があんな親密な関係に……とゆうか近すぎじゃな いか」

 少し顔を赤らめるサイカ。

「どうした?」

「え!? い、いや、なんでも」

「?」

 藍染は首を傾げた。

「あのカップル共に天使と悪魔、リュヴィエルがいればまず問題ない。アイゼン君の方はあの人の頼みで……まあ、あの騎士にあのお二方なら大丈夫かな。僕もいるし」

「なんか言った?」

「いや、なんでも。さあ、そろそろ僕達も突入しようじゃないか。みんな用心するんだぞ」

 全員が頷き、森林の中へ入って行った……。

次回、藍染達は生き残れるのか!?

   そして防衛側の戦いの行方は!?

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