5.ちいさなゆうしゃ
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ソルは大男に教えてもらった鍛冶屋を訪れていた。
「すみません剣の手入れを頼みたいんですが」
奥にいる男に声をかける
こちらを一瞥しカウンターを指さす。
ここに剣を置けということだろうか。
剣を外し鞘ごとカウンターに置いている間に男は目の前まで来ていた。
「鎧も置いていけ」
「え?」
「鎧も置いていけ。整備してやる」
有無を言わせない迫力があった。
鎧を脱いでいる最中に男は剣を鞘から抜き観察していた。
「二日後の朝に来い。それまでに仕上げといてやる」
そう言うと扉を指さす。
ここにいると邪魔になるらしい。
ソルはおとなしく出て行くことにした。
予定通りに教会を訪れる。何はともあれ話を聞こう。
そう思い教会の前まで行くとなにやらもめている声が聞こえる。
「なんでだよおっさん! フレンねえちゃんに会わせろ!」
「うるさいぞ坊主! 毎日毎日忍び込みやがって! ほら帰った帰った!」
子供が教会から追い出されていた。
どうしたんだろうか。
「キミ。どうしたんだ?」
「だれだよにいちゃん」
「俺はソル、城下町からきたんだ」
「ソル? ゆうしゃさまと同じなまえだな!」
ああ、いい名前だろ?
そう言いながら片膝をつき目線をなるべく合わせ笑いかける。
「おれルークってんだ!」
「ルークか。ちょっとこっちで話そう」
教会から少し離れる。
腰掛けるにはちょうどいい大きさの岩があったのでそこに座る。
「それでルーク何したんだ?怒られてたみたいだが?」
「そうだ! きいてくれよソルにいちゃん!」
怒りをあらわにしながらル-クは語り始めた。
えっとさ、このきょうかいにフレンってねえちゃんがいるんだ。
え? ああ、うんその‘しすたー’ってやつだよ。
フレンねえちゃんやさしくってさ、よくおいらたちの遊びあいてになってくれてたんだ。
いっつもニコニコわらってて色んなことおしえてくれるんだ! おこったときはおっかねぇけどな!
しかもまほう! かいふくまほうなら町でいちばんっていわれるくらいすごいんだ!
まえにケガしてたトリみつけたときもすぐになおしちゃってさ!
でもフレンねえちゃん、ちょっとまえからげんきがなくなってきてさ。
なんでもしんぷさまにさからったかららしいんだけど……。
え?うーん、おいらたちが気づいたのはふたつきまえくらいかなぁ。
でさ、ひとつきまえからフレンねえちゃんにあえなくなったんだ。
さいしょはかぜでもひいたのかなっておもったんだけど……。
このきょうかい、ちかにざんげしつってのがあるんだ。わるいことしたことをはなすばしょ。
でもさいきんはわるいことしてもお金はらえばゆるされるんだって。だからそこだれも使われなくなったんだ。
だからそこに閉じこめられてるんじゃないかって。
でもそんなこといってもおとなたちはしんじてくれないし……。
それでさいしょはみんなで助けようとしてたんだけど……、みんなおこられるのがこわくてやめちゃった。
……うん。もちろんおいらもおこられるのはこわいよ。
でもさ、おいらがあきらめちゃったらさ。
フレンねえちゃんをだれもたすけてあげれないじゃん。
ルークは今にも泣き出してしまいそうな声でそう言った。
目はうるうると水にぬれ、鼻水もすすっている。
それでも唇を噛み、涙をことだけはしなかった。
強い子だ。
話を聞く限り教会が何やらおかしなことになっているのは間違いないだろう。
ならば後は俺の仕事だろう。
ルークの頭に手をのせる。短く切りそろえられた髪は触り心地がよい。
「よくがんばったな。あとは俺に任せてくれ」
「にいちゃん、しんじてくれるの?」
「困ってる人を助けるのが勇者の仕事だろ?」
勇者ってのはここだけの秘密な。
そういって口に指をあてる。それを見てルークは両手で口を押さえこくこくとうなずく。
「よし!じゃあ家に帰ってな」
「わかった!」
大きな声で返事をしルークは帰っていった。
ちいさなゆうしゃ