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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第一幕 東共奪還作戦編
78/123

新章59 豹変




NO.75豹変


 リズの昔話も終わり、再び歩き出すこと数十分、リズたちはついにとある扉の前にたどり着いた。

 ちなみに、ここは最初にリズが言っていた最上階。つまり、この先にはおそらくヒルデガルドとその部下がいる。


 それも、双方かなりの強者。まぁ、敵地――それも最上階なのだから、当たり前なのだが。


「おい、チビども。入る前にちょっと話がある」


「「――?」」


 リズの改まった言い方に、興味津々で扉を開けようとしていたイナルナが振り返る。

 もう少し遅ければ、嬉々として扉をくぐり、中に入っていってしまっただろう。


「憶測だが、この中には多分ヒルデガルドが居る。そうじゃなかったとしても、幹部級が2人。言うまでもなく危険だ」


「そりゃあ、そうでしょうね」


 「何言ってんだ」と言いたげなイナの視線に、イラっとするも、キレても面倒なだけなのでスルーして続ける。


「今なら引き返せるぞ」


「あぁ、そんなこと」


「そんなことって……」


 今度は一転、拍子抜けしたようなイナの表情に、リズは思わず絶句してしまう。


「ここで引き返すくらいなら、最初からついてこないわよ」


「お前……」


 すまし顔で返すイナだが、その膝は震えていて、よく見れば冷や汗までかいている。ちなみに、ルナはよくわかっていないのか、いつもと変わらない無表情だ。


「それに、入り口でも思ったけれど、置いて行かれた方が怖いわよ」


「確かにな」


 それもそうかと思い直したリズは、決意を込めて2人の頭に手を置き、軽く撫でる。

 そこに込められている思いは、シルヴァとは違い親愛の方が近いだろう。どこがどう違うかは、あえて明言しないが。


「安心しろ。お前らは絶対守ってやる」


「た、頼んだわよ」


「…………ん。よろしく」


 最後に笑いかけ、気持ちを切り替えて扉を開け、眩い光のトンネルに身を投じる……と、ここで気づいたことがひとつ。


「そういや、お前ら武器は? 初任務の時持ってただろ?」


「「あ」」


 リズの問いかけに、2人とも息ぴったりで顔を見合わせる。


「やっぱ置いてくぞクソガキども!!」


「あら☆それはできないわよん♪もう中に入っちゃったのだからねん☆」


「あ?」


 任務に武器を忘れてきたなどとふざけたことを言い出すイナルナを怒鳴りつけていると、不意に奥からどこかで聞き覚えのある声が投げかけられる。


「悪い。マジのマジでどういう状況だ?」


 声の方を見ると広がっていた地獄のような光景に、思わずリズも怒りを忘れて素で返してしまう。


「見てわからない? 休憩中よん☆」


「わかんねぇから聞いたんだよ」


 広がる草原、晴れ渡る青空、ハンモックを並べてそこに寝転ぶ筋肉ダルマと髪の長いノッポ。この状況で何を理解しろというのか。

 

 そんな考えが顔に出ていたのか、やけにねっとり話すムキムキな方が立ち上がり、口調に似合わず野太い声で話し始める。


「ガルド様に時間稼ぎ頼まれちゃってねん☆しょうがないから分断したんだけど、あんたたちがあまりに遅いから、退屈しちゃってお昼寝してたのよん♪」


「あぁ、そうか。で? どっちがヒルデガルドだ?」


「あんた、あたくしたちに全く興味ないわねん☆いい男なのに釣れないわねん♪」


 茶化すような男の言い方に、うんざりしながらもあくまで淡々と事務的に返事をする。

 必要最低限の会話以外はしない、それを態度で語っている。


 この手の人間は、リズの1番苦手なタイプだ。本来なら口を聞くのも嫌なところ、イナルナに任せるわけにもいかず、仕方なく必要な問答だけをこなしている。


 ちなみに、イナルナは驚きからか完全に硬直している。口をポカンと開け、ハンモックの男たちを眺めている姿は割と滑稽で、リズの怒りも思わず晴れ……は、しなかった。


 最低限の自衛くらいはしてくれると思っていたリズにとって、イナルナがそれすらできないことは、単純計算で負担が2倍ほどに増えたことに等しい。


 しかも相手は、見たところリズと同等程度の強さなのだ。

 ただでさえギリギリの戦いを強いられるであろうところに、ふたりの護衛までしなければならないとなれば、リズの負担は察するに余りあるだろう。


「ここにガルド様はいないわよん☆あてくしがデスピナでこの子がプロテウスちゃん。ほら、起きなさいな!」


 デスピナと名乗った大男は、隣でいつまでも寝こけている対照的な体格をした優男の頭を軽くこづいて起床を促す。


「ぬ? あぁ、侵入者か」


「そうかよ。で? やんのか? こっちは自衛すらできねぇアホがいるから、できれば戦いたくねぇんだけど」


 若干寝ぼけているプロテウスを無視して、リズが再び話を続ける。


「ん〜、それはできないわねん☆だって暇だも……の!!」


「ちょ――!!」


 掛け声と共に、入ってきてすぐリズたちを苦しめたぬいぐるみが、10体ほど一斉に襲いかかってくる。


「つか、これてめぇの仕業だったのかよ!!」


 この、見た目に似合わず暴力的すぎるぬいぐるみたちで分かる。こいつらを操っているのは、おそらくデスピナだ。その証拠に、心なしか普通のぬいぐるみに比べてちょっとだけゴツい気がする。


 一旦後ろに飛び退き、距離を取ったリズは、そのままの流れを活かして追いかけてきたぬいぐるみの内、手前の2体を切り捨てる。


 このぬいぐるみ達、攻撃力は高いものの、防御力はただのぬいぐるみと大差ないので、剣で切れば大した力を込めなくとも真っ二つにできる。


(残った奴らは魔法で――)


 火属性の魔法で残りを一掃してしまおうと考えたリズは、即座に実行に移すべく、相性をしつつぬいぐるみ達に手の平をかざす。


「んもー! きゃわいいぬいぐるみちゃん達に何するのよん☆」


 が、デスピナのふざけたひと声で、せっかく形作られていた魔力の弾が、跡形もなく弾け飛んでしまう。


「ふざっけんなよクソが!!!」


 仕方なしにかざしていた手を引っ込め、体勢を立て直してから、まずは右ストレートで一体、続いて残りの首を刎ねて一掃し、ことなきを得る。


「きゃぁぁぁ!!」


「あぁ!? 今度はどうした!!」


 流石に、いきなり動きすぎたせいで息を切らしていたリズが、イナの悲鳴に振り返ると、二足歩行のカエルのぬいぐるみに包まれたイナが、ワナワナと震えて立っていた。


 何故、イナと分かったか?理由は簡単だ。


「なんで私だけ顔丸出しなのよ!!」


 カエルの腹の辺りに、イナの顔がぽつんとくっついているのだから……


「マジのマジでどうしたんだよ!!」


………………………………………………………………

To be continued

どもども!毎週金曜日投稿チャレンジ中の雅敏一世です♪

期日を決めないと、ダラダラ書いてしまうので『金曜日ならいけるっしょ!』という、ナメた理由で始めたチャレンジ、いつまで持つのやら…

一応年末までこのスタイルで行く予定なので、把握お願いします。

ではでは、また会いましょ〜♪

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