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三年目の学校祭 side天界組

 魔の国の根城から人間界を見下ろしながら、ヘレンは悩んでいた。


 覚醒の済んだヘレンの息子、風巻はどことなく明るくなり、魔力の枯渇に苦しむことも無くなっている。元からここまでにしておけば苦しめることはなかった。自覚はある。だが、ヘレンにはそこまでできなかった。


「大魔王様」


 控えていた魔族の1人がぺこりと頭を下げ、膝をつき顔を上げた。大魔王と呼ばれたヘレンはその男を冷たい目で見下ろすと、大魔王の椅子に腰を下ろし足を組んで深く座った。


「なんだ」


「神がこちらに。お通ししてもよろしいですか?」


「……懲りない奴だな」


「しつこいのだけが僕の売りだからね。今日も君はとても美しい」


 気配もなく神、アランは男の横に現れた。男は突然のことに飛び上がりそそくさとヘレンの横に隠れようとした。だがそれは叶わず、ヘレンはギロリと睨むと男に向かって手のひらを向けた。何処からともなく風が吹くと手の中へ圧縮され、強い風を放って男を吹き飛ばした。

 アランは凄絶なヘレンの行為に苦笑し、困ったように首を傾げた。


「可哀想に。彼は無自覚に滅んでしまって。……何をそんなに怒っているんだい?」


「弱者は滅ぶ。魔の国はそういうところだ」


「ふーん……」


 アランの紅瞳が細められた。こう言う時は決まって相手を馬鹿にしようとする時だ。アランは唇に指を当てじっとヘレンを見つめると小さく笑った。


「その理論なら、キミの息子は早々に滅ぶべき存在だったんじゃないかい?」


「何が言いたい」


 低く唸るような声でヘレンが呟くとアランはそっとヘレンの頬に手を伸ばし優しく撫でた。ヘレンは抗うことなくじっと睨むように紅瞳を見つめる。いつもの優しい表情は消え、アランは冷たい目でヘレンを見下ろした。


「キミのことは好きだ。愛している。いつまでも美しい。それに強かだ。なのに小さな子どものように無垢で打たれ弱い」


「馬鹿にしてんのか」


「まさか。……ただ、キミの息子は嫌いだ。見た目こそキミに似て美しいが、中身はアイツにそっくりで反吐が出る」


 優しく撫でていた指に力がこもり、頬に爪を立てた。少し走る痛みに一つも表情を変えず、アランらしくもない穢らわしい言葉にヘレンは鼻で笑った。


「ずっと嫌いだな。私の息子に、伴侶に何の文句がある。さっさと神の国に帰れ。平和ボケしたカミサマが」


「ふふっ、平和ボケしていられたのにキミの息子が余計なことをしているから帰れないよ。知っているだろう?もうすぐ僕の元へ戻るはずだった半身にちょっかいを出している。彼女は力を失い、自然と僕の元へ戻るはずなのに」


「お前が余計な力を息子に与えたからだろ。目先の利益のためだけに、私の望まない形で覚醒させたお前が悪い」


 アランはぴたりと動きを止めた。ヘレンの頬に当てた指先からは無意識に引っ搔いてしまって血が滲んでいる。その手を離すとアランはきゅっと自分の手を抱き締め、俯いた。ヘレンはアランの行動を黙って眺めていたが下を向いてしまったアランの顎に次は自ら指を当てそっと上を向かせ、触れるだけの口付けをした。

 思わぬヘレンの行動にアランは硬直した。指先に感じていたヘレンの熱と今目の前にある愛しい体温に自然と瞳を閉じ、そっと腰に腕を回してヘレンを抱き寄せた。


 2人は何も言わずただ触れ合うだけのキスを味わった。時として数秒だったが、アランにとってみれば永遠とも取れる長い時間だった。

 アランはゆっくりと瞼を開けると名残惜しくも唇を離した。そこに見えたのは初めて会った時と同じ、少女のようなヘレンの柔らかい微笑みがあった。


「馬鹿なカミサマ。何素直に受け取ってんだよ」


「そう……だね。ルール違反だ。こんなこと」


「大神にバレないようにしておけよ。降格だけですまされねえぞ」


「陥れたキミに言われたくないよ」


 指先、手のひらと順々に血の気が引いていくことにアランは何処か心地よさを感じた。ヘレンによって魔力が吸われたことに嫌な気はしなかったからだ。

 アランはヘレンの肩を掴むとなけなしの力で強く引き離し、数歩後ろに下がった。その瞳は敵意を含んでいるにも関わらず、口端は上がり笑んでいた。


「最低な魔女だ」


「お互い様だろ」


「フフッ、こんなにされても僕はキミを好きなんだろうな」


「もう来るなよ。二度と。カミサマが来ていい場所じゃない」


 アランの告白にヘレンは答えず突き放した。その言葉にアランは苦笑すると光となって帰っていった。


 ヘレンは誰もいなくなった空間をじっと見つめると手を上にあげて体を伸ばした。


「さて、思い出させてやんねえとな。我が息子に」


 決意をするように言うと風と共にヘレンはその場から消えた。


いつも読んでいただきありがとうございます!!ほんとにほんとに嬉しいです。筆が止まりそうになるのを皆様に何度も助けてもらい、ここまで来られました。感謝ターキー感謝ターキーです|彡サッ!


来週は通常更新はお休みします。

が、24日クリスマスイヴから怒涛の毎日更新を予定しております。

年末年始お忙しい時期ですが是非またいらしていただけると泣いて喜びます。゜(゜´ω`゜)゜。

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