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ある公爵の若き日の思い出   作者: 桂木
本編
2/176

1話

 薔薇に囲まれた芝生の庭園に案内された。テーブルをはさんで、椅子がこちらがわに三脚、向こうに一脚ある。座るように促された。端に伯父上と俺が座った。真ん中はグロリアだ。キョロキョロしていると、伯父上と目があった。ここがどこかは知らないが、キチンとしていなければならない場所なのだろうと思う。足もブラブラさせていた。咎められるかと思ったが何も言われなかった。少し、伯父上が笑ったようだった。同じようにキョロキョロとしていたグロリアの服を引っ張った。グロリアも行儀が悪いと思ったのか、キョロキョロもブラブラもやめた。そのかわり、テーブルの下で手を繋いだ。

 この家の侍従が緊張している。四方にある薔薇のアーチのひとつの方角を気にしているようだ。俺たちが入って来たのと反対にあるアーチだ。向かいの椅子が一脚空いたままだ。目障りにならないような配置ではあるが、死角が無いよう護衛が薔薇の垣の周りを囲んでいる。相当、偉い人が来るようだ。

 誰が来るのか、どれくらい偉いのか考えていると、伯父上が急に立ち上がり、臣下の礼をとる。俺とグロリアもそれに倣った。とにかく、来るのは公爵である伯父上より偉い人だ。子供とはいえ、ここでヘマをすれば家に迷惑をかけるおそれがある。伯父上のする通りにしていれば間違いない。

 侍従が気にしていたアーチから入って来たのは、俺やグロリアと変わらない年頃の少年だった。伯父上は序列4位とはいえ公爵である。その公爵が我が子と同じくらいの歳の少年に臣下の礼をとっている。

 「よい、顔をあげてくれ。」

少年がそう言うと、伯父上は顔を上げた。俺とグロリアも同じようにあげる。金髪翠眼の少年が立っていた。伯父上の少年に対する態度と少年の容姿で、それが誰なのかわかった。グロリアも少年が誰か気づいたようだった。

 伯父上がグロリアの背中にそっと手を添えた。

「王太子殿下にエルメニア王国の臣、ノーザンフィールド公爵の娘グロリア・フローラ・ブルーローズがご挨拶を申し上げます。拝謁の栄を賜り、恭悦にございます。」

俺はチラッと伯父上を見る。伯父上が小さくうなづく。

「ヴェストニア王国、アルトドラッヘン辺境伯の息、ギルベルト・ジークフリート・フォン・ローゼンリッターにごさいます。拝謁の栄を賜りましたこと、恭悦に存じます。」

俺も同じように挨拶をした。

 「みな、かけてくれ。」

王太子がそう言って、椅子に腰掛けた。その後で俺たちも腰掛けた。皆が座ると、侍女がお茶の用意を始めた。さすが王太子付きの侍女、手際が良い。あっと言う間に、それぞれの前に紅茶が用意された。


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