新章11 世界1短い修行編
NO.27世界1短い修行編
2次試験の時着ていたジャージのような服とは打って変わり、受付の人たちが来ていたような制服に身を包んだクロスが訳のわからないことを言い始めた。
「ってーなわけで。真宗くんには僕の元で2週間。修行をしてもらいます」
「いやだからどういう訳なんですか! もう一回言わなくても、ちゃんと聞こえてはいるから!!」
俺が言い返すとクロスはますますおかしそうに笑みを深める。
「いやー。さっきのグリムとの戦い方を見ててさ、真宗くんまったく魔力の使い方がなってないなー。と思ってさ」
「そうか? そこまでひどくはないと思いますけど……」
たしかに扱いが雑な部分もあると思うけど、付け焼き刃にしては上手く扱えてる方だと思うんだが? じいちゃんは感覚派だったからそういうのは教えてくれなかったし。
「いーや! ぜんっぜんだめだめだよ! そもそも真宗くん。『術式』も何も使ってないじゃないか」
「いやだって『術式』の使い方とかじいちゃん教えてくれなかったし。そもそも『術式』がなんなのかも、いまいちわかってないんですけど」
ぶっちゃけて話すと、クロスはため息を吐きながら説明してくれた。
「あのねぇ。そもそも術式ってのは魔力に指向性を持たせるためのものなの。料理に例えるとわかりやすいかな?」
「料理?」
「そっ、魔力が食材で、術式ってのは調理方法のこと。同じ食材を使ってても、焼くか煮るかで全然完成する料理は違うでしょ? 魔法もそれと一緒なんだよ」
「つまり俺のは、なんも手つけてない素材を出してるだけってことか。けど、『術式』ってどうやって使うんだ?」
正直、術式ってのがどういうものなのか分かっても使い方を知らなければ意味がない。
「イメージ」
問いに対する答えはたったひと言。しかし、それが魔法の全てを物語っているような気もした。
「ただのイメージさ。あと、込める魔力量で、その魔法に付けられる術式も変わってくる。まあ、一定の魔力量じゃないと術式が付けられないってよりは、術式が増えたりすると、消費魔力も増えるって感じかな?」
ひと通り言い終えると、クロスは一呼吸してから再び続けようとした。
けど、正直こんなに一般に話されると訳がわかんなくなりそうなんだが……
「さて、これ以上色々いっぺんに話しても真宗くんキャパオーバーしそうだし、その辺は少しづつ覚えて貰えばいいとして、早いとこレッスン開始といきたいんだけど……」
途中で話を区切り、『なんか質問ありそうだね』と言わんばかりの視線をクロスが向けてくる。
「術式ってのがなんなのかは、なんとなく分かったけど、結局俺が術式が使えないことと、修行とどんな関係があるんすか? 実際、ここまであんまり不自由してないんだけど……」
そう。最大の疑問がここだ。別にここまで術式なしでもやってこれた。ドラゴン相手でさえ、『龍嵐刃舞』を使えれば勝てていた自信がある。だから、クロスがここまでする意図がわからない。
しかし、クロスの答えは俺が思っていたよりもシンプルなものだった。
「君に死んで欲しくないからだよ」
そう告げたクロスの声は、これまで聞いたことがないほど優しかった。そして、柔らかく微笑みながら言葉を続けた。
「僕はできれば隊員の誰にも死んでほしくないんだよ。だから、最低限。任務で生き残れるだけの力はあってほしいんだ。そのための入隊試験だしね」
なるほど、そういうことか。最低限の実力を測るための試験に俺はクロスからの特例で合格した。最後の俺の機転は、本来であれば合格には至らなかったんだろう。
「それに、僕が君を気にかける理由はもう2つくらいあるんだけど、それは修行が終わった後で。じゃ、さっそく始めよっか」
そして始まる、俺の地獄の特訓が――
♦︎♦︎♦︎
まさかの全カットである。
場面切り替え前の一文、倒置法使ってると思っただろ? 違うんだなこれが。
繋がってたんですよ。そんで、なんで全カットなのかというと修行風景があまりにもみるに堪えない映像だったからだ。あと、過酷すぎてほぼ記憶がない。
2週間の間、水を飲んだのは1日1回。ご飯にいたっては2週間のうち3日だけだ。マジで死ぬかと思った。いや、殺されるかと思った。もちろん睡眠なんてもってのほかだ。
魔力操作の特化と称して、馬鹿でかい装置で一旦体の中のマナを全て引き抜かれては戻されを1日5時間ほど繰り返し、それ以外の時間はひたすら筋トレ。水を飲む数分以外はほぼずっと筋トレ。
結果もう、汗まみれの血まみれのゲロまみれ。酷すぎて自主規制するレベルだった。
そんな訳で、おそらく世界一短いであろうたった2週間の修行を終えて、4日ぶりの飯を食べ、ゆったりと風呂に入った俺は、頭をタオルで拭きながらクロスのいる執務室へと続く廊下を歩いていた。
正直、もう眠くてしょうがないが、そんなことは許さないとばかりにアナウンスのお姉さんを遣わせてきたため、こうして仕方なく向かっている。
「そういえば、お姉さんって、なんて名前なんですか?」
ふと、そういえばなにかとこうして縁があるにも関わらず名前も知らなかったことに気づき聞いてみると、お姉さんはそっけなく教えてくれた。
「ミルディです」
目を合わせてもくれねぇ。
もう、態度が冷たすぎて涙が出てくるな。いや、泣きはしないけど。
「そ、そうですか。ミルディさん。改めてよろしくお願いしますね」
「はい。よろしくお願いします。そんなことより、早く参りましょう。さっさと帰りた……ギルドマスターも待っておられるので」
冷たい! 何これ冷たい! ひどくない? 結構友好的に接したつもりなんだけど!! しかも、ちょっと本音見えてるし。
そんなこんなで、思わぬ精神攻撃に俺が立ち直れずにいると、俺の心傷などお構いなしに執務室に着いたミルディはさっさとノックをして入っていってしまう。
「やあやあ、真宗くん。ゆっくり休めたかな?」
「ゆっくり休む間もなく呼びつけたのは一体どこの誰なんでしょうね」
開口一番、文句を言ってやるとクロスは楽しそうに笑った。一体何がそんなに面白いのやら。俺は全然面白くないんだけど?
「別に、なんの用事もなく呼びつけた訳じゃないんだよ?修行を始める前。僕が君を気にかける理由はもうひとつあるって言ってたでしょ?」
あれ? 2つって言ってなかったか? まあいいか。指摘するのもめんどいし、俺の聞き間違いだったかもしれないしな。
それよりも問題は次にクロスが言い放った言葉だった。
「真宗くん。古竜にならない?」
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To be continued
どもども、最近2000pvを達成した男。作者です!
いつも読んでくださる方々。応援してくださる方々。本当にありがとうございます♪
毎回思うんですが、あとがきまで読んでくださる方はいるのでしょうか?まあ、いなくても書くんですけどね!!
さてさて、今回すごい引っ張る感じで終わってしまい申し訳ない。前回引っ張って終わったので、今回はキリ良くおえたかったんですが、文字数の関係でやめました。
ではでは、今回はこの辺りで。
また会いましょー




