ファンクラブと紅葉色
生徒会役員が決まった。
会長 2年 黒田義光
副会長 2年 谷田琢磨
1年 土端百華
書記 2年 上坂由里
1年 浜本和也
会計 2年 木原俊樹
1年 成田由依
廊下の1番目立つ掲示板に張り出されていた。会長の黒田は1人だけの立候補だったため、自然と決まった。その他の役員は、2年はほぼそのまま上がった形になる。1年は黒田の推薦と立候補も少々。
「えぇ!?」
張り出された紙にほぼ悲鳴に似た声を出したのは成田だった。その場に崩れ、膝をつけて座り込んでしまった。
「風巻くん、いないじゃない!なんで?ええ!?」
どこから知ったのか、成田は風巻が入ると思い立候補して生徒会に入り込んだ。だが、いない。
すると、カツン、カツンと足音が響き渡った。成田が振り向くとそこには数人の女子たちの大群が立っていた。女子たちは高らかに足音を立てて歩いてきたようだ。
「ごきげんよう、成田さん」
「へ?あ、ごきげんよー?」
さらりと長い茶髪をかきあげ、ばっちり決まったメイク、長く伸ばされたまつ毛の向こうからまっすぐな視線を成田に向けた。リボンは一つ上の学年を表す青色だ。
「あなたも風巻くんがお好きなの?」
「え?あ、は、はい!カッコいいですよね!優しいし、頭いいし、運動もできるし、なんたってかっこいいし!」
同じことを2回言ってしまいながら興奮する成田とは裏腹に、茶髪の女は横の女に手を出し一枚の紙を成田の前に差し出した。
「なんですか?これ」
「新しい部活を作ろうと思っているんですの。名前は風巻悠馬親衛隊、なんてどうかしら?」
「ぶっ!えぇ?何それ!?」
つい成田は吹き出して笑ってしまったが、すぐに表情が曇った。周りの女子たちは誰1人笑うことなく真剣に成田を見つめているからだ。
「部員数が10人を超えて先生が1人つけば認めていただけるらしいんですの。これを生徒会に提出していただけませんこと?部員は集まっているのですけれど、先生たちに突っぱね返されてしまって。生徒会の後押しがあればきっと先生たちも許してくださるのでは、と」
「何これ」
放課後、成田はもらった紙を会長ではなく先に土端に見せてしまった。当然の如く、土端は眉間に皺を寄せ嫌悪感でいっぱいな顔をしている。生徒会室にはまだ2人しかおらずそれについて質問するものは他にいない。
「えっと、わかんないんだけど」
「あなたも入ってるの?この訳のわからないもの」
「まさか!入ってないよ!」
成田は慌てて首を横に振った。断れない数の暴力に負けたとも言えず下を向いてしまった。その様子を見て土端は、恐れも知らずその紙をシュレッダーの中に入れてしまった。
「あ!」
「その子たちに何か言われたら土端が処理したって伝えておきなさい。馬鹿らしい」
「えっ、いやでも」
「さ!諸君。初の会議をしようか!」
ぴしゃっとドアが開くと会長になり気分が晴れやかな黒田とその他の生徒会の面々が生徒会室に入ってきた。土端はそれ以上話すことなく席についた。成田も慌てて座る。各々が席に座り今後について話し合いが行われた。




