新章26 真逆なようで似た者同士な2人
NO.42真逆なようで似た者同士な2人
真宗がリズの元へと向かい、先ほどまでとは打って変わって静かになった部屋で、クロスとセリカは話していた。
「ところでさ。セリカ」
「何?」
「あのことは真宗くんに言わなくていいの? 後々面倒なことになるかもよ?」
クロスが頬杖をつきながら含みのある言い方で問いかけると、セリカは顎に手を当てて「うーん」と、大きく首を捻る。
「まだいいかな。いっぱいいっぱいな真宗くんに、これ以上心配かけたくないもん」
「そうかい。でも、いずれは話さないとでしょ?」
「……そうだね」
そう呟き、窓の外を見るセリカの顔は、どこか寂しげだった。
♦︎♦︎♦︎
「よお、やっときたのかよ」
ベッドに横たわって全身に包帯を巻き、叫びすぎたのか枯れきった声でリズが出迎えてくる。
「お前大丈夫か?」
「へっ。そう見えるならマジのマジで目の病院に行ったほうがいいぜ」
意外と大丈夫そうじゃねえか。って言いたいけど、絶対キレられるので黙っておく。
「じゃ、さっさと本題に入るか。なんで俺がお前を嫌ってるか……だったよな?」
「だったかな? たぶんそうだと思う」
必死だったせいで当時のことをよく思い出せない俺たちは、2人揃って頭を悩ませる。
「まっ、そういうことにしとくか」
「そうだな」
どこまでも適当だが、お互い段々とどうでもよくなってきているのだ。だって俺、今じゃこいつのこと嫌いじゃないもん。
リズも多分似たようなもんなんだろうなってのは棘の抜けた喋り方からわかる。
「親父と俺は、西公にあるバレンヌって都市で暮らしてたんだ。一応魔王だった親父が、ギャンブルで生計立ててた。まぁ、俺も働かされてたけどな」
そこまで呟くと、リズは憎らしげに表情を歪ませる。
よっぽど嫌だったんだろうな。
「んで、そんなクズ親父が、帰ってきてすぐこう言ったんだよ」
『リズ……すまねぇ。『逢魔』のやつにやられちまった。俺はもう引退する……後は頼む』
「へ?」
「ってな。鬼丸さんとは俺も会ったことがあるし、そんな人には見えなかった。だから、親父が東共に行く直前に代替わりした今代の『逢魔』……お前を疑ったんだ」
「待て待て待て!! ぜんっぜん心当たりないんだけど!? 俺、先代の『爆炎王』なんて会ったこともないし!!」
待て、そういえばさっきギルマスから封筒渡されたよな?
あれの差し出し人がじいちゃんだった気がする。
「あ? なんだそれ?」
俺がポケットから取り出した封筒を見て、リズが不思議そうに首を傾げる。まあ、今の話の流れでなんで突然封筒出すんだ? って顔してるよな。
「じいちゃん……鬼丸からの手紙だ。この中に話が食い違ってるヒントがあるんじゃないかと思って」
ただ、一つ気になることがある。それは渡された時に言われた
『死ぬほどムカつくだろうけど、くれぐれも手紙破ったりしないよーにね?』
というクロスのセリフだ。
中身見たのかよ。とか、いつじいちゃんから手紙受け取ったんだよ。とか、言いたいことはたくさんあるが、今は置いておこう。
『拝啓、アホ孫――もといアホ真宗。アホは風邪ひかねーらしいから、元気かどうかはきかねーわ。お前のことだから入隊試験に落ちかけてギルマスに助けられてたり、2回くらい死にかけてたりしてな』
もうこの時点で破り捨てたい……ってか、なんで図星なんだよ。悲しすぎるだろ俺のここまでの旅路。
『で、本題だが、お前『爆炎王』の息子と知り合っただろ? 恨まれてるかも知れねーから気をつけとけって言うの忘れててな。思い出したんで手紙を書くことにした』
本題に入った瞬間、ツッコミどころ満載すぎるだろ。そもそも、なんで俺がリズと知り合ったの知ってんだよ。
『めんどくさーけど。いやよ、この間爆炎王の野郎と賭け麻雀してな。盛り上がってどっちかが破産するまでやったんだよ』
あー、なんか嫌な予感がする。
ちなみに、チラッとリズの方を見ると、この世の終わりみたいな顔して項垂れてた。そりゃそうなるよな。俺ももう読みたくないもん。
『お互い全財産使い果たしてな。俺はお前と雷刃を全力としてギルマスに売ったおかげでなんとかなった。んで、あいつも同じ方法で切り抜けたらしいが、ギルマスに売り払う言い訳として、俺の名前を使ったらしいから、一応気をつけとけよ。もう遅いかもだけどな。爽やかなナイスガイじいちゃんより』
色々とやばいカミングアウトもあるし、ツッコミどころしかないが、とにかく今は一言。
「すぅぅぅ……何が外の世界を知って欲しいだ!!! あんのクソジジイがぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
「はっ! つまりあれか。俺らは揃いも揃って親の借金のために売り飛ばされたわけか」
表情の抜け落ちた顔でリズが力無くつぶやく。
「そう……だな。ほんっとにろくでもねえ親たちだよ!!」
「違いねぇ」
「「ぷっ。あはははははは!!」」
こうなりゃもう笑うしかない。そのまま2人して数分間笑い尽くしたあとで、涙を拭きながら向き直る。
「そういや、名乗ってもなかったな。大和真宗だ。これからは七光り野郎なんて呼ばないでくれよ?」
「ああ、わかったよ。よろしくな………真宗」
こうして、リズとの間にあったわだかまりは解け、やっと『友達』になれたような気がした。
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To be continued
どもども、久々投稿の雅敏一世です!!
4000pv突破。本当にありがとうございます。
突然のお知らせですが、5000pv突破を期にカクヨムにも進出しようと思っています。
もちろん、メインはなろうなのでご安心を。
幅広い方々にヘタレつを知っていただきたいと思い、新しい世界にチャレンジしてみます!
どうか応援のほどよろしくお願いしますm(_ _)m
ではでは、また会いましょー




