第6話
フリングの共同作戦とはいったい?
『共同作戦?』
藍染やサイカが首を傾げて問う
「共同作戦ってことはオレ達冒険者も参加していいってことだな」
フリングに問うフレン。
「ええ。今回は治安部隊総出でやるレベルじゃないので君達も大いに参加しな。もちろん報酬もはずみますよ」
「よっしゃ!!」
「あたしらも張り切っちゃうよ」
「が、頑張ります!」
フレンやリエ、エリ達は張り切り出した。
「で、具体的には何をすればいいんだ?」
サイカが問う。
「二チームに別れてあることをする。一つは奴らのアジトを探して頭目諸共叩き潰す。もう一つは中立都市の防衛だ。おそらく連中にこの場所を知られたはず。あいつらは絶対にここに攻めてくる」
「それって俺達が逃げてきたせい?」
藍染は自分に指を指して聞く。
「そうだね……と、言いたいがあいつら結構な数がいたからな……。遅かれ早かれここの存在を知ればあいつらは攻め込んできてるに違いなかったさ」
「で、この共同作戦は中立都市を守りながらあいつらのアジトに仕掛けようってつもりなの?」
リエは腕を組みながらフリングに問う。
「その通り。あいつらのアジトを叩き潰せば奴らを大量駆除できるからな」
「で、でも、蛮族ゴブリンがいっぱい襲いかかって来たんですよね? アジトにはもっといっぱいいるんじゃないのかな……それこそゴブリン以外の……」
不安そうに言うエリ。
「だろうな。だからルミさん夜に幾人か冒険者に声をかけてくれないかな? 僕は隊舎に戻って他の奴らに声をかけてみるわ」
「OK!」
「じゃあ、また夜にな」
そうしてフリングはギルドをあとにした。
「じゃ、私は受付婆さんと話してくるね」
エミエルもその場をあとにした。
「……よし、せっかくだ。時間になるまで互いに自己紹介とかしねえか?」
フレンはそう提案する。
「いいわね。これも何かの縁だしね」
リエがそう言って賛成する。
「よし、早速あっちのテーブルに座ろうぜ」
「はいよ……あ、その前に依頼の報告していいか?」
「あ、わたしも報告しないと」
「あいよ。じゃあ、席確保してるから待ってるぜ」
そうして藍染とサイカは依頼報告しに行った。
「あれ? どうしたの藍染」
「ああ、依頼の報告をな」
「そういえば薬草採取のこと忘れてたね~」
「俺もさっきまで忘れてたよ」
「わたしもだ」
「ちなみにサイカさんは何の依頼を?」
「サイカでいい。わたしはキノコ採取だ」
「てっきり討伐依頼でも引き受けてたものかと思った」
「たとえ戦闘経験があっても、最初はこういう依頼でこつこつと」
「なるほど……」
「危険な仕事はランクが上がってからだよ。こつこつやればいろんな依頼を受けられるよ」
エミエルはそう言った。
「先は長そうだな……」
「まあ、がんばろうではないか。なんせわたし達はお互い新人同士だしな」
サイカは藍染の肩を叩きながらそう言ったのであった。
報酬を受け取った藍染とサイカはフレン達と合流した。
「初報酬の感想はいかがで?」
フレンは藍染に問う。
「いやぁ……初めて仕事したんだなという実感が湧いたかな」
「はは! そいつは何よりだ」
フレンが笑い、他の皆も微笑んだ。
「よし! じゃあ、改めて。オレはフレン。主に宝探しを生業とするシーフだ」
「あたしはリエ。回復に補助がお得意の聖術師よ」
「お、おれはエリです。魔道士です」
「リエとエリは双子なんだぜ」
フレンは補足説明をした。
二人の顔を見てとても似てたからそうだろうなと藍染は思った。
「ちなみにこの双子共、二人共男なんだぜ」
『……は?』
藍染とサイカはフレンの言葉に疑問符が浮かんだ。
「おい待て。今なんつった?」
「いやだから、リエとエリは男だって。こんな可愛い顔してな」
フレンは苦笑しながらそう言った。
「ちょっと、ばらすの早いわよ……ふふ♪」
リエはフレンにそう言いながら藍染にウィンクをした。
「おいおいマジか……(いや、あのリエって奴の喋り具合と声でなんか違和感あったけどこういうことか……)」
「はあ……やっぱり男と見られていないのか……」
しょんぼりするエリ。
「エリもあたしのようになればいいのよ。顔も声も中々良いいのに」
「い、嫌だよ……」
「なんでよ~」
「おれは男らしくありたいんです」
どうやらリエは女らしく振舞うタイプでエリは男らしくありたいタイプのようであった。
