大魔王と神様①
まったく主人公たち出てきません。新しい短編な感じでお楽しみください。
そこは人間界とは異なる天上の国。一つは神々が住むところ。もう一つは悪魔たちが住むところ。
大魔王は1人大きな椅子に腰を下ろしながらくるくると長い黒髪を指に絡めて遊んでいた。
「大魔王様!」
「なに」
「かっかっかっみがこちらに!」
「は?」
手下の悪魔が1人慌てて部屋に入ってきた。息を切らせながら必死に伝えようとしている。大魔王は聞き取りにくさに苛立ちながら前のめりになって聞こうとするが、ふと横に気配を感じてそちらに視線を向けた。
「変わらず、あなたは美しいですね。大魔王」
神々しいとはこう言うことを言うのだろう。真っ直ぐな薄茶色の髪は腰までの長さがあり、白い服を身に纏った紅い瞳の好青年が大魔王の横に立っていた。
神の言葉に苛立ちを覚え、大魔王は舌打ちをすると肘掛けに頬杖をしながら視線を逸らした。
「けっ。よくもまあ、そんなことが言えるもんだ」
「事実でしょう。悪魔たちだけでなく、天使たちまであなた見たさに命がけでこちらに来ると聞いてますよ」
大魔王は、呼び名こそ無骨で恐ろしいものだが、見た目は相反して妖艶な美女なのだ。長い黒髪と同じ色の漆黒の瞳、唇はほんのり赤く、胸は豊満で露出度の高い紫色の服を見に纏っている。極め付けは短いスカートに編み上げのブーツ。
神の言葉に悪態をつくが実は嫌な気はせず、ほんのり頬を赤らめる。だがそれを見られまいと大魔王はそっぽ向いた。
「バカ褒めしにきた訳じゃねえだろ。なんの用だ」
「まあ、特にはないんですが。あなたの子どもと僕の子ども。元気に暮らしているみたいで何よりだなと」
「お前がわざと仕向けたくせに」
「仕向けなければあなたの子どもは力に押しつぶされるところでしたよ」
「はっ」
大魔王は鼻で笑うと神の方に向き直った。座ったままのため自然と見上げる形になるのが気に入らず、神の胸ぐらを掴むと自分の方へ引き寄せた。体勢を崩しかけた神の腰を掴むとそのまま自分の膝へと招き入れる。
「力に負けるならそれまで。私の暇つぶしにならない子どもは必要ないのよ」
「あなたのその強気な部分も好きですが、少しは心配だったでしょう?夜も眠れなかったとか」
「どっからそれを!」
大魔王はすぐにマウントを取りかえされ、驚きたじろいだ。膝の上に座らされた神はするりと抜け、立ち上がると、代わりにそっと大魔王の頬に触れた。
「誰からも。あなたの目の下にクマがあったからなんとなく」
「っー!くそったれ!帰れバカヤロ!」
かぁっと顔を真っ赤にした大魔王は神の手を振り解くと立ち上がり、自室のある方へと駆けて部屋を出て行く。
神はその様子に小さく笑うとふっとその場からいなくなった。




