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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第二幕 灼熱大陸編
95/123

新章73 知らない天井




NO.89知らない天井


「知らない天井だ」


 ここはどこ? 俺は……真宗だ。うん。記憶はあるみたいだな。

 まぁ、記憶以外――具体的には現状が全く持ってわからないんだけど。


 一応、ベッドの上だから安全っぽいけど、まだ東共なのか? あー、でも東共だったらベッドは主流じゃないか。

 ってことは、西公に戻ってきたってことだろうな。


 で、体は……よし。大丈夫、両手足ちゃんとついてる。筋肉痛はひどいから、死んでるってわけでもなさそうだ。

 ってことは――


「終わったぁ」


 任務が成功したのかどうかは分かんないけど、とりあえず無事に戻ってはこれた。

 みんなが無事なのかは、起きて確認しないとな。まぁ、リズたちは脱出するって言ってたし、俺が戻って来れてるってことはセリカも無事だろう。


 となると、問題は王花か。思いっきりぶっ飛ばしちゃったけど……いや、あいつめちゃくちゃ頑丈だったから大丈夫か。

 

「真宗くん!!」


 ドタバタと騒がしい足音を立てて、セリカが部屋へと入ってくる。


「よっ、セリカ。無事みたいでよかった」


「こっちのセリフだよぉ!!」


「おっととと」


 入ってくるなり、真っ先にセリカが抱きついてくる。

 小さく震えてるところを見るに、心配かけてたみたいだな。


「よがっだ! し、死んじゃっだがどおぼっでだがらぁ!」


「心配しすぎだって。めちゃくちゃ元気だから大丈夫だぞ。あと、冷たいから涙拭いてくれ」


 全く。しょうがないなぁ、セリカは。心配してくれるのは嬉しいけどさ。

 ……ん? なんか首がネチャネチャする気が――


「って、鼻水まて伸びてるじゃねぇか!」


「ごべんねぇ」

 

 どうすんだよこれ。多分借り物の服なんだけど。まぁ、どうせ洗濯して返すわけだし別にいいか。しばらく肩が冷たいのに目を瞑れば。


「なぁ、セリカ」


「ん? なぁに?」


「みんな無事なんだよな?」


 問いかけた瞬間、セリカの表情が明らかに曇ったのが見て取れる。

 この時点で嫌な予感はしていたが、気のせいだと自分に言い聞かせておこう。


「う、うん。みんな無事だよ。王花くんの部下が避難させてくれてたみたい」


「そうか。よかったぁ」


 なんだ、ただの思い過ごしか。一瞬変な空気になったから何かあったのかと思ったじゃねぇか。


「で? 王花は?」


「えっとね、王花くんは……」


「お、おいまさか――」


 そこまで言いかけて、重大なことを思い出した。そして、思い出した瞬間、身体中から血の気が引いていく。


 そうだ。俺が殺したんだ。いや、実際には俺ではないんだけど、俺が殺したようなものだろう。


 なんでこんな大事なこと忘れてたんだ? 意識が朦朧としてたとは言え、絶対に忘れちゃいけない事だっただろ。


「俺が……殺した、のか」


「真宗くん? いきなりどうしたの?」


「俺のせいで、王花は死んだのか」


「ちがうよ! 真宗くんのせいじゃ――」

「俺のせいじゃないって言うなら、じゃあなんで王花は死んだんだよ」


 セリカは気休めを言ってくれてるけど、今回ばかりは弁明のしようがない。

 あの時は、後でどうとでもなると思ってた。けど、結果はこの通り、どうにもならなかった。


「笑えるよな。結局目を逸らすための言い訳だったじゃねぇか」


「そんなこと……」


 そこまで言って、セリカは苦しげに俯き、押し黙る。

 自分が現実を受け入れ切れなくて、偏屈になっているのはわかっている。それでも、やっぱり気持ちの制御ができない。


「俺がもっと強かったら、王花が苦しんでることにもっと早く気付いてやれてたら、こんな結末にならなかったはずなんだ」


「そんなことないよ! それに、私が魔法以外も使えてたら、王花くんを救えてたかもしれないのに……」


 セリカが慰めようとしてくれてるけど、正直全く頭に入って来ない。

 仲間を自分の手で殺めた。その事実だけが、重くのしかかって体を動かせなくする。


 気づけば、起こしていた上半身を再びベッドへと逆戻りさせ、腕で目を覆っていた。

 さっきからセリカがずっと何かを言い続けているけど、それすらなんの慰めにもならず、俺の心をチクリと刺しては通り過ぎていく。


 もういっそ、『お前が殺したんだ』って、罵ってくれた方が楽なのにな。

 だって、さっきセリカが言った言葉。その通りだって思っちまったんだから。


 弱くて情け無い自分も嫌だけど、こうやってすぐに言い訳を探しだす自分が、本当嫌になる。


「無理しなくて良いよ。セリカ」


「え?」


「心にも思ってない事言って、慰めようとしてくれなくても、ちゃんと分かってるから。お前も俺のこと、役立たずのクズだって思ってんだろ?」


 あぁ、何言ってんだろ俺。セリカがそんな風に思ってないことなんて分かってるのに……これじゃただの八つ当たりじゃねぇか。


「ねぇ、真宗くん何を言ってるの? そんなこと思ってるわけないじゃん! 好きな人のこと、そんな風に思うわけないよ!」


「それも本当なのか?」


「……どう言う意味?」


「普通、初対面の奴をいきなり好きになったりしねぇだろ。なんで好きなのかも聞いたことねぇし」


 口に出した瞬間、言ってはいけないことを言ったのだと悟った。

 けどもう遅い。一度発した言葉は引っ込んではくれない。みるみるうちにセリカの血の気が引いていき、無言のまま立ち上がる。


「ごめん。ちょっと席外すね」


 セリカは小さく言い残すと、小走りで外へと出ていってしまう。

 それに対して引き止めることもできず、ただ天井を見つめることしかできない。


「最低だ……俺」


 自分ても驚くほどか細く、消え入るような声でそう呟く頃には、もう何もかもがどうでも良くなっていた。


………………………………………………………………

To be continued

どもども!ちょいと遅刻の雅敏一世です!

ってなわけでー? 祝!新章第二幕、開幕!!

なんですけど、おっっっもいですね!内容が!けどご安心を。後少し。後少ししたら色々分かりますのでお楽しみに〜

ではでは、また会いましょ〜♪

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