第6話 レアル&ユーリVS巨大戦艦
シェン・ククという男が宣戦布告してきた直後、レアルは凧形の金属の塊と対峙していた。
「ユーリあれはなんだ?俺も結構長く生きてるが見たことないぞ!」
「さぁ?なんでしょう、でも敵って事は間違いなさそうですね」
ユーリは背中に背負った2本の剣を抜き構える。
「今回は大分強そうだな!わくわくしてきたぜ」
レアルは楽しそうに背中から剣と盾を構える。
その瞬間空から獣のような声が響き渡る。
「「「Graaaaaa!」」」
「ハッハッハ!喜べユーリ」
「ええ、コレは頼もしいですね」
「ああ、クローナの応援だ!」
唸り声の正体は白い大きな翼持つ巨大な爬虫類、いわゆるドラゴンと言うものだ。
そのドラゴンが数十体集まり群をなす。
普段単独で生きるドラゴンがここまで集まる事は自然界ではありえない。
そんなドラゴンが集まり空を雪の様に白く染める。
「「「Graaaaaaa!」」」
唸り声の声と共に数十のドラゴンが口から光の柱を凧形の金属の塊に照射する。
だがその光の柱が金属の塊を貫く前に空間が歪み止められる。
「相当頑丈な結界が張って有るんですね」
「ああ、だがユーリわくわくして来ないか、俺はここまで強い奴と会ったのは初めてだ!」
「わくわくはしませんよ、僕は前にいる敵を倒すだけですから」
「ハッハッハ、お前らしいな」
そんな会話をしているうちに金属の塊から出た赤い光が雨の様な弾幕となりドラゴンに穴を開け白い粒子が流れ落ちていく。
「思ったより持ちそうにないですね、もう少し時間が稼げると思ったんですけどね」
「まぁクローナのことだ、まだ策はあるんだろう」
光の雨はドラゴンを蜂の巣にし消し去る。
「おーいいるんでしょ出てきてくださいよ」
「どうしたんだユーリ?」
「あの人のことですどうせこの辺に———」
「オ呼ビデスカ?」
さっきまで何もなかった空間がゲームのバグのように一部の色が変わり色が安定し人の形を取る。
白いローブで顔を隠しスティレットという十字架を伸ばして短剣にした様な物を腰に携えた人でない何かが立っていた。
「お前いたんだな!影が薄くて気付かなかったぞ!」
「影が薄いとかその次元じゃなかったですよ、完全に消えてたじゃないですか」
「ハッハッハ!そうだったか!」
「すみません状況はどんな感じですか?」
「アマリ良イトハ言エマセン、コチラニ影響ヲ及ボス武装ハ確認出来マシタ魔力圧縮砲、魔力結界、光ヲ圧縮スルレーザー今ノトコロハコノミッツデス」
「まだ他にも武装してそうですね、レアルあの結界破れそうですか?」
「あんなもん余裕だ!時間さえ稼いでくればいい!任せろ!」
「了解シマシタ」
その一言を放つと先ほどまで何もなかった人形の魔物の腕に一冊の本が現れる。
本を開き魔物は唱える。
『コールドラゴンライダー』
『レアルサンヲ守リ時間ヲ稼イデ下サイ』
その瞬間魔物の周りに風が吹き荒れ魔法陣が展開される。
その魔法陣から人形の魔物が上に乗ったドラゴンが召喚される。
その数は数百にも登るところでやっと魔法陣が消え召喚が止まる。
数百の魔物がパタンと本を閉じるとともに一斉に飛び上がり空を埋め尽くす。
「コレデ多少ノ時間ハ稼ゲマスヨ」
「でもいいんですかこんなに魔力を使ってしまって」
「アノ人ノ事デス。レアルノ為、ト言ウト何故モット召喚シ無カッタ!ッテ言イマスヨ」
「あの人なら言いそうですね」
そんな会話の傍でレアルは剣を構え静止する。
その剣はまるで蛞蝓が進む速度で根本から黄金に染まっていく。
