悲愁のソレ
笑顔が可愛いキミは、別れを告げた今も笑っている。
行き場がないのか、手を後ろで組んだりして、落ち着きは感じられない。
「今まで楽しかったよ」
その言葉が、心臓の深いところをえぐる。
素直に泣いてくれればいいものを、必死で抑えるなんて。
こっちだって、好んで別れた訳じゃない。
頼まれなければ、ずっと一緒にいた。
毎日、笑って過ごしたかった。
心残りは山程ある。
最後にはハグもしたかった。
でも、ハグをしてしまうと、離れたくなくなってしまうから。
長らく歩き、キミがいなくなっているか確認した。
すると、キミは全速力でこちらに向かっていた。
そして、キミは声を出して泣きながら、僕にハグをした。
その一瞬の表情が、しっかりと心臓をえぐってきた。
左の目尻にあるほくろ。
自然体で生えている長いまつ毛。
綺麗に下がりゆくまゆ毛。
そのどれを見てみても、美しい悲愁が溢れていた。