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4.ギルドマスター

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 ソルは老人に言われるがままギルドの客間に来ていた。


 「それでご老人、話とは?」


 老人は受付嬢が運んできた紅茶に口をつける。

 ほうと息を吐きまずは自己紹介からでしょうなと言い話し始める。


 「私はアラモネのギルドマスターです。名をレスター・ブルックと申します。勇者さまこうしてあなたとお会いできることを大変光栄に思います」

 「ご丁寧にありがとう。改めて私はソル・アーベンライン。国王から勇者の称号を預けられている。……私のことはソルと呼んでくれ。彼女のように下手に騒がれても困る」


 先ほどからレスターの後ろに控えている受付嬢をちらりと見る。

 まだこちらを食い入るように見ている。


 「ではソルさまとお呼びさせて頂きます。……彼女のことは許して頂きたい。庶民からすればあなた様、アーベンライン家の方々はおとぎ話の登場人物のようなものです」


 そういうものなのだろうか。


 「話というのはこちらを見ていただきたいからです」


 そういいレスターは小さな箱をテーブルに置く。

 箱には装飾が施されている。それなりの値段がしそうだ。


 「これは?」

 「中身が本題です」


 老人が箱を開け中身を見せてくる。

 手紙らしきものが何枚か入っていた。一番上にあるは蝋で封がされているがその他の物はすでに開封済みのようだ。


 「これは歴代勇者さま方の残していったものです。……たとえ自らが死したとしても次の勇者の力になるために。いつから始まったのかも分かりません。ただこの手紙の存在を知った勇者さまは全員何かしら言葉を残しています。封が切られていない物は五代前の勇者さまが残したものと聞いております」


 「どんなことが書かれているんだ?」


 「人によりけり、ですね。励ましの言葉であったり装備へのアドバイス。この町のおいしい食べ物を書いている方もいます。……そして王国への恨み辛みを綴ったものもあります」


 「……そうか。これ読んでもいいか?」


 五代前というとたしか魔法がまったく使えない勇者だ。

 だから勇者に選ばれた。

 もしかしたら剣術や体術のみで戦闘するコツが記されているかもしれない。


 ソルが手紙を手に取ろうとすると、パタンとレスターによって箱が閉じられる。


 「読んではいけなかったか?」


 「いえ、ぜひ読んでいただきたい。でも条件があります」


 「条件?」


 条件。封になにか仕掛けでもあるのだろうか?


 「はい。この町でなにか噂を聞きませんでしたか?」


 「占いのことか?それとも町一番の鍛冶屋のことか?」


 老人は口をもごもごと動かすが口は開かない。

 はぁとため息をつき何かを諦めたかのような顔をする。


 再び口を開く。今度ははっきりと声が聞こえる。


 「答えられません。ただ鍛冶屋は関係ありません」


 「なぜ?」


 「……それも答えられません」


 占いに関してだけ言葉を濁すというのはそういうことなのだろう。


 たしか口を封じる魔法がある。

 ソフィアが兄さんとケンカしたときに使っていた。兄さんはすぐにディスペルして煽っていたけど。さすがに妹に対して大人げないと思う。


 俺がディスペルを使えれば色々聞けるんだろうが、生憎出来損ないにはそんな器用なことはできない。


 「……レスターさんもしかして頭痛に悩んでいるか?」


 ただ直接口にできなくてもやりようはある。うまく伝われば良いが。


 「……ええ、ここ半年ほど。実は今も痛くてたまらないんです。勇者さま何か良い薬ご存じないですか?」


 察しが良くて助かる。

 後ろにいる受付嬢はよく分かっていないようでまぁ大変と言い部屋を出て行った。


 「わかった任せてくれ。全部終わったら手紙を見せてくれ」


 「ありがとうございます」


 レスターは深く頭を下げる。


 何に困っているのかは分からないが助けを求められているのだ。

 だったら手を差し伸べる。

 出来損ないの勇者でもそれくらいはできるだろう。



 何はともあれまずは鍛冶屋に行こう。

 今から剣を預ければ明日には受け取れるだろう。

 その間に教会のことについて調べてみよう。


 「また後できます」


 考えをまとめ客室から出ようと扉を開けると


 「マスター!お薬持ってきましたー!」


慌てんぼうの受付嬢

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