「3分だけ稼いでくれ!そしたらあんな壁ぶち壊してやる!」
「承知シマシタ」
その一言で飛び上がるドラゴンが口から光の柱を吐きいっせいに攻撃を始める。
だがただ相手もサンドバックにはさらさらない様でレーザーを使った迎撃を始める。
「コレ3分持ちますか?さっきのペースだと1分も持ちませんよ」
「イエ先ホドノ戦闘デ集メタデータデ対策ヲ練リマシタ、見テイテ下サイ」
先程までなら一瞬で蜂の巣にされていたドラゴン達の上に魔法特化の人形魔物が魔力結界を張ることでダメージを防ぎ魔力結界が破られれば他のドラゴンが割って入りその隙に魔力結界を再展開するというサイクルだ。
「耐久戦術ですか。確かにコレなら時間はだいぶ稼げそうですね。」
「アトハ3分待ツダケノ簡単ナ作業デスヨ」
金属の塊が放つレーザーとドラゴンの吐き出す光の柱が嵐の様に吹き荒れまるで有名ミュージシャンのライブの様になっていた。
「ユーリそろそろため終わるぜ、ハネの準備を頼むぜ!」
「了解です」
ユーリは呼吸を整え身体中に魔力を張り巡らせる。
「渾身の行きますよ」
「おう!」
『天使の羽』
体の大きいレアルには不自然なほど白く綺麗な白鳥の様な羽が生える。
その羽をゆっくりと大きく広げる。
その羽を大きくはためかせると砂漠の砂が砂嵐のように舞い地面が半球状に大きな凹みが生まれる。
『シールドブレイク』
レアルは亜音速で光った剣を魔力結界に突き立てる。
突き立てられた魔力結界にヒビが入り粉々に砕け散りレアルから羽が消える。
クローナの魔物がこめかみの部分に人差し指と中指を揃えて当て話す。
「クローナ様、レアル様ノ協力モアリ魔力結界ノ無効化ニ成功シマシタ」
「後はあの馬鹿でかいのを落とすだけですね」
「ああ!さてさっさとやるか!補助魔法をキツめにかけてくれ」
『破壊の加護』
『疾風の加護』
レアルの体に赤いオーラに纏われる。
「こんなもんで良いですか?」
「十分だ!」
彼らは勝ちを確信していた。しかし相手もただ一方的にやられるわけもない様で凧形の金属の塊が腹を開き赤い金属製の細長い昆虫の卵のようなものが投下する。
投下された赤い金属の卵に亀裂が入り二足歩行のロボットに変形する。
「なんだあれは?」
「僕には分かりませんね、ただ不気味ですね、試作型のラッドルカの防衛用ゴーレムみたいですね」
赤いロボットが背中からリレー用のバトンの様な物を構える。
「加護の制限時間はいつもどうり5分です、結構魔力使うんで1回で終わらせて下さいね」
「任せろ!目の前のおもちゃを片付けてから上のデカブツを壊してやる!」
そのバトンから赤い光の円柱が70センチほど伸びる。
「魔力圧縮砲ノ応用デスカ。ラッドルカデハ再現不可能デスネ」
「あの“船”を見た時も思ったんですが、向こうの科学力は凄まじいですね」
「ハッハッハ!科学力なんて俺の力でねじ伏せてやるぜ!」
「今はあなたが脳筋で助かりましたね」
レッドカラーのロボットがゆっくりと近づいてくる。
それに合わせてレアルが剣と盾を構える。
「かかって来なよ、スクラップにしてやるぜ!」
その言葉をトリガーに、レッドカラーは戦闘機のエンジンのような甲高い音と共に、足の裏から青い炎を吐き出して高速移動でレアルに向かってくる。
レアルは盾を構えて身構える。
レッドカラーは高速移動のスピードに加え体重を乗せ魔力圧縮式の赤い刃を振るう。
レアルは刃を盾で受け止める。
だが加速しているレッドカラーを受け止めきれず数メートル押し動かされる。
