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第3話

今日から冒険者デビューの藍染

 藍染が異世界に来て次の日の朝……というより昼前。

 あの後やることがなかった藍染は自室でスマホを弄ったりしていた。

 自室だとネットが繋がるようで、普通にゲームしたりSNSを見れたりできる。

 自室を離れると途端に圏外になり、写真や動画を撮ろうとすると何故か真っ暗のまま何も映らないのであった。

 藍染が住み始めたこの部屋は室内が六畳一間でさらに浴室とトイレ付き。

 さらに玄関付近にはキッチンがついている。

 そしてエミエルが作った扉の奥は現実世界の藍染の部屋に繋がっている(窓はなくなっているので現実世界の外は見れないし壁に穴をあける気はない)。

 これで家賃は金貨一枚と金銀貨一枚である(現実世界で言うならば一万五千円)。

 家賃は三ヵ月だけエミエルが負担してくれるがその後は自分で払わねばならない。

 三ヵ月滞納したら強制退去……。

 そのために藍染は今日から冒険者として様々な依頼を受け、金を稼がねばならないのであった。

 そして今日は初めての依頼を受ける藍染。

 だというのに起きた時間は昼前。

 藍染は昨晩、録画が溜まったアニメを大量に見て、さらにゲームもやったら深夜四時。

 そして起きたのが朝十時だったのである。

 とりあえず藍染はエミエルからもらった異世界の服に着替えた。

「これは……中々良いな」

 動きやすい服と軽装具に腰には拳銃ホルスター。まさに冒険者というべき格好になった。

 武器は拳銃であるが。

 ちなみに制服や上履きはクローゼットの中にしまったのである。

 ピンポーン♪

 そんな時、玄関からインターホンが鳴った。

「エミエルさんかな? はーい」

 藍染は玄関の扉を開けると、そこにはあの神秘的なローブではなく、冒険者らしい恰好をしたエミエルがいた。

「おはよう、藍染君」

「お、おはようございます」

「ん? どうしたの、藍染君?」

「あ、あの……それはいったい……」

 藍染はエミエルの肩にかけている物に指を指す。

 藍染はこれを知っている。ゲームとかで見たことがあるものだ。

 だけどあえて聞いてみた。

「これ? ショットガンだよ。モスバーグM500」

 肩から掛けている物を持って見せて、にこやかにそう答えるエミエル。

「なんでショットガンなんだよ」

「ショットガンは乙女の嗜みよ」

「知らねえよ」

 そんなツッコミをする藍染。

「あと、なるべく外ではルミって呼んでね」

「あ、ああ」

「さ、今日は冒険者の初仕事だよ。準備はいいかな?」

「おう!」

 戸締りを確認した藍染は部屋を出る。

「あ、そういえば鍵は……」

「大丈夫だよ。この部屋は住居人である君と領主の私しか開けられない仕組みになってるんだよ。不法侵入しようとするとすぐに治安部隊が飛んでくるよ」

「セキュリティ万全だな」

「当然よ。あらゆる種族が共存する中立都市だもの。これぐらいわね」

「なるほどな」

「ほら、君の表札だよ」

 エミエルが指を指す方を見る藍染。

 そこにはアイゼンと書かれた表札があった。

 ちなみに部屋番号は203と書かれてあった。

「おお……本当に俺の部屋になったか……」

 少し興奮した藍染であった。

「じゃ、行こうか」

 そうして二人は歩き出した。

 そこで藍染は隣の部屋の扉を見る。 

「(そういえばこの部屋って確か出るんだよな……)」

 その部屋は昨日エミエルが話した例の事故物件である。

 表札を見るとサリアと書かれていた。

「(こんなところに住んでるなんて物好きだな……)」

 藍染はそう思いながらその場をあとにした。

 藍染が住み始めたアパートは全部で六部屋と数は少ないが一部屋ずつが八畳一間と中々広いのであった。

