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ヘタレ魔王の英雄烈伝!  作者: 雅敏一世
新章第一幕 東共奪還作戦編
30/123

新章12 古竜誕生




NO.28古竜誕生


「真宗くん。古竜にならない?」


 静かにそう告げたクロスの雰囲気は、先程までのふざけたものとは打って変わり真面目そのものだった。


「何言ってんだあんた」


 ただし。内容がまともだとは言っていない。


「あれぇ? 今のはおふざけなしで真面目に聞いたんだけどな?」


「確かに雰囲気だけは真面目だったかもしれないですけど、内容がぶっ飛びすぎてて、ふざけてるようにしか見えないんですよ」


 そう指摘すると、クロスはケタケタと笑って詳しく話をし始めた。


「あっははは! ごめんって。突然すぎてわけわかんなかったよね。っと、その前に一つ話しておかなきゃいけないんだった」


「手短にお願いしますよ? じゃないと立ったまま寝そうなんで」


「はいはい。ねえ、真宗くん。この世界に“終焉の古竜”が何人いるか知ってる?」


「……ナニソレ」


 返事を受けたクロスが、椅子の上で器用にもずっこけ、信じられないと言いたげな顔でこちらを見つめてくる。

 ただ、こっちもふざけてるわけじゃないからキョトンとした顔で見つめ返すしかなく、お互い睨み合う謎の時間が数秒続いた。


「本気で言ってる?」


「大マジですよ。ってか、早く帰りたいって言ってるのに、わざわざ面倒くさい嘘つくわけないでしょ」


 気だるいのを包み隠さず言い放つと『そんなわけ……いや、鬼丸くんならありえるか』と小さく呟いている。

 いやぁ、どこに行っても『鬼丸だから』で通用するのは人柄が出てるよなぁ。もちろん悪い意味で。


「真宗くん、流石に“古竜”は分かるよね?」


「それは舐めすぎですよ。いくら何でも分かりますって」


 前にじいちゃんが話してくれたのはちゃんと覚えてるし、

実際に会ったこともあるしな。


「えっとね、古竜が格属性を司ってるのと同じ様に、この世界を構成する概念を司る存在もいるんだ。それが“終焉の古竜”」


「へぇ、そんなのいるんだ」


 何でこう、大事なことを何も教えられてないのかな。

 本当にあの座学の時間は何だったんだろうか。


「でね、『命』、『死』、『空間』そして『時間』。現在、終焉の古竜はこの4人とされてる。けど、この世界にはもうひとつ、重要な要素があるだろう?」


「要素? ……あっ、『魔力』?」


 とりあえず思いついたものを言ってみると、クロスは椅子をくるりと回転させて、一回転したところで指を鳴らす。

 あの椅子回るんだ。何回かここに来てるけど初めて知った。


「惜しい! 正確には『属性』だね。まぁ、『魔力』の方が正しいとは思うんだけど、なぜか呼び方は前者の方なんだよね」


「で? 何で今は4人なんです?」


「それが、とある事件があって亡くなる間際に僕の先祖に託したらしいんだ」


「何を?」


 そう問いかけると、クロスはよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに勿体ぶってから言い放った。


「古竜の因子。古竜を古竜たらしめる力のことさ。それがこれだよ」


 そう言ってクロスが取り出したのは、拳大の虹色に輝く結晶だった。因子と呼ばれた結晶に何故か懐かしさみたいなものを覚えたが、なぜそう感じるのかを考える暇もなくクロスが話始めてしまった。


「この2週間の修行はこの因子に適正があるかを見極める意味もあったんだよ。ほら真宗くんの魔力調べたりしてたでしょ?」


 あの地獄の魔力総入れ替え、そんな効果があったのか。


「結果は?」


「適正あり。大ありさ。正直ここまで適正が高い子は初めてってくらいには、ね」


 そう言ってウインクするクロスだが、無駄に顔が良いせいで、それだけで絵になるのがムカつく。


「けど、やるかやらないかは君次第だよ。無理強いはしない。これを受け取って古竜になるか。受け取らずに魔王として生きるか。それは自由さ。まっ、どのみち平坦な人生ではないのは変わんないけどね」


 ……古竜か。少し前の俺なら即答で「NO」と答えていただろうな。でも、今は違う。


「やります」


 そう答えると、クロスは意外そうな顔をしてから、柔らかい笑顔に変わった。


「意外だね。絶対嫌だって言うと思ってたのに。なんかあったの?」


ニヤニヤしながらクロスが聞いてくるが、別に大層な理由があるわけじゃない。


「何ですか。その謎に厚い信頼は。そもそも会って間もないじゃないですか。まあ、確かにあいつらと会う前なら間髪入れずやらないって言ってたと思う」


 実際、ヴェストに無理矢理試練を受けさせられた時と同じ反応になってただろうな。


「でも……入隊試験で痛感したんですよ。俺は弱い。ひとつ間違えば、ギルマスがこうして特例で入隊させてくれなければ、俺もイナたちも奴隷になってたかもしれない」


 からかわれるかと思ったが、意外にもクロスは真面目に話を聞いてくれる。だから、安心して話を続けることができる。


「あっ、恥ずかしいんでこれは誰にも言わないで欲しいんですけど、俺。あいつら居るの好きなんですよ。あいつらと居る時間が好きなんですよ。この時間を失うのが、辛いし怖い」


 これは俺の本音だ。2次試験で、時間ギリギリになった時、すごく怖かった。ギルドに入らないことがじゃない。

 あいつらと離れるのが嫌だったからだ。調子に乗るだろうから、絶対本人たちの前では言えないけどな。


「だから、強くなれる機会を与えてくれるって言うんなら、俺はそれを無駄にしたくないんですよ」


 話し終えると、クロスはこれまで見せてきた笑顔とはどれとも違う泣きそうな顔で笑った。


「そっ……か」


 そう小さくや否や次の瞬間には、またいつものふざけた笑顔にもどった。感情の入れ替わりが忙しいやっちゃな。さっきのいい雰囲気はどこいったんだよ。


「さあさあ、ではではー! 君にこれを進呈しよー! 使い方は今からちゃんと説明するからちゃんと聞いててね?」


 クロスは捲し立てるように早口でそう言うと、さっきから話題になっている例の塊を俺の口に突っ込んできた!!


「ゔぇ!! まっず!! 何しやがる! 飲み込んじゃったじゃねぇか!!」


 むせながらクロスを睨むと、結晶で窒息させてこようとした張本人は椅子の上で腹を抱えて笑いながら転げ回っていた。


「まあ、説明って言っても今飲み込んだ時点で、しなきゃいけないのは、その塊がなんの属性を司っててどんな魔法を使えるかってのだけなんだけどね」


 そう言うと、クロスは未だ咳き込みながら地べたでジタバタしている俺の目の前にしゃがみ込み、俺の背中を撫でながら説明してくれた。


「うんとね――」


♦︎♦︎♦︎


「じゃあ、俺はこれで。あっ、いきなり口の中に結晶ぶち込んだのはまだ怒ってますからね?」


「はいはい。気をつけて帰りなよー」


 子供扱いかよ。そもそも、気をつけるような距離じゃないだろうに。

 そう思いながらドアを閉める瞬間、呟いたクロスの


「君は変わらないね」


 と言いうセリフは、俺に届くことはなかった。


………………………………………………………………

To be continued




どもども、作者です。まずは、今回の投稿にかなり時間がかかってしまったことご容赦を。

今日はもう時間がないので手短に。

今回は、ただの説明回なように見えて実は割と大事だったりそうじゃなかったりする回です。

ではでは、この辺りで失礼いたします。

また会いましょー♪

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