新章68 俺の勝ちだ
NO.84俺の勝ちだ
残された時間は少ない。体力的にも限界が近い上に、援軍まで来るとなると、やっぱり相手が増えるまでに片付けるのが妥当だろう。
魔力もかなり使っちゃったから、セリカに丸投げするわけにもいかない。
それに、援軍がどれくらい強いかは知らないけど、セリカでも2人相手はきついだろう。
ってなわけで、ヒルデガルドは俺が倒さなきゃいけない。
救ってやるって宣言したばかりだしな。
「ちょっと待て! お前そんな強かったのかよ!」
とはいえ、一筋縄じゃいかない。自由意志を奪われたってことは、今までとは違って本気……いや、元から本気ではあったんだろうけど、なんて言うか、隙がなくなった感じだ。
ただただ冷徹に急所を狙われ続けてる。
さっきまでのが『戦い』だとするなら、今は『作業』だな。ひたすらに俺を殺すのに最適な動きをし続けてる。
「なんで言ってくれなかったんだよ。いや、言えなかったのは理由があるんだろうけどさ、それでも――」
返事はない。反応も一切ない。でも語りかけ続ける。
例えヒルデガルドが話せないのだとしても、きっと声は届いていると信じているから、ひたすらに自分の胸の内をぶち撒けていく。
「頼ってくれたってよかったじゃねぇか!!」
叫ぶと共に、渾身の一撃を叩きつける。
もちろんこれが決定打になんてならないけど、よろめかせることには成功した。よし!これならいける!
まずは『雷斬り』で体勢を崩して、一回転し反対側からもう一撃叩き込む。
すかさず後頭部をぶん殴って、拳に痛みを感じながらも、後ろから股間を蹴り飛ばす。
いや、やってること外道だなおい。
でもしょうがないじゃん。こちとら正式な戦闘なんてやったことないから、喧嘩みたいな方法でしか戦えないんだもん。
流石にやられっぱなしではいてくれないヒルデガルドが、手裏剣で殴りつけてくるが、すんでのところで防御が間に合った。
いってぇ、なんて力してんだよ。今ちゃんと受けたのに、腕ビリビリする!
「けど、負けてやらねぇよ。操られて、何もかも諦めようとしてるお前なんかにはなぁ!!」
全力で煽ってやると、ヒルデガルドの顔が一瞬曇ったのが目に見えてわかる。
「やっぱり聞こえてんじゃねぇか! いい加減戻ってこいよ! いつまでもいいように使われてんじゃねぇぞ!」
自分でもかなりめちゃくちゃなことを言ってる気がするけど、そんなもの知ったことじゃない。聞こえてるって分かった以上、思ってること全部ぶつけてやる。
文句言いに戻ってきてくれれば万々歳だ。
「思えば、俺らってすげぇ短い付き合いだったよな」
実際、ヒルデガルドと会ったのって今朝なんだよ。
それでも、大事な仲間なことには変わりない。
というか、今朝から今に至るまでの時間が濃厚すぎて、全然短かったように感じないんだよな。
こうして一方的な語りかけの間にも、打ち合いは続いていく。
「なぁ、お前だって楽しかっただろ? それとも、あれも全部演技だったのか?」
ヒルデガルドは、当たり前のように無言を貫き通す。
それでも、聞かずにはいられなかった。だって、俺は楽しかったから。
例え演技だったとしても、ヒルデガルドとセリカと一緒にいた時間は、紛れもなくかけがえのないものだったから。
「それに……まだ入隊するかどうかの返事、もらってねぇぞ!!」
その瞬間、ヒルデガルドの様子が一変する。
口元はわなわなと震え、目にはうっすらと涙が浮かんでいる様子から、ヒルデガルドではなく王花なのだと瞬時に理解できる。
「自分だって……もっと、もっと貴様らといっしょにいたかった!!」
「だったら!」
「無理なんだよ!どうやったってあの方には逆らえない!自分は、貴様らまで巻き込みたくない!」
ヒルデガルドの悲痛なまでの叫びに、たじろぐことしかできない自分が歯がゆい。
だってヒルデガルドの表情が、あまりにも苦しそうだったから。
「だから……だから真宗。助けてくれ……!」
「――ッ!」
胸が痛い。あの方ってのが誰なのかは知らないけど、ここまで言わせるのかよ。
「頼む……ぐっ」
そこまで言うと、ヒルデガルドは、頭を押さえてうずくまり、立ち上がった時にはまた先程までの無表情に戻ってしまう。ご都合主義みたいにはい戻りました。って訳にはいかないか。
覚悟を決めろ。大和真宗。
さっきまでヒルデガルドにぶつけてたのはただのエゴだ。ヒルデガルドのことを思うなら――
「でも、そんなことできねぇよ!!」
涙で目の前の景色が滲む中、ヤケクソとばかりにヒルデガルドの顔面を全力でぶん殴る。すると、まだ痛みが残っているのか、抵抗すら出来ずに吹っ飛んでいく。
『殺してくれ』そう言った時の顔が頭から離れない。
「そんなことできねぇ。けど、お前が心の底からそれを望むなら……」
ここで長引かせることは、ヒルデガルドを苦しめることに他ならない。
結局俺は、自分の『殺したくない』って気持ちを押し付けてただけなのかもな。
「なぁ、王花」
あえて、ヒルデガルドではなく、王花の名を呼ぶ。
いっしょに過ごした『王花』が、偽物じゃなかったのだと信じて。
そして、いつも通り『光々刺突』を繰り出すために愛刀を構える。
「ありがとうな」
そう言って微笑んだ瞬間、ヒルデガルドの顔が少しだけ綻ぶ。
決意と共に勢いよく地面を蹴り飛ばし、ヒルデガルドへ迫る。最期に言葉は交わせないけど、これでよかったんだよな?
メギドフォルンが直撃する寸前、たまたま目があったヒルデガルドは、『こちらこそ』そう言って微笑んだような気がした。
刃が肉を貫いた不快な感覚を感じた頃には、俺は倒れ込んだヒルデガルドの頭上に立ち尽くしていた。
「――ッ、俺の……勝ちだ」
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To be continued
どもども!金曜日じゃないけど雅敏一世です!
ご安心を、多分きっと金曜日も投稿しますよ!今回は筆が乗ったおかげで早かっただけなので!
さて、ヒルデガルド戦、決着!!
……ですがだいぶしんみりした回となっております。ですが、大事なところなので曲げるわけにはいかなかったのですよ。
さて東共奪還作戦、ここからどう動いていくのか!
乞うご期待ください♪
ではでは、また会いましょー♪




