新章56「武」の試練
NO.72「武」の試練
「さて、やーっと残りひとつになったな」
とか言いつつ、「技」の試練も「知」の試練も、意外とあっさりクリアできたおかげで、疲労感の割には時間は経ってないんだけどな。
「『武』の試練……ごり押しでなんとかなるかな?」
「お前はこと戦闘になると、どうしてそう脳筋になんだよ。『技』の試練の時も危なかったんだからな」
「えへへ、あの時は張り切りすぎちゃった」
「てへっ」と小さく舌を出して自分の頭をこつくセリカ。
毎度毎度、ちょっと可愛いのがムカつくんだよなぁ。
「まぁ、ここまで余裕だったんだし、次もどうせ余裕だろ!」
ちょっとフラグ臭漂う発言だけど、別に大丈夫だろ。そんなにいきなり難しくなるわけないし。
♦︎♦︎♦︎
ついに訪れた「武」の試練。最後を飾る試練を前に俺は――
「わぁぁぁぁあ!! 無理無理無理ぃぃ!!!」
毎度のごとく泣きながら逃げ回っていた。
もはやお決まりとなったこの光景だけど、ちょっと言い訳させてくれ。
まず、さっきの発言がフラグっぽかったことは認める。それでも、何かあるかもしれないと警戒はしつつ試練の間に入ったんだ。
で、入ったまではよかった。入ったまでは良かったんだけど……はぁ、正直に言おう。すっ転んだ。まー、盛大にすっ転んだ。
その時、何かを押した感触があったんだけど、まだやらかしたって確定したわけじゃないから余裕だった。
……見上げたら、既に押されたボタンの横に書いてあったよね。『最後の試練はバチくそ鬼難しいから、覚悟が決まったら自分のタイミングでおしてねん☆』って。
そんで、出てきたのがこの岩の塊みたいにごっついゴーレムってわけよ。しかも、こいつ堅すぎて攻撃通らねぇの。
魔術の方も試したけど、全くと言っていいほど手応えがなかった。多分、弾かれてるってより、無効化されてる。
「真宗様!? いくらなんでも警戒心足りなさすぎでは!?」
「ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁい!! 今回に関しては返す言葉もねぇよぉぉぉぉ!!!」
幸い……というべきかはちょっと怪しいけど、俺が叫びながら走り回っているせいか、ゴーレムのヘイトは全て俺に向いている。
お陰で、セリカや王花に被害はない……けど…………チラッ。
ひぃぃ! セリカの目が怖い!! けど俺だってさっきの試練でお前に殺されかけたのまだ許してねぇからな!!
「真宗様! なんとか足止めできませんか!? このままでは埒があきません!」
「足止め!?」
足止めつっても、攻撃が効かない以上どうしようも……あっ!! そういえばあれがあった!
「『氷華・昇龍』!!」
変わらず全力疾走しつつ、前に向けて剣を抜き放つ。
すると、切っ先から水滴が飛び、地面についた瞬間、溶け出して染み込んでいく。
よっしゃ! 初めて使う技だから、ちょっと心配だったけど、うまくいったみたいだな。
あとは、この上をあのデカブツが通過すれば……
「かかったな!! ばぁーか!!」
ゴーレムが上を通った瞬間、先程水が落ちていった場所から、龍の形をした水の柱が噴き出してくる。
そして、ゴーレムを全て飲み込んだところで、水から氷へと変化して固まった。
「これでしばらくは動けないだろ」
「真宗くん?」
「はい。ごめんなさい」
圧が!! さっきからセリカからの圧がすごい!!
まだなにも言われてないのに謝っちゃったよ!
「はぁ、もう。気をつけてよね。真宗くんに何かあったら、私、許さないから」
「あれ? 俺の心配してくれてんだよな?」
「――? そうだよ?」
なるほど。どうやら俺とこいつじゃ、別の言語を話してたらしい。
なんて冗談はさておき、ゴーレムを足止めしている時間は有効活用しなきゃな。
悔しいけど、1番最初に目につく心当たりは、例の看板だよなぁ……本当に悔しいけど。
えーっと? 『え?ゴーレムが強すぎて倒せない?しょーがないなぁ。じゃ、特別大ヒーント☆ゴーレムの体に散らばってる水晶12個を全部壊せば倒せるよ♪あっ、水晶は、30秒経つと元に戻っちゃうから気をつけてねん☆』か。
ぐるりとゴーレムを見て回ると、前面に10個、背中に2個の水晶がくっついていた。
いや、いちいち言葉選びがムカつく上に、これヒントじゃなくて答えだろ。
そして、もうひとつ言わせて欲しい。
「12個とか無理に決まってんだろうがぁ!!」
腕なんて2本ずつしか生えてねぇんだぞ!? 絶対無理だっての!!
