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ある公爵の若き日の思い出   作者: 桂木
本編
63/176

56話

 王室主催の夜会。フーランディア公は既に会場であるホールにいて、伯父上の姿を見るとすぐに来られた。

「公爵、ようこそいらっしゃいました。辺境伯もグロリア嬢も楽しんで行ってください。アーサー、グロリア嬢をお願いします。」

 ファーストダンスが始まった。王太子とグロリアが踊る。グロリアのドレスには水晶が縫い付けられており、動くたびにキラキラと煌めき、夜空の星のようだ。水晶の輝きを際立たせるために生地はわざと光沢を抑えてある。どこまでも深い黒。その黒いドレスが御婦人方の目を惹きつけるのも当然と言えた。伯父上は「帰ったらあのドレスが欲しいとねだられそうだ」と何人もの人に言われていた。

 ファーストダンスが終わった頃、陛下が臨席され、伯父上だけでなく、グロリアにも話しかけられ、デビュタントのお祝いを言われた。さらに学校生活はどうかとか、得意な楽器は何かとかそんな他愛の無い話もされた。王室の私的な夜会で王太子の婚約者とはいえ、陛下が何の功績もない一令嬢と長々と話されるなど、異例のことである。先日の夜会の事を気にされているのだろうか?それとも、息子の結婚相手が気になるのだろうか?

 皆、思い思いに夜会を楽しんでいた。突然、ホールの入り口辺りが騒がしくなった。伯父上や宰相と話していたフーランディア公が「失礼します」と言って、慌てて入り口に駆け寄った。女が金切声で何か叫んでいるのが聞こえた。どうやら、何故自分を入れないのかと騒いでいるらしい。

 女は警護にあたっていた王宮騎士やフーランディア公に止められ、そのまま引きずり出された。「リチャード、母親に何をするの⁈」と叫んでるのが聞き取れたので、キャロライン様なのだろう。夜会に乱入するのが趣味なのだろうか。陛下は「ああ、皆はそのまま、今夜はたのしんでくれ」と仰って、退室された。

 あまり表情に出ていないが、グロリアの顔は引き攣っている。それに少し息も荒い。先日のデビュタントの事を思い出したのだろうか?その様子に、王太子も気づいたようだ。

「グロリア、大丈夫?少し休む?」

「ううん、大丈夫。あのね、、、」

何か考えているようだ。

 音楽が始まった。

「ギル、踊ろう!」

女性から誘うか?まあ、グロリアらしい。王太子がなんとも言えない顔をしている。

「まあ、ギルならいいか。それに踊っているグロリアも見たいしな。」

夜会の制限も出されそうだな。今迄、強硬にデビュタントに反対していた訳だし。

 踊りながら、グロリアが話しかけて来る。

「キャロライン様、あの女と同じにおいがする。」

「同じにおいって?」

「自分で言ってて、よくわかんない。けれど、絶対、近づきたくない。ギルも近づいちゃダメだよ。良くないことが起こる!」

俺もよくわからないが、キャロライン様には近づかない方がいい気がする。特に王太子とグロリアは。理由を聞かれても、なんとなくとしか答えられないけど。早く、殿下やウィリアムにも言っておかなくては。そう思いながら、踊っていた。

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