「ユーリこいつはすごいぜ!とんでもないパワーだ!」
「今は遊んでないで早く決着をつけて下さい、相手が何してくるか分からないんですから」
少し押されたところでレアルは盾を前に弾きレッドカラーを怯ませる。
ガラ空きになった胴体に向かって横なぎを入れる。
普・通・の人間なら右腕が上がった状態から横なぎを防げず真っ二つになっていただろう。
だが相手はロボットそのまま腕を縦に回し横なぎを防ぐ。
そのままロボットの人間離れした関節を駆使する斬撃の雨をレアルは盾で受け止め続ける。
「加護付きの俺をここまで押せるとは、Sランクジョブ程度の性能はあるようだな!だが!SランクとEXランクの違いを見せてやろう!」
レアルは斬撃の雨を受け止めながら精一杯の力で押し飛ばす。
レッドカラーは飛ばされたあと空中で体勢を立て直し着地する。
レッドカラーが着地する瞬間にレアルは消え、砂が舞い上がる。
次の瞬間レッドカラーの前にレアルが現れニヤリと笑う。
『パワースラッシュ』
レアルの魔力のこもって剣撃がレッドカラーを綺麗に真っ二つにする。
「やっとですか、なかなか時間掛かりましたね」
「ああ、10秒もかけないつもりだったんだがな、Sランクぐらいの戦闘力だった、ユーリなら勝てるだろがな!」
「光栄ですね」
「加護はあと何分だ?」
「3分弱ですね……行けますか?」
「任せろ余裕だ!」
すると上空から銀色の金属の卵が雨のように降ってくる。
「おいおい、勘弁してくれよ。この数を相手できるほど俺は魔力を持ってないぜ」
「どうしますか、逃げますか?」
「いや、赤色じゃ無いからいけるだろう」
「なんですか、その理論」
「色に特徴のない魔物やメカは弱いんだ!コレは世界の真理と言っても過言じゃない!」
「そうだと良いんですけどね」
金属の卵はさっきのレッドカラーと同じように人形に変形する。
「ユーリジャンケンで負けた方が様子見をする、乗るか?」
「良いですよ」
「じゃあ行くぞ!」
「良いですよ」
「「ジャンケンケンポン」」
「……僕ですか。死にそうになったらカバーお願いしますよ」
「おう、任せろ!」
ユーリは渋々片手剣を右手に構える。
『疾風の加護』
独り言のように呟く。するとユーリに周りに緑のオーラが現れる。
「死んでも骨は拾って下さいね」
「ハッハッハ!お前が死ぬような相手じゃないぜ!」
「だと良いんですけどね」
銀の体のロボット達がいっせいに背中から少し長い筒を取り出す。
ロボット達がその筒を構えると両端が伸び槍となる。
さらにその槍の刃にあたる部分に紫の電撃が走っていた。
「武装が赤いのより弱そうですね、まぁ手加減はしませんが」
ユーリは地面を蹴り距離を一気に詰める。
スピードに体重を乗せた一閃その斬撃はロボットの首に触れると同時に首をはねロボットは活動を停止する。
「レアル様の予想が当たるなんておどろきですね」
そんな事を呟きながらまるで無双ゲームの様に次々とロボットをスクラップに変える。
「レアル様、ユーリ様、クローナノ応援デス」
レアルの後ろに直径100mを超える大きな魔法陣が展開され、杖を持った人型の魔物や甲冑と剣と盾を持つ魔物、白いドラゴンが合計数千を超える量転送されて来る。
その魔物がいっせいにロボットに向かい攻撃を始める。
その光景はまるで中世の合戦の様だった。
ユーリは一度戦線から離脱しレアルに魔法で連絡をとる。
(イイ場所ガ有リマス、ソコカラ南ニ向カッテ下サイ)
(了解)
(レアル様、聞こえますか?)
