新章57 双子と魔王の珍道中
NO.73双子と魔王の珍道中
「すっごい勢いで落ちてったわね」
突如出現し、真宗たちを吸い込んでいった巨大な穴を覗き込み、イナがそう呟く。
多少の冷や汗程度はかいているものの、取り乱したりしないところを見るに、着々と真宗の問題行動に対する呆れ……もとい信頼度が高まっていることが窺える。
「まぁ、あいつらなら何とかするだろ」
対するリズも、別段気にした様子はなく、本気で真宗たちなら大丈夫だと信じきっている顔だ。
リズ自身も、なぜあのヘタレにこんなに信頼を寄せているのかがわからないが、心のどこかに『まぁ、真宗なら大丈夫だろ』という、謎の自信がある。
「おい、ガキども」
答えの出ない思考に区切りをつけたリズは、背後でわちゃわちゃしているイナルナに声をかける。
「見ての通り、こっから先は俺ら3人で行動することになるわけだが……」
「ちょっとルナ!! 今何をポケットに入れたの!?」
「……綺麗な、石」
「綺麗だとしても石は汚いわよ! ぺってしなさい!」
(聞いちゃいねぇ)
薄々勘づいてはいたが、やはり子守は一筋縄ではいかない。というか、自由奔放すぎるのだこの2人。
ルナが目についたものを触って問題が起き、イナがそれについて行って問題を大きくする。負のサイクルが完成しているのだった。
今だって、ルナが壁に付いているボタンを――
「って、おい!! バカ!!」
押した瞬間に、ルナたちがいた真上の天井が開いて巨大な岩が降ってくる。
間一髪でリズが間に合い、『青天の霹靂』で岩を粉砕しなければ、駆け寄ってきていたイナごとぺちゃんこだっただろう。
「おーまーえーらーなー……」
「「ひぃぃっ!!」」
手を振り上げたリズに、殴られるのかと震えていたイナルナだったが、予想に反して頭に受かる感触は柔らかかった。
「いいか? 駆けない。叫ばない。変なボタンは押さない。これだけは守れ。あぶねぇから……わかったな?」
目線を2人の高さまで合わせて、リズが小さく微笑む。
「わ、わかったわよ」
「…………ん」
言動が粗暴なせいでとてもそうは見えないが、リズは意外と子供好きだ。
出会った頃こそ、真宗を目の敵にしていたため仲間だったイナルナに対しても、少なからず敵愾心があったものの、誤解が解けた今、邪険にする理由などどこにもないのだ。
(とかなんとかやってるうちに掴めたな。最上部にデカい魔力が2つ……か)
イナルナと話している間にも、ずっと魔力を探っていたのだが、隠す気もない魔力の気配が最上階――3階にあたる部分にふたつある。
片方はそこまで大きくない。せいぜいイナと同じくらい。だが、もう一方が問題だった。
魔力量だけで見た場合、下手をすればリズよりも強い。おそらくこっちがヒルデガルドだろう。
「さて、あんま長居するのもアレだし、あいつらと合流すんのは諦めて上目指すか」
「了解だわ!! 私についてきなさい!!」
「あぁっ! こら!! 走るなつったろ!!」
言いつけを守らず走り出すイナの首根っこを掴んで引き戻す。
(マジのマジで、真宗のやつよくもこの自由人2人と旅してたな……そういや、シルヴァとかいう奴もいたっけか)
別段、仲良くはなかったが気がいいやつではあったと思う。
というのも、リズ自身、初任務当初はかなり前代『爆炎王』関連でかなり荒れていたため、シルヴァ含め初任務での絡みはあまりない。
(あいつとも、もっと話しときゃよかったな)
暴れるイナと、再び壁にあるボタンを押そうとするルナの手を強引に引き、リズは後悔に胸を痛める。
自分はなんと愚かだったのだろうか。初めて会った時、ちゃんと真宗の話を聞いていれば――
「おら、行くぞ」
もうどうにもならない思いを胸に秘めつつ、せめて今あるものは手放すまいと決心する。
この辺りも含め、どうにもならないくらい真宗に毒されていることに、この時のリズには知るよしもなかった。
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To be continued
どもども!!お久しぶりで!ございます!!
雅敏一世です♪
気づけばもう今年も残り2ヶ月弱……年内に東共奪還作戦編を完結させようと思ってたんですけど……すでに厳しいところまで来ています(笑)
まぁ、2周年までに間に合えばなんとか……
ではでは、作者はこの辺りで失礼!本日も貴重なお時間ありがとうございました♪
また会いましょ〜♪




