8.フレン
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早朝。ソルは既に鍛冶屋から装備を受け取りレスターに手紙を預けていた。今は馬車に乗り出発待ちだ。どうやら他に乗客はいないらしい。
装備だか手入れはしっかりとしていた。
剣、鎧ともに仕上げとして磨き上げられている。これならしばらく問題はないだろう。
そういえば昨日買い出しの帰りにルークと会ってきた。
ルークは既にフレンと話したそうだが危ないことをするなとこっぴどく怒られたらしい。
ちょっとかわいそうだがまぁ仕方ない。場合によってはウルペースに亡き者にされていた可能性もある。
大切な人を助けたい、守りたいという気持ちは素晴らしいものだ。
しかし実行するにはそれなりの力がいる。お金や権力もしくは武力かもしれない。
気持ちだけで何でも解決はできない。それこそ気持ちでなんとかなるなら勇者は初代のみだ。
ということでルークには強くなれと言っておいた。
彼が今後どのように成長するか分からないが、優しく強い心の持ち主だ。悪いようにはならないだろう。
そんなことを考えていると御者に出発しますねと声をかけられる。
昼には宿屋の主人の奥方が作ってくれた食事がある。それがちょっと楽しみだ。
あのソースについてだがあの町では一般的な家庭料理だそうだ。ただ残念ながらちょうど昼食分で切らしたらしくソースを分けていただくことはできなかった。残念。
しかし旅の楽しみは食にあるとあの手紙にも書かれていた。
なのでカルモーの町では食べ歩きをしようと思う。
食べ歩きには自信がある。城下町で兄によく連れ歩かれていたからな。
「すみませーん! 私も乗せてくださーい!」
遠くからなんだか聞き憶えのある少女の声が聞こえる。
「よかった。間に合いました」
肩で息をしながらそう言うと少女はこちらをみる。
すこし暗めの茶髪を肩上まで伸ばしている。そして目鼻立ちのしっかりとした整った顔。つい最近見た顔だ。
というかローブを着たフレンだった。背にはワンドをつけている。
「私もついていきます」
「え」
何を言っているのだこの少女は。
「放っておいたら死にそうなのでついて行くことにしました」
「……危ないぞ?」
「あなた一人の方が危ないです」
そりゃそうだけど。
「いや、家族とかは?」
「私、孤児なので。親代わりの神父様は死にましたし問題ないです」
「悲しい過去をさらっと流さないでくれ」
「私は気にしていないので気を遣わないでくださいね」
困ったものだ。どうしたら諦めてくれるか。
うんうんと頭を悩ませているとフレンがしびれを切らす。
「もう! 男ならさっさと覚悟を決めてください。私があなたを守る。代わりにあなたは私を守る。これで何か問題ありますか!?」
なんかすごい男前だ。
思わず御者と一緒にお~と言いながら拍手する。
「返事は?」
睨まれたのでつい条件反射でこくこくとうなずいてしまう。
それを見たフレンはよろしいと言わんばかりの満足げな笑みを浮かべる。
そういえばルークがフレンはいつもニコニコしてると言っていたが、俺は怒った顔ばっかり見ている気がする。この間はルークのことを見る目があると思ったが、もしかしたら将来女に騙される可能性がでてきた。だめだルークが心配だ。ちょっと今から会いに行こうか。
そんなことを考えているうちに馬車は動き出した。
ああ、どうかルークに変な虫がくっつきませんように。
新作『掃除屋の冒険』もよろしくお願いします。
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