「それに、一見無理でもクリアしないと出られないのが、この部屋の辛いところですよね」
「まぁ、やるだけやってみるか……もう時間もあんまりないみたいだし」
ゴーレムの方に目をやると、覆っている氷にヒビが入っているのが見える。
頑丈なだけならまだしも、どんなパワーしてんだよこいつ。
「セリカ! 『技』の試練のとき使ってたやつ、もう一回できるか?」
「うん! 時間さえあればできるよ!!」
「オーケイ。んじゃ、俺と王花で時間稼ぐから、準備頼む!!」
俺の合図と同時に、セリカは詠唱を開始し、俺と王花はそれぞれ左右から回り込む。
幸いにも水晶は大きく、セリカが標的を間違えることはないだろう。
「セリカは前面の10個を頼む! 王花! 左側任せたぞ!!」
「「了解!!」」
走りながら剣を回転させて、『百火繚乱』の準備をする。
上手いこと後ろに回り込んで――
「百火繚――ッ」
「真宗様っ!!」
回り込み、『百火繚乱』を放とうとした瞬間、ゴーレムを覆っていた氷が砕け散り、氷を振り解こうとしていた勢いのまま、パンチが俺の方に飛んでくる。
俺は、王花が庇ってくれたから大丈夫だったけど……
「大丈夫か!? 王花!!」
「は、はい。真宗様こそ、大丈夫でしたか?」
「俺は大丈夫だ。お前が守ってくれたから……」
王花は、左肩にパンチをもろにくらい、肩を抱えてうずくまっていた。
骨折まではしてなさそうだけど、相当なダメージだろう。
また、やっちまった。さっき反省したばっかりなのに……
「ごめん……俺が油断してたせいだ」
「真宗様。泣き言は後にいたしましょう。まずは……あれを倒すのが先決です」
王花は、俺の謝罪をそう突っぱねると、痛みで少しだけ顔を歪ませながらも、無理矢理に笑顔を作って立ち上がる。
「そう……だな。悪い。またネガティブになってた」
「ふふっ、構いませんよ。さ、まだ動きが鈍いうちに仕留めてしまいしょう」
まだ出会ってからそんなに時間は経ってないはずなのに、王花の言葉には妙に安心させられる。
これが……兄貴肌ってやつか。雷刃に見習って欲しいくらいだ。
というか、セリカの準備がまだ終わってなかったのに、焦っちゃってたな。ま、お陰でさっきの光景をセリカが見てなかったから、大騒ぎにはならなかったけど。
「真宗くん!! 準備できたよ!!」
「真宗様! 仕切り直しといきましょう!!」
「あぁ! いくぞ!!」
俺の掛け声と同時に、ゴーレムがこちらに向かって咆哮をあげながら走ってくる。
「セリカ!! 王花!! こいつ一回転させるから、そのタイミングで打てるか?」
「うん、まっかせてー!!」
「はい!! 了解しました!」
よし。ゴーレムがこっち向いちゃったから、どうしようかと思ったけど、なんとかなりそうだな。
まずは、俺に殴りかかろうと、振り上げたゴーレムの腕を、『百火繚乱』で思いっきり叩き切る。
図体が高い影響か、大きい予備動作で後ろに腕を振ってたから、案外すんなりとゴーレムの体は一回転し、正面をセリカの方に向ける。
セリカと王花は、上手く水晶を破壊してくれたみたいだけど……俺が間に合わないかも!!
いや、まだ諦めんな!!着地したままの勢いで体の軸を水晶の方に合わせて――
「うぉぉぉぉ!!! 『光々刺突』!!!」
最後の水晶を破壊した瞬間、水晶と同じようにゴーレムの体も崩れていき、やがて瓦礫の山へと姿を変える。
ちなみに、俺は勢い余ってそのまま地面にダイブすることになった。やっぱこの技、制御が効かないんだよな……
けど、何はともあれ――
「『武』の試練! クリアだぁぁぁぁぁ!!!!!」
天井に向かって拳を突き上げると、俺の真横に王花が倒れ込んでくる。
「なぁ、王花」
「どうされましたか?」
「お前、草薙小隊に来ないか? 会ってから時間は浅いけど、お前とならうまくやっていけそうな気がするんだよ。ほら、さっきだってコンビネーション抜群だったじゃんか」
俺の誘いに、王花は「うーん」と唸りながら顎に手を当てる。
そして、数秒ほど目をつぶって考えた後、こちらに拳を突き出し
「この任務を生き残れるかわからないので、任務が終わってから返事させていただきます」
と言って微笑んだ。
「りょーかい。いい返事期待してるぜ」
王花の拳に、自分の拳を合わせると、すかさず頭上に倒れ込んでいたセリカも拳を突き合わせてくる。
「セリカもおつかれさん」
「うん! 真宗くんもね」
大丈夫、ここまで順調……とは言えなくとも、なんとかやってこれたんだ。
次もきっと上手くいくさ。
………………………………………………………………
To be continued
どもども!!ちょーーお久しぶりでございます!!
雅敏一世です!!
いやぁ、本当に久しぶりですねぇ〜……遅くなって申し訳ございません。なんでも許してください、
さてさて、遅くなった原因ですが、番外編にお熱だったせいでございます。サボってたわけじゃないですよ?
珍しく筆が乗って、一万字書いたくらいで(あっ、これネタバレ多すぎて当分投稿できないやつだ)となりまして、今に至ります。
いずれ投稿する予定ですのでそちらもお楽しみに〜
ではでは、また会いましょ〜♪




