11話
ある日、王太子に王宮に呼ばれた。珍しい茶葉が手に入ったので、ご馳走してくれるという。俺とグロリアはでかけた。
慣れない学校生活で公務は滞りがちだった。それで、王太子は昨日から学校を休んでいた。それなのに茶会とは。それは口実で単に学校を休んでいる日にもグロリアと会いたいだけなんだな、俺とウィリアムは隅っこで置物にでもなっていようか、なんて考えながら馬車に揺られていた。グロリアも王太子との茶会は嬉しいらしい。
案内されて執務室に入ると、ウィリアムだけでなく、王太子の兄のフーランディア公と婚約者でウィリアムの姉君のクラリス嬢がいたので、非常に驚いた。何故、この二人が殿下の執務室にいる?王太子がグロリアと会う口実の茶会でなく正式なものなのか?なら、どうして執務室でする?
王太子が椅子にかけるよう言う。そして、侍従と護衛を強引に外に出した。そこで、俺は王太子の顔が強張っているのに気づいた。傍目からはいつもの穏やかな表情だが、長年一緒にいた俺にはわかる。グロリアも気づいたらしく不安なのだろう、俺の手を握ってきた。
漠然とした不安が重量を持ち、この場を押しつぶそうとしている。誰も口を聞かない。
「かけてくれ。冷めてしまったが、茶を飲もう。」
その空気を破ったのは王太子だった。俺とグロリアは空いている席に座った。
意を決したように王太子が口を開く。
「今から兄上が話す内容は信じ難いし、受け入れ難い。俺も最初は兄上が俺をからかっているのかと思った。そうでなければ、おかしくしなってしまったのかと。けれど、兄上はそのような冗談を言われる方ではないし、狂ってもいない。だから、最後まで話を聞いて欲しい。そして、今後のことを話し合いたい。
兄上、ご面倒でしょうが皆にお話しください。」
フーランディア公は少し意外な顔をされる。
「私が話していいのかい?」
「はい、俺が話したのでは又聞きになってしまいます。ですから、兄上からお願いします。」
「わかった。うまく、話せるかわからないので、わからないことや疑問に思うことがあれば、私の話を遮って許可なく質問して欲しい。」
そう言って、聞かされた話は王太子の言葉通り、信じ難く、受け入れ難いものだった。