「二人共個性的で面白いな」
サイカはフッと笑みを浮かべる。
「だろ?」
フレンはにやけ顔でそう言った。
「さて、今度はお二人さんの番だ」
フレンは藍染とサイカに自己紹介を促す。
「ではわたしから……わたしはサイカ。最近冒険者になった流れ者の騎士だ」
「……ああ!! 最近現れた黒髪に女騎士さん!!」
「改めて見ると美しいなぁ……」
エリはサイカの事を見て声を上げ、フレンは彼女に見惚れていた。
「なんて美しい……妬けるわね」
親指の爪を噛みながらサイカを妬むリエ。
「……で、こいつは――」
「藍染だ。今日冒険者になったばかりだ」
「今日なったばかりだったのですか!?」
エリは、また驚いて声を上げる。
「ま、まあな」
「アイゼン君は薬草採取していたところに蛮族ゴブリンに襲われてたんだよ。その時、あたしはルミに連れてこられた形で助けてあげたんだよ」
「あの時は助かったぜ、リエ」
藍染は礼を言った。
「お礼はあたしを引っ張ってきたルミに言ってね」
「ああ」
「ち、ちなみにリエの助けが来るまでどうやって……」
「サイカさ……サイカが来るまでナイフとこいつでな」
藍染は拳銃を取り出して見せた。
「へえ、ガバメントか。いいな」
興味津々に藍染の拳銃を見るフレン。
「俺もこんなの使ってるぜ」
フレンが出したのは回転式拳銃であった。
「スタームルガーだ。中々いいだろう」
自慢気にそう言うフレン。
「つか、俺やフレンやエミ……ルミの他に拳銃とか使ってる冒険者いるのか?」
「うーん……フレンやルミ以外に使ってる人はあまり知らないわねえ。とゆうかあたしとエリはね、ここに来てまだ三ヵ月なのよ」
「へえ、そうなんだ」
藍染は意外だなという顔をする。
「俺はもう2年以上になるかな。ちなみに銃火器使ってる冒険者はまあそれなりかな? 知り合いの中では数える程度だな」
「やっぱそんなもんか」
「……時にルミが使っていたあの長物もその拳銃とやらと同じ飛び道具の一種なのか?」
「そ、そういえばサイカさんはここには来たばかりなんでしたっけ?」
「ああ。あと、サイカで構わぬ」
「……この拳銃やルミが持っていた散弾銃とかはひとまとめにすると銃火器という武器だ。俺も細かい構造はわからんが、引き金を引いて弾丸を飛ばす……少しボウガンと似たようなものかな?」
「なるほど……ちなみにルミが撃つ度にものすごい音がするのは……」
「ああ、それは……」
藍染はスライドを引いて弾を一発出した。
「この弾丸のここに火薬が詰まっていて、引き金を引くときに撃鉄が動いて、弾丸の後ろの所に刺激を与えることで中の火薬が爆発してこの先端のこれが飛んでいくんだ。ちなみに爆発と言ってもかなり小規模……だが、こいつを飛ばすにはそれが必要なんだ」
藍染は弾を見せながら説明した。
藍染の知識はほとんどがたまたま買った銃火器の本の受け売りである(しかもうろ覚え)。
「お前……随分詳しいな」
「い、いやあ、まあ、いろいろと……」
フレンの言葉に藍染はたじろぐ。
「(異世界から来ました……なんて言えねえ。言ったとしても多分信じられねえだろうなぁ……)」
「さてはお前……ガンマニアだな!?」
「……へ?」
フレンの言葉に呆気を取られた藍染。
「こんなにいろいろ銃の知識があるんだから相当なマニアに違いねえ」
そんなことを言うフレン。
「ま、まあこの都市に来て、初めて見た時に興味あったからちょっとな(まあ、元々ゲームが影響で銃火器好きになっただけだけどな)」
「それにしても銃ってカッコいいよな。こいつと出会ってから俺の最高の相棒でさ――」
フレンは自分の拳銃をくるくる回しながら語る。
それから藍染達は夜までいろいろ語り合った。
語り合ってる合間にいろんな冒険者達が集まっていた。
いろんな冒険者達がたくさん揃っていた。
「いつの間にこんなに……」
「おや、フレンに双子共じゃないかじゃないか」
話しかけてきたのは左目に眼帯を着けた女性が現れた。
その女性は上半身が人間で下半身は……蛇の姿をしているラミアのお姉さんだった。
「おう、エルデナじゃん。帰って来てたのか?」
「ついさっきな。なんか厳戒態勢入ってるから、何があったのかさっき婆さんに聞いたらなんか治安部隊と合同で蛮族ゴブリン討伐と都市防衛やるって?」
