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第0話

変わらぬ日常に突然変化が訪れた……。

 いつもの朝。

 何の変哲もない日常。

 今日も始まる学校の授業。

 鳴り響く始業のベル。

 変わらない日々がずっと続いていたある日、一つのクラスの日常が激変した。

「起立! 礼! 着席!」

 いつもと変わらない号令。

 そして、全員が着席したその時だった。

 突如、教室一帯に青い魔法陣が浮かび上がった。

 教室中の生徒が慌てふためく。

 教室のドアを開けようとするも開かない。

 魔法陣が強く光ると……二年二組の教室にいた担任教師と生徒達はどこかへ消えた。


 目を開けるとそこは教室ではなく、とても明るく、とても広い空間。

 周りにはファンタジー世界にいる騎士や魔法使い、神父の恰好をした人達がたくさんいた。

「おお、勇者の皆様方、ようこそ聖王国へ!!」

 声を高らかに上げたのは、一人の男の声。

 教師と生徒達が声の方へ向くとそこには玉座の下に、荘厳な衣装を身に着け、腰に剣を携えた男がいた。

「私は聖王アルバトロス。私は皆様方を心より歓迎しよう!」


 聖王に連れられた教師と生徒達は食堂に案内された。

 食堂のテーブルには全員にジュースを出された。

 だが、生徒達はいまだ混乱していた。

「さて皆様。いろいろ混乱しているようですが、これから私の話を聞いてもらいたい」

「あの、その前によろしいでしょうか?」

 挙手をし、発言したのは二年二組の担任教師で国語教師の雪上菜々緒だった。

「構いませんよ。えっと……」

「自己紹介が遅れてすみません。私は生徒達の担任教師を務めている雪上菜々緒と申します」

 彼女は聖王に自己紹介をして、一礼をする。

「ここはいったいどこなのでしょうか?」

「ふむ、この世界はオルトリート。この地は聖王国と呼ばれる。私達人間が暮らす国でございます」

 聖王はそう答えた。

「しかし、この国は今滅亡の危機に瀕しています。遥か西の方に魔帝國と呼ばれる国がございまして。そこはおぞましい魔族や亜人と言った魔の者の巣窟であるのです」

 眼鏡をかけた少し目が鋭い男子生徒が挙手をした。

「僕はこのクラスのクラス委員長の雪村銀二と申します。つまり、この国は魔帝國の侵略を受けているという事でしょうか?」

「左様」

 聖王は雪村の問いに頷く。

 今度は凛々しい感じの女子生徒が挙手をする。

「神室菫と申します。つまり、私達はこの国を救うべく呼び出した、という事でしょうか?」

「その通りだ。呑み込みが早いな」

「いえ」

 この問答を聞いて他の生徒達がざわつき始める。

「おいそれってつまり……」

「そいつらと戦えってことか……?」

「嫌だよ、そんなの……」

 生徒達の不安の声が次々と漏れ出る……。

「あの!!」

 大きな声を上げて立ち上がる雪上教諭。

「何故私達がそのようなことをしなければならないのでしょうか!? この子達はまだ子供ですよ!!」

「……あなたの言うことはもっともだ。だが、我が国が崇める聖神様はあなた方を選んだのです。この国の救世主として」

「そんな……」

「どうか頼む! 邪悪な魔族共からこの国を救ってほしい!! 我らも全力で支援もするゆえに、どうか!!」

 聖王は教師と生徒達にそう言って頭を下げた。

「…………」

 全員が無言になる。

「……先生」

 雪村が声をかける。

「どうしましましたか、雪村君」

「ここはひとつ、協力してあげてはいかがでしょうか?」

「雪村君!?」

「ここは明らかに普通の世界じゃない。僕達はいわゆる異世界に飛ばされたわけです」

「い、異世界だなんてそんな突拍子な……」

「仮に聖王殿に協力を拒んだとして、僕達がここから帰れる方法を探せる保証があると思うでしょうか?」

「そ、それは……」

「私も雪村君に賛成です。それに、この国の者達に呼ばれて素直に拒否できるとも思えませんし」

「か、神室さんまで……」

「皆、いろいろ不安があるであろう。なにせこれはフィクションではない。本物だ。魔族というものと戦えば死ぬ可能性もある。だが、僕達は戦わねば、未来永劫元の世界に戻れるとは不可能だと思う。だが、無理強いはしない。もし戦うのが怖いのであれば、ここで待っていても構わない」

 雪村は大きな声で生徒達に叱咤激励をした。

「そ、そうだな、やるしかねえよな」

「どこにも逃げ道がないならやるしかねえか!」

「おもしれえ、派手にやったろうぜ!」

「あ、あたしも!!」

 雪村の言葉で、幾人かの生徒達が戦う決意をし、立ち上がった。

「み、みんな……!?」

 雪上教諭は慌てふためいた。

「聖王よ。私達はこの国を救うために戦いましょう」

「おお、感謝するぞ、皆様方!!」

 こうして彼ら高校生達は異世界で戦いに身を投じることに決めたのであった。

「こうなれば致し方ありませんね……ならば私も戦いましょう。皆を守るのも教師の務め。この二年二組30人の生徒達は私がしっかり守ります!!」

 雪上教諭はそう言って決心した。

 その時だった。

「あの……」

 一人の男子生徒が手を挙げて声を出す。

「どうしました、田中君」

「そういえば一人だけ、朝からいない奴いるんですけど……」

「え!?」

 全員がざわめきだす。

「だ、誰がいないのですか!?」

「藍染です……」

 そう、この二年二組でただ一人だけ、ここにいなかったのであった。


クラスの中で一人だけ召喚されなかった藍染なる人物。

彼は今どうしているのか……。

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