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ある公爵の若き日の思い出   作者: 桂木
本編
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【番外編】恋する王太子のぐだぐだ日記 〜結婚祝い〜

番外編です。読まなくても、本編には影響はありません。

頭の悪い作者が乏しい文章力で書いているので、わかりづらいかもしれません。

いつもの残念な王太子ではなく、少し残酷な王太子がいます。人によっては不快感を覚えるかもしれません。本編には影響しないので、閲覧は自己責任でお願いします。

 時々、宰相が封筒を持ってくる。中にはカードが一枚。左上に斜めに黒い線が引いてあり、A.T.やG.J.などと書いてある。封筒には宛名も書いていない。ただの封筒にカードが入っているだけだ。俺はそれを見た後、宰相に返す。


 あの女、マーガレット・チェイサーは王宮騎士団に捕縛された。

 屋敷の捜索では、王宮騎士だけでなく、犯罪に慣れている警邏の騎士でさえ、気分を悪くする者が続出した。気分を悪くするだけでなく、少数ながら精神に変調をきたす者もいた。調書を読んだだけの俺でも、あまりの酷さに吐いてしまった程である。実際に見た者は尚更であろう。

 犯罪は多岐に渡っており、どちらが発案、主導したかわからないが、そのほとんどがトーマス商会との共犯であった。やっていない犯罪を数えた方が早いくらいである。あの女、グロリアの拉致計画も立てていた。破落戸に拉致させれば、どうなるかは想像に難くない。斬首刑にしてやりたかったが、グロリアはまだ、俺と結婚していないため、大逆罪の適用はできない。斬首刑は無理だ。そのため、貴族女性の死刑にあたる、ラノート女子修道院での生涯幽閉が決まった。


 しかし、これで全てが解決した訳ではない。死刑にあたる生涯幽閉といえども生きていることには、変わりない。

 兄上が結婚するにあたり、一番恐れていたのは恩赦だった。王室に慶事があれば、恩赦がある。もっとも、罪状によっては恩赦がない場合もある。

 しかし、第一王子である兄上の結婚では、ほとんど全ての罪人に恩赦があるはずだ。なので、あの女にも恩赦があるだろう。死刑にあたる生涯幽閉が解かれることはないが、今のドアを漆喰で固めた独房ではなくなる。鉄格子が嵌っているとはいえ、小さな窓があり、部屋の外から閂と鍵をかけただけの部屋になる。

 手引きするものがいれば、この部屋は逃げ出すことが可能である。まあ、独房は塔の上階にあり、修道院自体、湖の中の島にある。舟が着岸できる場所は一箇所しかないうえ、舟は夕方には対岸に引き上げる。部屋から逃げ出せても島から逃げ出すのはまず、不可能だ。

 過去、その不可能なはずの修道院から逃げ出した者がいる。油断はできない。トーマス商会の者は全員絞首刑になったはずだし、あの女には伯父以外の親族はいなかった。その伯父も偽物だが、男爵ということになっているので、斬首にしている。脱獄の手引きをする者はいないはずだが、あの女を助ける者が出るかもしれない。


 兄上は臣籍降下してから結婚となったが、国王の庶長子ということで、恩赦があると発表された。誰に恩赦があるかは極秘事項扱いで、発表されない。なので、俺にもハッキリしたことはわからないが、ほとんどの罪人に恩赦があるはずだ。

 恩赦の書類には陛下に代わって、俺がサインをすることになった。全ての恩赦の書類に俺がサインをする訳ではなく、死罪を言い渡された罪人の恩赦の書類にだけ、俺がサインをすると言うことだ。あの、女の恩赦の書類にもサインをしなければならないのか!

 ウィリアムがリストと書類の名前を確認後、一枚一枚、俺の前に書類を置く。俺がサインをしたら、ギルベルトがその書類を取り、ブロッターをあてる。ギルベルトと役人が一緒に、もう一度リストと照合した後、役人が回収し、箱にその書類を入れる。

 そろそろ、あの女の書類が出る頃だ。あの女が兄上の慶事の恩恵に与るかと思うと、腹立たしい。ウィリアムが次の書類を置いた。これ、書類が重なっているような気がするが、、、

「ウィル、これ、」

「なんでしょうか、殿下。早くサインをお願いします。」

俺は黙ってサインをした。ギルベルトが素早く書類を取り、ブロッターを当てて、役人と一緒にリストを確認した後、役人が回収し、箱に入れた。

 全ての書類にサインをし終わった。役人が「全て終わりましたね。お疲れ様でした」と箱にギルベルトが確認していたリストも入れて立ち上がった。が、目眩をおこしたらしく、箱を落としてしゃがみ込んでいる。

「申し訳ありません。ちょっと、目眩がしてしまって。ああ、大丈夫です。私がすぐに書類を拾いますから。」

と言って床に散らばった書類を素早く拾った。

「書き損んじはなかったですね。」

と、役人が何枚かの書類を抜き出し、宰相に見せた後、暖炉に投げ入れる。

「おい、」

驚いた俺が、声を出す。

「殿下は恩赦の書類にサインをなさるのは初めてで、ご存知なかったですね。恩赦の書類は書き損んじがあった場合に備えて、何枚か予備があるんですよ。全てにサインが終わったら、悪用されないように、その場で燃やすことになっているんです。ですので、今、彼と暖炉にくべました。リストも二枚のうち一枚しか保管しないので、もう一枚は白紙の書類と一緒に燃やしました。」

宰相が答える。役人が投げ入れたなかに罪人の名前を記載した書類が見えたように思ったが、気のせいか。

 使用したリストは、今回の恩赦を受けた人物の記録として、保管される。他に人物名の記録がないので、これを無くしたり、毀損したりしたら、大変である。

 宰相がもう一枚のリストを回収しようと手を伸ばしたところに花瓶があり、倒れてしまった。リストは濡れて文字が滲み、読めなくなっている。

「宰相、リストがダメになってしまったぞ。どうするんだ?」

「大丈夫ですよ。サインし終わった書類をもとに、もう一度、リストを作れば良いだけです。」



 結婚式の前日、宰相が封筒を持って来た。封筒を開けると、中には左上に黒い斜め線のあるカードが入っており、M.C.と書いてあった。最高の結婚祝いだ!俺は笑いながら宰相に返した。宰相は「おめでとうござます」と言って、受け取った。

 

 あの女、やっと死んだらしい。

次回から、本編に戻ります。

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