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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第一幕 東共奪還作戦編
53/123

特別編 ヘタレ魔王の誕生記念!

今回のお話、時系列的には雷刃と任務に行く直前となっております。




NO.???ヘタレ魔王の誕生記念!


 こんにちは! セリカです。私は今、公都にある大通りを歩いています。何をしているかと言いますと、真宗くんのお誕生日プレゼントを探して歩いているのです。

 そうです! 何を隠そう、明日は私の婚約者。愛しの真宗くんの誕生日なんです!


 その点、公都の大通りは屋台やお店が沢山あって探し物にはピッタリなんですが……私、真宗くんとはまだ出会ったばかりなので、好みとかはわからないんです。


 愛の深さに時間は関係ないんですけど、やっぱり好みはあってすぐにでは分からないんですよね。

 ……そうです!! こういうのは私よりも真宗くんと付き合いの長い人たちに聞いてみましょう♪


♦︎♦︎♦︎


「で、俺のとこにきたってわけか」


「うん。だから、教えてくれるかな?」


「それは別に構わねぇけどよ……トイレ出てからでもいいか?」


 私としたことが、はやる気持ちを抑えられなくてリズくんがまだトイレ中なのに話しかけて注意されちゃいました。


 リズくんのこと、最初はちょっと怖かったり、ギルマスの悪口を言ったりしてたから苦手だったけど、話してみると意外といい子だったんです。人は見かけによらないですね。


「わりぃ。待たせたな」


 リズくんが、ハンカチで手を拭きながら小走りでトイレから出てきました。急かしちゃったかな?


「んで? 真宗のプレゼントが何がいいかだっけか?俺も別に付き合いが長いわけじゃねえから、よく知らねえけど……そういやこの前、串揚げはめっちゃ美味そうに食ってたな」

 

「それだよ!! 手料理なら喜んでくれるかも!!」


「おぉ。いいじゃねぇか。マジのマジで喜ぶと思うぞ」


「うん! ありがとうね!!」


 リズくんからいいアイデアをもらった私は、他にも何かないかと、別の人たちを訪ねることにしたのです。


♦︎♦︎♦︎


 察しのいい方々でしたら、さっきのセリフで今から誰の元を訪ねるのかお分かりになったかと思います。

 私は今、とある部屋の前に立っています。なぜ直ぐに入らないのかと言いますと、私がこの部屋の中にいる子たちとほとんど初対面だからです。


 以前にも顔を合わせたことはありましたが、真宗くんたちの初任務以前ではまだ真宗くんとの契約前で人見知りを発動していましたし、任務後に会った時は2人とも寝てしまっていたので、結局話さずじまいだったんですよね。


 意を決して、コンコンと2回ほどノックをすると「はーい」というかかわいい返信と共に扉が開けられました。


「どちら様……ってあれ? あなたは――」

「こんにちは。イナちゃん!いや、はじめまして……かな?」


「そうね。は、はじめまして」


 短く挨拶を交わすと、たじろぎながらもイナちゃんは部屋の中に入れてくれました。


「――」


 うーん……「こいつ何しにきたんだ」って顔してますね。

 ルナちゃんに関しては、我関せずって顔でベッドの上でゴロゴロしてます。


「と、突然押しかけてごめんね。ちょっと聞きたいことがあって来たんだ」


「なんですかしら?」


「語尾大丈夫? そんなに緊張しなくてもいいんだよ?」


 やっぱり緊張してるみたいですね……あっ、そうだ!!


「……えっ!?」

 

 どうやったら緊張をほぐしてあげられるかと悩んだ末、頭を撫でてあげたら、イナちゃんが素っ頓狂な声を上げて頭を抱えて驚いた様子でこちらを睨んできました。


「い、いきなり何するのよ!!」


「へへへ。ごめんね。これくらいしか思いつかなくって。でも私、あなたたちとも仲良くしたいって思ってるの。だからそんなに緊張しないでほしいなーなんて」

 

「いいから手を離しなさいよ!!」


 振り払われたものの、触り心地が良かったのもあり、無意識のうちにイナちゃんの頭を撫で続けてしまったらしいです。


「……わかったわよ。悪い人じゃ無さそうだし。……ルナも懐いてることだしね」


 そう言うとイナちゃんはいつのまにか私の膝に来ていたルナちゃんを見て微笑みました。


「それで? なんの話だったかしら?」


 そうでした! 真宗くんの誕生日プレゼントの案を聞きに来たんでした!! 完全に忘れてしまっていました。お恥ずかしい。


「あのね? 真宗くんの誕生日が明日なのは知ってるでしょ?誕生日プレゼントに料理を作ってあげようと思うんだけど、何がいいかな?」


「あら、あいつ誕生日だったのね」


 あれ? そこからなんだ……


「じゃあ、一緒に作るのはどうかしら!!」


「え?いいの!?」


「そんなのこっちからお願いしたいくらいだよ!!」


 これは仲良くなるチャンスかも!!


「じゃあ、明日の15の刻(午後3時)に迎えにくるね!!」


♦︎♦︎♦︎


翌日……


 場所よし!材料よし!エプロンよし!

 それじゃあ張り切ってお料理作り――


「やってみよう!」

 

「「おー!」」


 ちなみに、場所はギルドの厨房を無理言って貸してもらいました。勇者の権限はこういう時に便利ですね。

 真宗くんには今晩、ギルドの食堂に来てもらうように約束を取り付けてあるのでそれまでには間に合わせないといけません。


「さっそく串揚げから作っていこう!!」


 まずは材料を切らないといけませんね。今回用意したのは黒青牛、顎長エビ、そして各種季節の野菜です。


「じゃあ、私は具材を切っていくから、イナちゃんたちは衣とかの用意をしてくれる?」


 私が指示を出すと、イナちゃんたちはコクコクと頷いて材料を準備してくれています。

 うん!これなら絶対にうまくいくはずです!!


