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ある公爵の若き日の思い出   作者: 桂木
シュバルツ辺境伯
120/176

30話

 夜会当日の昼休憩、ナタリー嬢とカーライル嬢も一緒だった。

「グロリア、今夜の夜会、行くんでしょう?授業終わってからの準備で間に合うかしら?お母様が言うように、午前で早退するべきだったかな?」

「どうかな?でも、オールドベリー公と一緒に行くんでしょう?公は午後の授業、どうされてるの?それに、少しくらい遅れても大丈夫だよ。

あ、マリアンナ、ごめんなさい。マリアンナ、出席しないのに話をして。」

「いえいえいえ、お構いなく。小さい頃は『お城の舞踏会いいなぁ、私も行きたいなぁ。』と思ったりしましたけど、この年になって現実が見えるようになると、全然。高位貴族の侍女になった子が『夜会、欲望剥き出しで怖い。生々しくて嫌だ。遠くで見るくらいが丁度いい』って、言ってましたもん。憧れは憧れのままがいいです。今夜の夜会も、綺麗なところだけ教えてください。」

カーライル嬢がそう言ったので、なんか、納得した。確かに夜会は遠目には煌びやがに見えるだろう。着飾った人々、華やかな音楽。けれど、一度中に入れば、その醜悪さに気づくだろう。腹を探り合い、足を引っ張り合う。確かに遠くで見るくらいが丁度いい。けれど、俺もグロリアもウィリアムもその中で生きていかなければいけない。

 夜会は時間がギリギリかもしれない。俺は男だから、そこまで支度に時間はかからないだろうが、グロリアは髪を綺麗に結上げて、化粧して、ドレスを着て。お腹がすいただの喉が渇いただの言うから、その間に何かつまませて飲ませて。さらに、王太子が着飾ったグロリアをある程度は堪能してからでないとホールには行けないだろうし。完全に遅刻だな。まあ、少々遅刻するくらいがいいので、大丈夫だろう。

 こんな時、アルバラ校なら、王宮主催の夜会がある日は休校らしい。聖白百合学園も当日は休みらしく、「出席の準備があるからって、前日から休んでる人もいるわ」とイザベルが言っていた。まあ、あそこはそういう学校だから。

 そんなことを考えていると、ハリスがやって来て、俺を教室の隅に引っ張って行った。

「なあ、殿下とお姫さん、結婚やめたのか?」

「何の話しだ?」

やはり、俺が知らないだけで、王太子はグロリアとの婚約を破棄して、ドロシア嬢と結婚するのか?しかし、何故、平民のハリスが知っている。コイツの父親は大工の棟梁だったな。結婚の際にどこかの城を下賜するのか?それの修繕で知ったのか?

「いや、昨日、表通りで『自分は王太子殿下の婚約者の父親だ』って威張り散らす男がいたんだよ。このクラスの全員、前に一度、お姫さんの親父さんに会ってるだろう。全然似てない男だったからさ、不思議に思って。じゃあ、あれ、偽物だったんだな。『お前偽物だろう』って、怒鳴ってやって正解だったな。蹴りも入れてやれば良かった。」

随分乱暴なことを言う。

 けれど、本当に偽物なのだろうか?既に婚約は破棄されているのでは?今回のドレスは最後まで俺やグロリアに気付かせないためのカモフラージュで、今夜の夜会で婚約破棄を突きつけられるのでは?

 「おい、ローズ、大丈夫か?真っ青だぞ。」

ハリスの声に王太子達が駆け寄ってきた。

「ギルベルト、とにかく、椅子へ。」

そう言って、ヒューバートが脇からかかえるように俺を近くの椅子に座らせた。

 王太子が「いったい、どうしたんだ」とハリスに事情を聞いている。 

 話を聞いたウィリアムは

「殿下の婚約者の父親ということで便宜を図ってもらおうとする人間でしょうか?今回は公爵を知っているミスター・ハリスが指摘してくれましたが、知らない人間は公爵をそのような人物だと思ってしまいますね。困ったことです。」

と言って、グロリアの方を見た。グロリアは泣きそうだ。

 予鈴が鳴って、教師が入ってきた。この話は一時中断となった。

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