 外見は古い感じのアパートなのに、部屋の中は中々良い部屋である。

 そしてこのアパートの名前は【ミテクレ荘】である。

「(なんつう名前だ……)」

 藍染はそう思った。


 二人はある場所で立ち止まっていた。

 そこには何か見覚えのある物があった。

「(これってバス停? 何でこんなものが……)」

 バス停には三丁目三番地と書かれてあった。

「そういえば、昨晩はごちそうさまでした」

「いえいえ~。異世界の飯はどうだった?」

「大変おいしゅうございました」


 それは昨日の夕方頃。

 藍染が空腹になったところにエミエルが突然やって来たのだ。

 転移ではなく玄関から。

「はーい♪」

「あれ、どうしたんですか?」

「お腹が空いたかなと思って……はい!」

 エミエルが夕飯に弁当を持ってきてくれたのであった。

「あ、ありがとうございます」

「あ、弁当箱は使い捨てだから食べ終わったら捨てていいからね」

 そう言ってエミエルに弁当箱を渡された藍染。

「じゃ、また明日ね」

 そう言ってエミエルは去って行った。

 ちなみに中身はハンバーグとおにぎりと玉子焼きだった。


「この世界でお米食べられるとは思わなかったよ」

「お米はね、農業エリアから収穫したんだよ」

「この世界にも米があるんだ」

「元々は聖王国の一部の村とかで生産されてるんだって。この都市に流れ着いた人からお米の生産方法を教わったんだ」

「聖王国からねぇ……」

「あと玉子焼きはハーピーの卵だよ」

「ガチの異世界の食い物!?」

「卵はこの都市に住んでるハーピーから提供されたものだよ」

「そ、そうなんだ……(ゲームでハーピーの卵でオムレツとか卵のスープとかあったが知らずとはいえ食べちまったんだ、俺……)」

「あとハンバーグのお肉はワイバーンの挽肉♪」

 笑顔でさらりとそんなことを言う彼女。

「笑顔でなんてこと言うんだ! 大丈夫なのか!?」

「大丈夫大丈夫~」

「(なんてこったい……。ほんとに大丈夫かよ……)」

 藍染は腹をさすりながら不安になった。

「そう言えば冒険者関係は北側エリアでしたっけ?」

「そうだよ」

「で、俺達は何を待ってるんだ?」

「もうすぐ来るよ」

 エミエルがそう言うと何かがやって来た。

 それは……。

「バス!?」

 現実世界でも見たことある黄色のバスだった。

「居住区内専用の循環バスだよ」

「どうなってんだ、この中立都市」

 そしてバスは藍染達の前に止まり、扉が開いた。

「さ、乗った乗った。お金は私が払うよ」

 エミエルに引っ張られて乗る藍染。

「で、どこに行くんだ? このバス循環だろ」

「この中立都市はかなり広いから今から歩くと北側のエリアまでね……数時間以上かかるよ」

「なんてこったい。マジかよ」

「でも大丈夫。便利なポイントがあります」

「ほうそれは?」

 二人がたどり着いたのは噴水のある場所だった。

「さ、こっちだよ」

 エミエルに案内された場所は……。

「なんだこの電話ボックスは」

 しかも電話ボックスは二つあった(しかもやたら大きい)。

 よく見ると天井が赤い電話ボックスには公衆電話はないが代わりに何かが置いてあった。

 そしてもう片方の天井が青い電話ボックスは何もなかった。

「これはね、ワープポイント~」

「おお~」

「赤は転移入り口で青が出口だよ」

「ほうほう」

 そうして二人は赤の電話ボックスに入る。

 そこにはN、S、E、W、Cと1から9までのボタンがあり、その隣にはコードと地名が書かれていた操作盤のような物が置かれていた。

 二つの大きめボタンにはGOとBACKと書かれていた。

 さらに足元には赤色の魔法陣が描かれていた。

「これってアルファベットは方角か?」

「その通り。ちなみにCはセンターのC。中央エリアね」

