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三学期、学年末テストの結果がいつものように廊下に張り出された。
498点 風巻悠馬
498点 土端百華
「お、今回同点じゃん」
風巻が廊下に張り出された結果を見ていると横からひょこっと山本が現れた。風巻が時々勝てるが、その差はいつも1点か2点。そしてまた1点か2点で負けるのだ。おそらく一年間で平均しても同点だ。
風巻は山本のご機嫌な言葉に返事できなかった。悔しさもある。けれど年末にした約束をすっぽかされたのが気に入らなかったからだ。
「こんにちは、風巻くん」
聞き慣れた嫌味っぽい話の掛け方にイラッとしたのを隠さず風巻は振り返った。すでに喧嘩を売っている土端が仁王立ちしていたのだ。
「なんだよ、話しかけんな」
「何よ。約束守れないすっぽかし男が」
「は?」
その場の空気が一気に凍りついた。普段から冷たい土端のことは皆見慣れていたが、今回は風巻まで反応が冷たかったからだ。その様子に山本は自然と一歩下がる。当然のように風巻と土端の一騎討ちの構図となる。
「お前がすっぽかしたんだろ?」
「何言ってんの。3時って言ったのどこのどいつよ」
「何言ってんだ。3時じゃねえ、13時だ」
「は?どこの世界に13時って言う馬鹿がいるのよ!」
「馬鹿に馬鹿って言われたくねえよ。聞き間違いしたのはそっちじゃねえか」
キャラ崩壊とはこう言う時に使うのだろう、と山本は思った。周りの生徒たちもいつもの雰囲気とは違う言い合いにキョトンとして言葉を失う。
どちらにせよ、2人はあまり口数の多い方ではないし、こんなに話しているところも初めて見た者も多い。いつも近くにいる山本でさえ驚いた。
「だ、大体ね。13時だろうが来るまで待ちなさいよ」
「バイトの休憩時間は無限じゃねえんだよ」
「私がどんな思いして外で待ったか分かってんの!?」
「俺がどんな思いであの場にいたか分かってんのかよ!」
怒鳴り合いまで始まってしまった。その後ぴたっと静まり返る。2人はぜーぜーと息を切らせ、暫くして息を整えると風巻が話し始めた。
「もういい」
「同感。あなたに期待した私が馬鹿だった」
2人はそれ以上言葉を交わすことなくその場を去っていった。
生徒達は2人の勢いに押されて暫く黙っていたが、各々顔を合わせ何もなかったことにして、日常に戻っていった。
2人が結ばれるまでまだまだ先は遠い。
一章 終
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