数十分後……


 あ、あれ? どうしてこんなことになってしまったのでしょう?

 ちょっと切るところを間違えてしまったり、イナちゃんたちが材料をこぼしまくったりと多少のアクシデントはありましたが、順調に準備は進んでいたのに……

 出来上がったのは全て黒い塊です。何かの呪いでしょうか?


「ここが地獄ってやつか」


 と言うのが、応援しに見に来てくれたリズくんが光のこもっていない目でこぼしたセリフです。


「そ、そんなにひどいかな?」


「ああ。食ってみな。クソ苦ぇぞ」


『サクッ』


 本当です。炭の味がします。


「本当ね。3人がかりでここまでひどいと逆に才能を感じるわ」


「…………炭味……美味しい」


 ルナちゃん1人だけ感想が違う気がするけど、誰もツッコまないってことは何か意味があるひと言だったのでしょうか?


「まだ材料は残ってんのか?」


「へ? ……う、うん。張り切って準備しすぎちゃった分がまだ残ってるけど――」

「んじゃ、やり方は教えてやる。後はお前らでなんとかしろ。お前らの尻拭いはごめんだからな。よっしゃ、はじめんぞ!」

 

 なんと!リズくんが作り方を教えてくれるみたいです!

 実際、レシピも何も知らずに作ってたのですごく助かります。

 これなら今度こそうまくい――


 かなかったんですよね。


 なんででしょう? 同じ手順で作っているはずなんですけど……リズが作るのは美味しそうなのに、私たちが生み出していくのは炭の塊です。

 そして、その炭の塊をルナちゃんが凄い勢いで食べてます。体大丈夫なんでしょうか?


「あー、悪い。ちょっと下がっててくれねぇか?」


 言外に足手まといだと言われてしまったらしいです。ちょっとショック……


「そんな悲しそうな顔すんな。また作りたいんだったら付き合ってやるから。今回はもう時間ないんだろ?」


「う、うん」


 小さく返事をすると、リズくんはものすごい勢いで串揚げを作っていた手を一瞬だけ止めて……


「よく頑張ったな。後は俺に任せとけ」


 こちらへ振り向き、微笑みながら慰めてくれました。

 真宗くんがこの子と仲直りできた理由が、少しわかった気がします。


♦︎♦︎♦︎


 その後、私たちができる範囲で手伝い、いざ真宗くんのサプライズ誕生日パーティー本番です。

 食堂の明かりを消してサプライズの準備万端です!


「あれ? 誰もいない……場所間違えたかな? ってか暗!!」


 ここまでは順調です。後は、明かりを付け直して――


「「「「誕生日おめでとう!!!!」」」」


「おわぁっ!! びっくりした……ってか俺の誕生日、覚えててくれたのか」


「ふっふっふ。サプライズ大成功だよ!! 真宗くん。誕生日おめでとう!!」


 真宗くん、平静を保とうとしているんでしょうけど、堪えきれずにニヤけているのがバレバレでかわいい……


「おいこら! 抱きつくなって!!」


 思わず抱きついて怒られてしまいましたが、今日ばかりは譲れません。


「おお!! 美味そう!! ……だけど、こっちの炭? はなんだ?」


 私を引っ剥がすのを諦めたのか、料理を見て喜ぶ真宗くんまたかわいいです。

 というか、気づかれてしまったみたいですね。


「これ、食べてもいいか?」


「いいけど、そっちの黒いのはあんまり美味しくないと思うよ? 実際、美味しくなかったし……」


 私の制止をきかず、真宗くんは黒い塊を口に運び……『ガリッ』だという、食べ物を噛んだとは思えない咀嚼音(そしゃくおん)と共に、噛み砕いていきます。


「ぶっはははは!! にっが!!!」


「だから美味しくないって言ったのに!!」


「何言ってんだ。不味いなんてひと言も言ってないだろ。それに、お前らに作ってもらったものが不味いわけないだろ?」


「真宗くん……」


 その言葉に、私だけでなくイナちゃんたちもガッツポーズをしているのが目の端に映りました。

 なんて愛しい人なんでしょう……本当に、この人を選んでよかった。


「セリカ、ありがとうな。ほら! 冷めないうちに食べようぜ!!」


「うん!!」


 真宗くんに腕を掴まれて引っ張られている私は、今日が忘れられない日になることを確信せざるを得ないのでした。


………………………………………………………………

To be continued

 

 

どもども、一周年を迎えた男、雅敏一世でございます。

今回のあとがきは長くなるのでご注意を。



いやぁ、この一年。長いようで短かったですね。

とは言っても、十月に入るまでは一ヶ月に一度投稿されればいい方という絶望的な更新頻度でした。

それが、十月にアクセス解析という機能をやっと知ったことでモチベがガン上がりし、やっとの思いで本格始動しました。そこから一週間ほど、ほぼ毎日投稿でしていました。

ですが、新作でもなければ特に知名度もない僕の作品を読んでくださる人は雀の涙ほどでした。当然、ブクマやポイントが入るわけがありません。

そして、十一月の中旬あたりから、宣伝のやり方を見直しまして、この辺りからちょこちょこブクマやらポイントがつくようになってきました。が、pvの伸びは安定してませんでしたね。更新頻度は当時の方が高いのに、pvは今の方が多いです。

そこから色々あり、今では無事、一周年という節目を迎えることができました!!

一周年に向けて、自分の中でいくつか目標を立てていたんですが、無事に全て達成することができたのは、ひとえに応援してくださる皆さまや読者様方のおかげです。本当にありがとうございます。

これからも精進して参りますので、どうぞヘタレつをよろしくお願いしますm(_ _)m

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