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ある公爵の若き日の思い出   作者: 桂木
本編
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【閑話】恋する王太子のぐだぐだ日記1 〜恋とはどんなものかしら〜

今回は見合いのお茶会の王太子視点です。いつもよりおふざけが酷いです。

王太子が少し、変態チックです。苦手な方は飛ばしてください。

 昨年立太子された俺は、そろそろ婚約者を決めなければいけない。すぐに結婚するわけではないが、妃教育に時間がかかるから、早いにこしたこたはない。

 それともう一つ重要なことがある。王太子妃選定を長引かせるとロクなことにならないからだ。貴族は自分の家から王太子妃を出したがる。金はかかるが、家から王太子妃を出すと言うのは大変な名誉だ。また、それに付随するアレコレがある。むしろ、そっちがメインだろう。美味い汁を吸おうと誹謗中傷、讒言の嵐だ。

 昔、娘の支持を得るのに金をばら撒き、破産したバカがいるときく。ほかにも、ライバル令嬢の誘拐、暗殺など。果ては既成事実を作ろうと、王太子に媚薬を盛ろうとした者まで。今は、昔のような物騒なことはほとんどなくなったが、早めに決定しておいた方がいい。最近、宮廷の空気がおかしい。廷臣たちが互いの腹を探りあっている。このままでは、国政にも影響がでる。

 王子として生まれたからには、この身も心もすべてこの王国と民に捧げる覚悟はできている。貴族の結婚とは家を存続させ、繁栄させるための一手段に過ぎない。王家なら尚更だ。愛のない結婚をすることに不満はない。


 婚約者候補のリストを眺める。顔はできれば美人の方がいい。が、候補にあがるくらいだから、みんなそれなりに美人だ。全員、パーティで会ったことがある。誰を選んでも変わり映えしない。リストをダーツの的にしてそれで決めるか?

 そんなことを思っていた時、宰相が「追加」を持ってきた。相手はノーザンフィールド公爵令嬢グロリア。この王国の富の半分を賄うといわれる公爵家。代々、中央政治に興味を示さない貴族。隣国ヴェストニアの軍事の三分の一を持つといわれる辺境伯と祖を同じくする一族。確かにこの令嬢と婚姻を結ぶことができれば、一番だ。

 しかし、あそこは基本的に結婚相手は同族から選ぶ。俺の従兄弟の婚約者候補に公爵家の分家筋の令嬢の名前が挙がったことがあった。チラッと出ただけである。なのに、その三日後、いきなりくだんの令嬢が結婚した。相手はヴェストニアの辺境伯の分家筋の令息。令嬢はまだ12歳だった。デビュタントもすませていない。先方が結婚を早めてほしいと言ってきたらしい。もっともこの国では誰も信じてないが。ちなみに従兄弟は「あの速さ、逆に尊敬するわ。この際、ゆっくり探すよ。」と言っていた。お前はまだ、遊びたいだけだろ。

 宰相の話によると、久しぶりに宮廷に出てきていた公爵に「王太子妃候補の支持集めか」と嫌味を言った貴族がいたらしい。公爵は露骨に嫌そうな顔をしたらしいが。すごいな、あの公爵に嫌味なんて。穏和な顔しているが、遣り手だぞ。微笑みながら、相手を追い詰め、自滅させるタイプだ。誰だか知らんが終わったな。

 それにしても、すごいのは宰相だ。どう、丸め込んだのかわからないが、話を纏めてきた。

 「いえ、最後まで説得できませんでした。婚約に対して条件をつけられたんです。」

条件は2つ。まず、茶会を開くこと。公爵と令嬢と、一緒に住んでいるアルトドラッヘンの令息で出席。

 ふたつ目は婚約するかは令嬢本人に決めさせて欲しいこと。王家から打診があった時点でほぼ決定事項。余程のことがない限り断らないし、断れない。

 条件をつけられ、気に入らなければ断るかもしれないなど、あまり面白い物でもないが、婚約できれば儲けもの、くらいの気持ちだった。


 茶会当日。彼女が顔をあげた瞬間、何か大きなものに弾かれたような衝撃が走った。彼女が輝いて見える。アレはオーラか?俺もこの世ならざる物が見える不思議村の住人になってしまったんだろうか?

