新章52 なんだかんだで仲のいい2人
NO.68なんだかんだで仲のいい2人
「うわぁぁぁああ!!! へぶっ!…………痛っててて」
ふざっけんなよあの野郎。名前も顔も知らねぇけどさ!
まさか17にもなって落とし穴にはまるとは思わなかったぞ!
そんなに深いとこまで落とされなかったからよかったけど……深さによっては大怪我じゃ済まなかったじゃねぇか。
「真宗くん大丈夫?」
「あぁ、セリカと王花も無事か?」
受け身を取り損ねたせいで、若干尻が痛いけど、大した怪我じゃないし、余計な心配かけることにもなるから黙っておく。
「自分なら心配いりませんよ」
とりあえず、2人とも怪我もなさそうでよかった。
「さってっと、現状を確認しておくか。落ちてきたのは俺、セリカ、王花の3人。で、目の前には、いかにもな一本道がひとつ」
それも、先が見えないとか言う怪しさ全開のやつ。
にしても、地下に落とされたから暗いのかと思ってたけど、普通に明るいな。景色も上とあんま変わんないし。
「いや、太陽の表情がちょっとだけ違うな」
なんていうか、こっちのは目が笑ってない。
「それに、あれだけ群がってきていたぬいぐるみも見当たりませんね」
「たしかに……妙だな」
まぁ、この建物に入った時点で何が起きても不思議じゃないのは分かりきってたし、今更ではあるんだけど。
「何にせよ、気をつけて進んだ方が良さそうだねっ!」
「そうだな。止まってても仕方ないし、進むか」
一応返事はしておくが、セリカに腕を組まれてぐいぐい引っ張られているせいで、拒否権なんてないんだよなぁ……
♦︎♦︎♦︎
「なんか、すみませんね」
3人並んで一本道を進んでいる道中、王花がいきなりそんなことを言い出した。
「どうした? 藪から棒に」
「いえ、その……」
王花は、気まずそうに頬をかきながら言葉を濁す。
「おふたり、とても仲睦まじい様子なので、お邪魔だったかな……と」
「は? 何言って――」
と、ここまで言いかけて、俺が今置かれている状況に気づいた。
そうだった! 俺、今セリカに腕に抱きつかれてるんだった! そうだよな。そりゃ、こんな見せつけるみたいに腕組まれたら気まずいよな。
「ご、ごめんな! 慣れすぎて当たり前になってた! おいセリカ離れろよ。王花困ってるだろ? あと暑い!」
「いえ、別に構いませんよ。少しからかってみただけです」
王花は悪戯っぽくそう言うと、口元に手を当ててクスクスと笑っている。
王花はそう言ってくれているが、意識してしまったせいでだんだん恥ずかしくなってきた。
「恥ずいし歩きにくいからちょっと離れろ――」
「えぇ!! 別にいいじゃない。先っちょ! 先っちょだけだから!」
「抱きつくことの! どこに! 先っちょの概念があんだよ!」
いきなり訳がわかんないことを言い始めるセリカの頭を掴み、強引に押し退けるが、意外な吸着力で離れる兆しもない。
こいつ……なんでこう言う時だけ無駄に力強いんだよ。
「真宗くんは……くっつかれるの、いや?」
ぐっ、上目遣いやめろよ……んなの、強く否定できないじゃんか。
いや別に?俺も嫌な訳じゃないし。ただちょっと恥ずいって言うか……
「べ、別に――」
「真宗くん。デレの安売りは良くないよ」
「お前本当にしばき倒すぞ」
あーあ。ドキッとして損した。こいつは一体俺に何を求めてるんだよ。
「じょーだんだよ♪真宗くんは私のこと大好きなのは知ってるから」
「いや、そこまでは言ってない」
「あれ!? なんでガチトーンで否定するの!?」
「ほら、バカやってないでさっさと進むぞ」
ふっふっふ。形成逆転だな。セリカが肩を掴んで前後に揺らしてくるが、屁でもない!
そういや、なーんか忘れてるような……
あっ――
「そういや、ここ敵陣地じゃんか」
「「あっ」」
忘れてたのは俺だけじゃなかったらしい。
そんなこんなで、緊張感のかけらもないまま、薄暗い一本道を、まるで下校中のように歩いていくのだった。
ま、俺学校なんて行ったことないけど、多分こんな感じだろ。
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To be continued
どもども、もはや特に言うこともなくなった、雅敏一世です!
今回、一応補足ですが、西公や東共には学校があります。鬼ヶ島にはありませんが。ただ、草薙小隊の面子は特殊事例が多いので学校に行っている子はいません。
その辺もいずれ書きたいですね!
ではでは、今回はこの辺りで失礼。
また会いましょ〜♪