「で、アルファベットを押してから数字を押してGO押せば転移でBACKはやり直しかな」

「そうだよ。藍染君、呑み込み早いね」

「ま、まあ、なんとなく(ゲームやりこんでるからなんとなくわかったとか言えねえな)」

「じゃあとりあえず、北側の4で……よし、行くよー」

 エミエルはそう、GOボタンを押した。

 すると下に描かれていた魔法陣が急に光だし、藍染は目を瞑った。

 藍染はゆっくり目を開くと……先程あった操作盤はなく、周りの景色も先程とは違っていた。

 魔法陣はまだ光っていた。

「さ、早く出るよ。次の人が待ってるかもしれないから」

「お、おう」

 藍染は慌てて外に出た。

 すると魔法陣の光はゆっくり消えた。

「さあ、冒険者・商業エリアにようこそ♪」

「おお……!!」

 居住区もそれなりにいろんな人々が交流していたが、北側エリアに着くと、さっきよりも賑やかで活気に溢れていた。

「ほんとにファンタジー世界に来たんだな……(銃火器持っている奴もいるのがあれだけど)」

「どう?」

「すげえな……」

 その時、藍染のお腹が鳴りだした。

「あ……」

「ふふ。先にご飯にしようか。もちろんおごるよ」

「すんません」

 そうして二人は昼食を取ったのち、ある場所に立ち寄った。

「さ、冒険者ギルドに着いたよ」

 建物の中にはいろんな冒険者がいた。

 藍染はエミエルのあとについて行く。

 受付に着くと一人の女性がこちらに来る。

 それは受付嬢……ではなく受付婆さんだった。

「おや、ルミじゃないか」

「どうも~」

「おや、その子は?」

「新入り君だよ。藍染君、この人はローニャさん」

「受付嬢のローニャだよ」

「はじめまして。藍染と申します」

「アイゼンね。じゃあ、あんたにちょうどいい依頼を教えようかね」

 藍染はローニャに張り紙が大量に貼ってある掲示板の所に案内された。

「FとEランク推奨の仕事ならこれとかこれぐらいかな」

「なになに? 薬草採取に農業手伝いに猫探しにベビーシッター?」

「最初は雑用ばかりだけど、信頼をあげればランクも上がって骨のある依頼も受けられるわけさ」

「な、なるほど……」

 他にもスライム退治やワーム退治もあった。

「で、最初はなにするんだい?」

「そうだな……」

 そうして藍染が取った仕事は……。

「薬草採取?」

「まあ、やっぱ最初はこれがいいかなと思って」

「ええと……ああ、ヒールポーションの材料の薬草か」

「これを規定量採取すればいいらしい」

「なるほどなるほど……あ、忘れてた!」

「?」

 エミエルは藍染に一つの袋を渡した。

「これは?」

「アイテムBOX袋。これ一つでいろんな物が入るよ」

「おお。便利アイテム!」

「ちなみにこれ冒険者への支給品なんだ。渡し忘れてごめんねぇ~」

「おいおい……」

 呆れながらアイテムBOX袋を腰に着ける藍染。

「じゃあ、早速外に行ってみようか」

 藍染はエミエルに連れられ、ワープポイントを使って中立都市の玄関前にたどり着く。

 だが、そこでエミエルは立ち止ってこう言った。

「じゃ、薬草採取、がんばりたまえ!」

「え、一緒に行かないのですか?」

「私はいろいろ忙しいの身なので中央に戻らないといけないの」

「分身的なの使ってるとか言ってなかったか?」

「そんじゃあいってらっしゃい~」

 エミエルはニコニコと手を振りながら軽やかに去って行った。

「ちょ、待て、おい……なんてこったい。行っちまいやがった」

 藍染はため息をついた。

「……とりあえず行くか」

 そうして藍染は中立都市の外へ出たのであった。


次回、果たして依頼を達成できるか!?


変更:藍染の部屋を208から203に変更

追記:藍染の住むアパート名等を追記

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