入学式
15年ぶりに書きます。気長にお待ちください。
今年の入学式はいつもとは違っていたと後々まで語り継がれることになる。
昨日までのポカポカ陽気で桜がぐんと花を咲かせたかが、入学式当日はほんのりと寒さが戻ってきていた。体育館には床暖房が入り、少しばかりぼうっとしてしまう生徒も何人かいるほどだ。新入生すらほんのり眠気と戦っている。
「新入生、挨拶」
司会である教頭の一声と同時に2人の学生が立ち上がった。
ここまではよくある異例であろう。大体は1人で行うものだからだ。生徒達が少しばかり驚くものの、声にするものはいなかった。
だが、壇上に上がった2人を見て皆が息をのんだ。
1人は襟足まで切りそろえられた黒髪、きりりとした整えられた眉毛、すっとした二重、端正な顔立ちとはこう言うことを言うのだろう。着崩されていない学ランに負けないほどしっかりとしたその男は一礼し、紙を広げ読み始めた。
もう1人は更に異様だった。薄茶色の髪はくるくると巻かれ下の方で二つに結われている。くりりとした二重の目の色は遠くから見てもわかるほど紅い。ぽってりとした唇、胸元は少しばかり緩められたブレザー、一年生である証の赤いリボンももちろん緩まっている。極め付けは膝を隠さず太ももにのるスカート。どう考えても新入生挨拶をするような見た目ではない女が同じように紙を広げ読み始める。
両極端な男と女がたがい違いに読むべき箇所に声を乗せる。挨拶が終わる頃には皆がポカンと口を開けていた。
「新入生代表、風巻悠馬」
「土端百華」
2人は一礼をすると顔を見合わせることなく上手下手からそれぞれ降りて席に着いた。
滞りなく式は終わり、皆が自分の教室へと戻る。風巻は1組、土端は6組、同じクラスにはならない。
2人はこうして出会った。この日は言葉を交わすこともこれ以上顔を合わせることもない。たったこれだけの出会いが、2人のその後を変えてしまう。
あえて先に書くが彼等は結ばれる。