 いかん、冷静になれ、アーサー。お前は王太子だ。この国の将来を背負うものだぞ。引っ越ししてどうする。

 向こうが名乗ったので、名前を知っていると言ってやった。この場合の令嬢の反応は二通り。驚くか、舞い上がるか。

しかし、彼女の反応はどちらでもなかった。「左様でございますね。」あまり、表情にはでていないが、明らかに困惑している。一緒にきていたアルトドラッヘンの令息も同じ反応のようだ。

 茶会に招待したのだから、名前くらい把握しているはず。していない方がおかしい。それをわざわざ明言するのはどうしてか、という困惑だろうか。困惑している姿がかわいい。


 それからの俺はおかしかった。小さい時からの訓練で態度には出ていないと思う。出てたら、死ぬ。ってか、殺してくれ。それほどおかしかった。もう、彼女しか目に入らない。時折、隣の辺境伯令息をみて、心を落ち着ける。いや、お二人ともよく似ておいでで。本当に落ち着けているんだろうか?

 彼女をイメージしてブレンドした紅茶を出す、という宰相の案を採用してよかった。実際のブレンドはブレンダーだが、俺もいろいろ意見を出した。俺のブレンドした紅茶を飲んでる!かわいい!

 茶菓子のクッキーを手に持ってジッと見てる。割るか一口で食べるか悩んでるんだな。かわいい。かじって食べもいいのに。あんなに見つめられて、クッキーが羨ましい。

 あ、一口で、食べた。あの可愛らしい口で、一口で食べるには少し大きかったのかな?頬張ったようになっている。かわいい。かわいすぎる。目が離せない。

 そばに立っていた宰相が動く。

「申し訳ございません。急に虫が来たものですから」

え、虫いた?しかし、それで、少し我にかえることができた。いけない、何か話さなければ。令嬢ならたいてい興味のあるドレスや宝石のことか?いやいや、そんな話題を振っては、俺が彼女が外見のことにしか興味がないバカ女と思っていると思われかねない。結局何も思いつかず、俺は彼女が最近楽しかったことを、聞いたのだった。

 失敗だった。いや、成功か?さらに、かわいさが増してしまった。かわいい、可愛すぎる!もう、かわいい以外の語彙が出てこない。必要ない。

 トカゲにそこまで夢中になれる。あんなに目をキラキラさせて、トカゲのことをしゃべっている。ああ、いつか俺のこともそんなふうに目をキラキラさせてくれるだろうか?その可愛らしい口で俺の名前をよんでくれるだろうか、「アーサー」と。

 それにしても、トカゲが羨ましい。その可愛らしい口でよんでもらえるなら、トカゲになったっていい!毎日、昼も夜もトカゲになった俺をなでてくれ!

 もう、このかわいさは異常だ。暴力だ。俺は今日、死んでしまうんだろうか?もしかして彼女は俺を殺しにきた暗殺者では?それなら、それでいい。彼女に殺されるなら本望だ!

 少し、取り乱してしまった。

 俺がひたすら死神との攻防を繰り広げていると、侍従が紅茶の入った壺を持ってきた。時間らしい。

 彼女を馬車まで送りたかったが、王太子という身分上、それはできない。せめてものこととして、俺は彼女の前に跪き、その、白魚のような指に口付けた。


 翌翌日、死人のようになっていた俺は執務室にウィリアムといた。公爵家からの返事が気になりすぎて、茶会からほとんど食べれない。眠れない。なのに、子供の俺にも簡単なものとはいえ、容赦なく仕事はくる。

 昼過ぎ、宰相と侍従長とがやってきた。侍従長は恭しく、手紙の入ったトレイをかかげている。二人とも顔がにこやかだ。これはもしかして、、、

 宰相が口を開く。

「ご婚約、おめでとうございます。ノーザンフィールド公爵令嬢はこのお話を、、、」

「やったー!」

俺は、拳を突き上げ、立ち上がった。当然、ぶっ倒れた。

 その時、楽しい夢を見たが、それは割愛する。

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