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第三話 飲ミュニケーション

「つまり、剣を売り出したのはコンロンで連中は魔族の可能性が高いってことか?」


 俺たちの話を一通り聞いたバーグさんはすぐにそう聞き返してきた。

 クルタさんは厳しい面持ちをしながらも、ゆっくりと頷く。

 これまでに遭遇してきた様々な大陸の異変。

 その多くには魔族とコンロン商会の陰があった。

 俺たちはこれまで両者を別物だと思っていたが、今回の一件で点と線が繋がった。

 コンロンが闇商人の皮を被った魔族の組織だとすれば、すべての辻褄が合うのだ。


「だが、連中が魔族の組織だとしてよ。ここへ来て正体を現すような動きに出たのは不自然だな。魔界の鉄でできた剣を売るなんて、魔族だと疑ってくれって言うようなもんだぜ?」

「ジークに策を次々と潰されて、余裕がなくなって来たんじゃない?」

「あるいは、もう隠す必要がなくなったからとか」


 ニノさんの一言に、ロウガさんの顔が青くなった。

 それはすなわち、これからコンロンが大規模な行動を起こすということに他ならない。

 奴らの起こす行動が、ろくでもない結果を招くことは目に見えていた。


「この剣、本格的に調べた方がいいかもね」

「ええ、持ち帰ってちょっと見てみます」

「入手経路についても調べねえとな。確か、冒険者を中心に出回ってるんだったか?」

「ああ。そもそも、この街で剣を買う奴なんてだいたいが冒険者だがな」

「ちょっくら知り合いに当たってみるか」


 こうして俺たちは、バーグさんの店を出るとギルドに向かった。

 やはり、冒険者の情報を集めると言ったらあそこ以外にはありえない。

 夕暮れの街を歩いていくと、次第に人通りが増えて冒険者の姿も目立ち始める。


「しかし、そんなヤバい剣がいつの間に増えてたんだろうね? 全然気づかなかったよ」

「私もです、お姉さま」

「俺たちがエルバニアに行ってた間とかじゃないですか?」


 大剣神祭に参加するため、俺たちは移動も含めて二か月近くラージャを離れていた。

 その間に剣が流通していたとすれば、気づかないのも無理はない。

 まして、鋼の色こそ少し違うが見た目はほとんど普通の剣なのだ。


「よう、コザックじゃねえか!」


 ギルドに着いたところで、ロウガさんはすぐにカウンターにいた冒険者に声をかけた。

 声を掛けられた冒険者の方も、すぐさま笑顔になって応じる。

 知り合いらしいと察した俺たちは、二人だけの方が話しやすいだろうと距離を取る。


「ロウガか! お前が声をかけてくるなんて、珍しいな!」

「ちょっと聞きてえことがあってな。いつものとこで飲まねえか、一杯奢るぜ」

「そりゃありがたい。”竜の血”でも飲ませてもらおうか」

「おいおい、そりゃ勘弁してくれよ」


 朗らかに笑いながら、ごく自然な流れでギルドを出て移動を始める二人。

 その後を俺たち三人でゆっくりと追いかけていく。

 流石はロウガさん、コミュニケーション能力は本当にずば抜けているなぁ。


「ロウガのこういうところだけは尊敬します」

「ま、なかなかできないよね。……おっ、酒場に入った」

「俺たちも行きますか」


 続いて酒場に入った俺たちは、二人が座ったカウンターから少し離れたテーブル席に陣取った。

 そうしているうちに、さっそくロウガさんとコザックさんの話が始まる。


「それで、聞きてえことって何だよ?」

「あー、依頼で盾を壊しちまってな。修理が終わるまで予備の武器が必要になったんだが、あいにく持ち合わせがなくってな」

「お前、宵越しの金は持たねえもんなぁ」


 呆れるように言いつつも、まったく疑う様子もないコザックさん。

 ロウガさん、意外と嘘が上手いなぁ……。

 俺が少し感心していると、ロウガさんはスッとコザックさんに身を寄せて言う。


「最近、妙に安い剣が出回ってるって聞いたんだよ。何か知らねえか?」

「安い剣?」

「そう、相場の五分の一ぐらいだとか聞いたぜ」


 ロウガさんがそう言った途端、コザックさんの顔が強張った。

 ……これは、何かを知ってそうな雰囲気だな。

 気安い雰囲気が一変し、コザックさんは人目を憚るように周囲を見渡す。

 俺たちはとっさにロウガさんから視線を逸らすと、他人の振りをしてやり過ごした。


「その話、どこで聞いたんだ?」

「職人街だよ。安い剣が出回ってるって」

「そうか。職人たちはだいぶん困ってるみたいだもんな」

「……それで、どこで売ってるか知らねえか?」


 単刀直入に、本題を切り出していくロウガさん。

 たちまちコザックさんは、うーんうーんと困ったように唸り出す。

 そのへの字に曲がった口元は、彼の迷いを表しているかのようだ。


「……教えてやりたいのはやまやまだが、口止めされてるんだよ。悪いな」

「そこを何とか! いろいろ手伝ってやっただろ?」

「ロウガには世話になっているが……。すまない」


 そういうと、コザックさんは銅貨をカウンターに置いて席を立った。

 そしてそのまま、酒場を出て行こうとする。

 ロウガさんはすぐに彼を呼び止めようとするが、コザックさんは止まらなかった。

 申し訳なさそうな顔をしつつも、足早に去って行ってしまう。


「参ったな、こりゃなかなかうまく行かなさそうだ」


 やれやれと両手を上げるロウガさん。

 どうやら、剣の入手経路を探るのは思った以上に手がかかりそうだ。


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