3.ギルド
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朝食にはパンに干し肉と野菜を挟んだ簡単なものが出た。
干し肉にはソースが塗られていてこれが美味かった。
主人に聞いたところ奥方の自作らしい。この街を出る際にいくらか分けてもらえないだろうか。
そんなことを考えながらソルか向かうのは冒険者ギルドである。
今日の目的は三つ。
まずは道中倒したモンスターの素材を売ること。
国から給金はもらっている。実家に帰ればそれこそ一般人の三倍は優に蓄えがあるだろう。しかし持ち歩ける硬貨には限りがある。定期的にお金は稼がねば。
勇者は貧乏旅と相場は決まっているのだ。
次に鍛冶屋にて剣の手入れをすること。
もちろん自分でもできる。しかし簡単なことだけだ。
やはりプロが手入れするのとは違う。餅は餅屋にだ。
最後は教会に行くこと。
宿の主人が言っていた占いが気になる。場合によっては王に報告する必要があるだろう。
伝書鳩はギルドが持っているだろう。
ギルド内はあまり人がいなかった。
朝、というには遅い時間のため冒険者は依頼をこなしているのだろう。
カウンターにいる受付嬢に話しかける。
「すみません」
「はい、おはようございます! 依頼をお探しですか?」
元気の良い声だ。
「いや、モンスターの素材を売りたい」
「じゃあ見積もりいたしますね! 少々お待ちください!」
素材を渡すと慌ただしく後ろに引っ込んでいった。まだ新人なんだろうか。
しばらく時間があるので情報収集でもしようか。
そう思いギルドの隅で酒を飲んでいる大男に近づく。
見たところ装備にも気を遣っている。これは期待できそうだ。
「ちょっといいか?」
ちらりとこちらを見てまた酒を飲み始めた。
沈黙を肯定ととっていいだろう。
「剣の手入れがしたい。良い店知らないか?」
「……ギルドの裏手にある道を南にまっすぐ行け。突き当たりの右手にある店にいけ。偏屈なじいさんが一人でやってる鍛冶屋がある。この街では一番の腕利きだ」
「ありがとう。一杯奢らせてくれ」
女給に声をかけエールを一杯頼む。
なんでも冒険者や傭兵の間ではこれがマナーらしい。
あとは男のロマンだそうだ。
冒険者の友人が多い兄が言っていたのだ間違いないだろう。
「見積もり終わりましたよー!」
受付嬢の声が響く。
大男がはやくいってやれと言わんばかりに顎でカウンターを指す。
カウンターにいくと一枚の紙を見せてきた。
「読み書きはできますか?」
「ああ問題ない」
内容に目を通すと相場よりも高い値段がついていた。
「随分相場より高いようだが?」
そういうと受付嬢はキラキラとした目でこちらを見てくる。
「はい!なんでも状態がかなり良いので高値で買い取らせて欲しいとのことです!おそらく凄腕の剣士だろうって鑑定士さんが!」
なんだか光が強くなったような気がした。
とりあえず話を続けよう。
「ここにサインをすれば良いのか?」
「はい!」
受付嬢の元気の良い返事を聞き流しながらサインをする。
「確認しますね」
サインを見ると受付嬢は固まった。
その後書類とソルの顔を交互に見始める。
どうしたのだろうか。
なんだかキラキラがどんどん強くなっていく。
声をかけようとすると
「ちょ、ちょっとま、お待ちください!」
変な言葉を残しばたばたと音を立てながら、また奥へ帰って行った。
数十秒後に受付嬢は強面の老人を伴って戻ってきた。
おそらくギルドマスターだろう。
「客室で少々お話しませんか勇者様。至急お伝えしたいことが」
老人は周りに聞こえないように声を落としそう言った。
隣にいる受付嬢のことは忘れよう。なんかもう、眩しくてよく見えないし。
元気な女の子っていいですよね。