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ある公爵の若き日の思い出   作者: 桂木
ウィリアムの結婚
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14話

 顔合わせでウィリアムに初めて会ったロイド伯爵夫人は、ウィリアムのことがとても気に入ったようである。度々、ウィリアムを自邸に招いた。それで、ウィリアムは伯爵夫人まで籠絡した、との噂が流れた。

 日頃宰相のことをよく思っていない貴族が宰相に嫌味を言ったところ、「私は妻が他の男に籠絡されるような女性だと考えたこともなければ、昔からタイラー子爵のご次男を間近で見ており、そんな男ではないと知っている。人は自分が考えるように、するように、他人もそう考え、すると考える。卿は自分の妻が息子がそのような人物だと思っておられるのか?」と、返された。

 この貴族、何を考えているんだ?俺が宰相と話していたのに「ちょっと、いいですかな?」と話しかけてきたから、わざわざ人の話を遮るくらいだから重要な話かと思って「私の話はあとで大丈夫です」と譲ってやったのに。そんなくだらない事を言うためだったなんて!そして反撃喰らってる。もう、馬鹿としか言いようがない。

 そこへ運悪くと言うべきか、運良くと言うべきか、偶々王宮を訪れていた噂好きのファルルポート伯爵夫人が通りかかった。当然、夫人はその会話を柱の影から注意深く聞く。

 夫人が去った後、俺は宰相に「今、ファルルポート伯爵夫人が聞いていたみたいですよ」と言った。宰相も気づいていたみたいで「放っておけ。悪い方には転がらん」と言った。そして「ギルベルト、お前もご婦人方の噂を味方につけるようにしろ」と言われた。努力はしてみます。

 噂好きは話好き。ご婦人の情報伝達能力を舐めてはいけない。あっという間にその話が尾鰭をつけて、また、少しずつ変容して広まった。最終的に「ウィリアムはイザベルに結婚せざるを得ないようなことをした」と言う噂が、「自分がイザベルに結婚せざるを得ないようなことをしようとしてウィリアムに邪魔されたので、ウィリアムに罪を着せている」と言う噂に取って変わった。

 何がどうしたら、そんな風に変容するのか見当がつかない。ヒューバートが言うには「人は自分の都合の良いように記憶する」らしい。どのあたりが「都合が良い」のかわからない。そのことをヒューバートに言うと、「もう少し、色々と教えなければいけないな」と言われた。何を教えられるのか不安だ。

 そして今、「誰がそのようなことをしようとしたか」の憶測が、ご婦人方の茶会での熱い話題である。だから、イザベルに求婚していた子息達は、自分だと言われないかビクビクしているみたいだ。特にウィリアムに意地悪をしていた連中は。

 俺もグロリアも、茶会に出れば「どなたかご存知なんでしょう?」と聞かれて困っている。知っていても教えるわけないし、そんなウィリアムに不名誉な濡れ衣を着せる人物は王太子が合法的に破滅させるに決まっている。だいたい、いもしない犯人をきかれても答えようが無い。

 そして、ウィリアムは「令嬢の名誉を守る為、高位貴族に懐柔されず、また、阻止した高潔な人物」として、ご婦人方や令嬢方に人気らしい。

 ファルルポート伯爵夫人と仲の良い母親を持つナタリー嬢が茶会で聞いてきた。

「ミスター・タイラーと同じクラスってんで、私、すっごく羨ましがられたわ。だから、言ってやったのよ、『ミスター・タイラーは誰に対しても礼儀正しいし、親切だしいい人だ』って言ったじゃない、って。で、『お茶会に呼びたいので誘って欲しい』って言われたけど、『殿下の側近で、殿下の側を絶対離れないから無理』って言っといた。」

「ありがとうございます。助かります。」

ウィリアムがほっとした顔をして言った。

「ウィルはすごいな。会ったこともない令嬢を誑かしたり、助けたり出来るんだから。」

と王太子が笑いながら、言った。ウィリアムは「やめてください」と真っ赤な顔をして下を向いた。

 ウィリアムは会ってから僅かの間に、イザベルのことが好きになったみたいだ。ウィリアムとイザベルは本当にお似合いだと思う。

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