「ああ。討伐と防衛どっちやるんだ?」
「もちろん討伐のほうだ……おや、見ない顔が二人いるわね」
エルデナは藍染とサイカに目を向けた。
「ああ、アイゼンとサイカだ」
「サイカだ。最近冒険者になった者だ」
「藍染だ。今日なったばかりだ」
「あたいはエルデナだ。よろしくな、お二人さん」
そんな時、フリングが数人の治安部隊を連れてギルドに入ってきた。
「お、いい感じに揃ったな」
「ははっ、こいつは楽しい感じになりそうだな」
「はぁ……相変わらず血の気の多くて騒がしい……」
「ぬははは!! 良いではないか。今宵は冒険者共と血沸き肉躍る戦いをするのも良いではないか」
フリングをはじめ、目は三白眼で好戦的そうな女性に、不愛想な感じの女性、豪快そうな禿げ頭に山羊の角が生えた男が揃っていた。
禿げ頭の男だけは軍服がボロボロで軍靴を履かず、山羊の足が丸見えだった。
「あ、あの人達は……!」
「あらあら、これはこれは……」
「うわぁ……何が総出でやるレベルじゃねえだよ。最高戦力が勢揃いじゃねえか」
フレンは四人の事を見て呟く。
「知ってるのか?」
藍染はフレンに問う。
「治安部隊の中でも最強と謳われる幹部クラスの奴らだ」
「幹部クラス……」
内心カッコいいと思った藍染。
「フリングという男もかなりの手練れだったが、他の三人も中々そうだな……」
四人を見つめ、呟くサイカ。
「まずはあのおっさんはルーカス。主に格闘を得意でパワーも速さもすげえぞ」
「あの角に足……魔族の黒山羊族の者か。改めて思うと何でもありだな、この都市は……」
「次にあの不愛想なエルフはリュヴィエル。短弓での連続射撃にナイフの扱いが得意で偵察、暗殺能力も優れたおっかない奴だ」
「そういうのもいいな……」
とつぶやく藍染。
「え?」
「何でもない」
「で、目つきが鋭くて好戦的そうなあいつはエーレイル。人間だ。あいつの腰に着けているあの剣見てみろ」
フレンの言葉に藍染とサイカはエーレイルの腰に着けている剣を見つめる。
剣にしては随分変わった形をしていた。
「あれは蛇腹剣っていう特殊な剣だそうだ」
「マジかよ……」
「確か鞭のように扱う変わった剣と聞いたことがあったが、まさかこの都市にあるとは……」
サイカは蛇腹剣のことを聞いて呟いた。
「あの剣を使えるのは俺の知る限りではあの女しかいねえな」
「で、最後は俺達を助けてくれた……」
「フリングだ。あいつは剣も魔法も扱えるいわば魔法騎士って奴だ」
「……魔法騎士というと確か聖王国でよく聞くあの……」
口を挟むサイカ。
「そ、あいつは元聖王国の教会所属の騎士だって言ってたぜ。あまり理由は聞いてねえけど聖王国から逃げ出してここに流れ着いたとか。今じゃあ教会の騎士とは思えないことばっかりしてるけどな」
「たとえば?」
「暇さえあればいやらしい本読んでたり、冒険者連中といかがわしい店行ったりとか」
「別の意味で堕ちてんなあいつ」
藍染は小声でツッコむ。
「おいこら、聞こえてんぞ」
フリングのツッコミに藍染は舌をペロッと出した。
『すごいでしょ、治安部隊幹部クラス』
『こりゃまた個性豊かそうな連中を……ってかお前の分身、確か治安部隊部隊長とかやってるとか……』
『それは大丈夫。フリング達は私のことは部隊長の私ではなく冒険者の私として認識しているから』
『そうか……』
『ちなみに彼らのような幹部クラスはあと二人いるよ』
『マジか』
『まあ、その二人はちょっと特殊で都市から出られないから不参加だけどね』
『それってどういう――』
「さて、諸君。これから冒険者と治安部隊の共同作戦による蛮族ゴブリンのアジト殲滅及び、中立都市の防衛を行う」
フリングの言葉にエミエルとの念話を中断し、フリングの話に耳を傾ける藍染。
「内容はこうだ。討伐組は5、6人でチームを組んで、奴らのアジトを探し出し、見つけたら即座に叩き潰す。信号弾も配布してやるから見つけたチームはそれで応援を呼んでおきな。防衛部隊は万が一のために奴らが攻め込んできたら迎撃する。決行は明日の明朝――」
「フリング殿!!」
突然、一人の治安部隊の兵士がギルドに入り込んで来るなり、大声をあげた。
「どうした?」
「た、大変です!! 蛮族ゴブリンの……いや、蛮族モンスターの大群が!!」
『!?』
次回。藍染、いきなりの初実戦へ