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第十六話 それぞれの奮闘

「剣の回収? なんだそりゃ?」


 アエリアたちがラージャを訪れた日の昼過ぎ。

 ギルドの掲示板の隣に、大きな張り紙が為された。

 その上部には「剣回収のお知らせ」とあり、その下には最近出回っている出所不明で格安の剣についての危険性が記されていた。

 そして回収に応じた場合、代わりの武器を補償すると書かれている。


「魔族が関わっているかもしれないって……マジかよ」

「いやいや、しばらく使ってるけど何もねーぞ。職人たちがギルドまで手を回したんじゃないか?」

「でも何のために? 代わりの武器はくれるみたいだぜ」

「きっと罠さ。また俺たちが高い武器を買うようになれば、元手が回収できるって思ってるんだ」


 張り紙の内容を見ながら、ああでもないこうでもないと話し合う冒険者たち。

 彼らは魔族が関連しているという文言に怯えつつも、すぐには回収に応じようとはしなかった。

 商人たちの語っていた職人たちがぼろ儲けしているという話を未だに信じているのだ。

 するとここで、カウンターから出てきた受付嬢が張り紙に何かを書き加える。


「回収に応じると、代金と代わりの武器の他に協力金五千ゴールド?」

「……俺、行こうかな」

「いいのか? 仕込みかもしれないぜ」

「だってよ、五千もありゃ美味い酒が飲めるじゃねえか」


 周囲の制止を振り切るように、一人の冒険者がカウンターへと向かい剣を差し出した。

 すぐに近くにいた職員が代わりの武器と銀貨を差し出す。

 ――ただ武器を渡すだけで、半日働いたぐらいの金が貰える。

 その事実に、周囲の冒険者たちも動き出す。

 

「お、俺も!」

「こいつも頼むぜ」


 瞬く間に、カウンターの前に冒険者たちの列ができた。

 先ほどまで渋っていたのが嘘のような有様である。

 我先にと動き出した冒険者たちを見て、アエリアはカウンターの奥でほくそ笑む。


「予想した通りですわ。これで、だいたいの冒険者は剣の回収に応じるでしょう」

「あれだけ渋ってたのに、ずいぶんな変わりようですな……」

「後からお得な条件を出されると、最初からあるよりも印象に残るのですわ。それに……最初に動いた方は、わたくしがあらかじめ仕込んでおいたサクラですの」

「なんと、いつの間に」


 アエリアの言葉を聞いて、驚くギルドマスター。

 彼女がラージャにやって来て、まだほんの数時間しかたっていない。

 しかも、大半を商会での打ち合わせに費やしていたはずだ。

 それでサクラの手配まで済ませているとは、流石というべき手際の良さであった。


「……あ、いた」


 ここで、ギルドにエクレシアが入ってきた。

 カウンターの奥にアエリアを見つけた彼女は、すぐさま走り寄ってくる。

 その小さな手にはクルクルと丸められた紙が収まっていた。

 

「商会にいるって言ってたのに、いなかった」

「ちょうど、回収が始まったので様子を見に来てましたの。商会の者に聞いて下されば、ここまで案内するように言ってありましたのに」

「知らない人と話すの、めんどくさい」


 やれやれと額に手を当てるアエリア。

 単に人見知りなのではなく、めんどくさいと言うあたりがエクレシアの厄介なところである。

 基本的に、誰にでも物怖じせずに会話をすることはできるがとにかくめんどくさがりなのだ。


「まあいいですわ。それで、持っているのはもしかして」

「ん、回収を促すためのポスター」


 サッと手にしていた紙を広げるエクレシア。

 そこには武器を抱えてカウンターを訪れる冒険者たちの姿が描かれている。

 流石は大陸屈指の芸術家というべきだろうか。

 わずか数時間で描き上げたラフな絵にも拘らず、今にも動き出しそうな躍動感があった。

 アエリアとマスターは見ているだけで、身体の奥がそわそわとして動き出したくなる。

 ――絵画技巧ピクトマジック

 エクレシアだけが使える、人の心を操る魔性の技が用いられているようだった。


「完璧ですわ! 街中に張り出しますから、どんどん描いてくださいまし!」

「わかった。けど、手が足りないから助手が欲しい」

「すぐに手配させましょう。何人いりますの?」

「たくさん」

「具体的に言ってくださいまし!」


 こうしてアエリアとエクレシアが騒々しくやり取りをしている時だった。

 入口からふらりとファムが入って来て、すぐに二人の方へと歩み寄る。

 その後ろには、数名のシスターが付き従っていた。


「あら、ずいぶんと大所帯で来ましたわね」

「単独行動などとんでもないと言われてしまいまして……」

「無理もないですわ、聖女ですもの」


 やれやれと告げるアエリア。

 むしろ、聖女の身分を考えればまだまだ護衛が少なすぎるぐらいである。

 もっとも、生半可な護衛では逆にファムの足手まといになってしまうであろうが。


「街の教会の全面的な支持を取り付けてまいりましたわ。集めた剣については、ひとまず私たちに任せて頂ければ結界を使って安全に保管いたします」

「ありがたいですわ。流石、魔族関連となると頼りになりますわね」

「剣の回収自体についても、教会のコネクションでどうにかなるでしょう」

「となると問題は……ノアとシエルですわね」


 そういうと、弟の身を案じて少し渋い顔をするアエリア。

 こうしている間にも、刻一刻と赤い月の夜は迫っていた――。

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