(おう、バッチリ聞こえるぞ)
(とりあえずクローナさんが時間を稼いでる間に作戦を立てましょう)
◇
そこは砂漠の真ん中にある石レンガでできた灰色の大きな要塞だった。
レアルは正面にある重い金属製の扉を押し開ける。
中は冷たくくらい大きなドームだった。
そこからユーリが歩いてきた。
「思ったよりも遅かったですね」
「そうか?音速で走ってきたんだが」
「僕がテレポートを連打したからですかね」
「集マリマシタカ。先ニ言ッテオキマスガコノ空間ノ時間ノ進ム速度ハ通常ノ7分ノ1トナッテイマス、タッテ話スノモナンデスネ」
『ライトアップ』
『クリエイトチェア』
今まで暗かった部屋が明るくなり、広い部屋に木造の椅子が2つほど製造される。
「トリアエズ、コレカラノ事デスガ、アレヲコノ要塞ニ封印シマス」
「そんな事出来るんですか?」
「イマ私達ノ軍ガ相手ノメカヲ抑エテイマス、ソレニアノ量ノ軍ナラ全滅ヲスル事モ可能デス、シカシアレを封印スルコトハデキナクナルデショウ、ナノデユーリ様ノ魔法デ数ヲ減ラシテ下サイ、ウィザードノテレポートデ封印シマス」
「そんな事が出来るのか?封印出来たとしてもこんな壁俺なら簡単に破壊出来るぞ!」
「レアル様、自分基準で物事を考えないで下さい、この壁相当な魔力結界が張っていますよ、少なくともラッドルカの技術を超えてますよ、この壁を一人で壊せるのは貴方ぐらいですよ!」
「そんなにか!」
「話がズレましたね……その作戦良いですね2000体までなら
一瞬で消せます、そこまで数を減らせますか?」
「了解シマシタ。デハ作戦ヲ実行シマス20分ホド待ッテ下サイ」
そう言い魔物は腕から光のスクリーンを出しこめかみに指を当て指揮を始める。
「20分何します?外に出れば3分ぐらいですけど外で時間潰しますか?」
「……そうだな、オセロでもするか」
「戦場でここまで遊べるの貴方だけですよ」
そんなんこと言いながらユーリは地面に直径30センチほどの魔法陣をポケットから取り出したチョークで描く。
その魔法陣を描き終わるとユーリは魔法陣に魔力を込める。
すると8✖️8の半透明な正方形が浮き上がる。
その正方形には白と黒の石が二枚ずつ乗っていた。
「ユーリ、お前どれだけ魔法使えるんだ?」
「覚えてないですね、さて僕が先攻もらいますよ……4のf」
どこからともなく光の粒子が集まり黒色のコインの様なものが出現し挟まれた白のコインが消え黒のコインに置き換わる。
「勝たせてもらうぜ!ユーリ」
◇
「ハッハッハ!盤面が一色に染まるというのは綺麗なものだな!」
「そうですね黒・一色、僕の勝ちですけどね」
「オ楽シミ中スミマセン。ソロソロ準備ガ終ワリマシタ」
「行ってこいユーリ」
「分かりました、僕があいつらを消炭にするんであとは頼みましたよ」
「リョウカイシマシタ」
「じゃあ行ってきます」
「おう、行ってこい!」
『ロード』
『テレポート』
◇◇◇
そこにはロボットの残骸と飛び散る魔物の光の粒子に投下され続ける金属の卵、1体1体の能力では圧倒的だが増え続けるロボットに少しずつ魔物の数が減ってきていた。
「ジリ貧ですね、でも供給よりも破壊の方がまだ上回ってますね、まあ時間の問題でしょうが」
『天使の羽』
白く綺麗な羽が生える。
その羽をはためかせふわりと宙に舞う。
「あとは頼みますよ」
翼をはためかせ中に浮いたまま腕をゆっくりと空に向ける。
手の上から大きな炎の球が造られる。
その炎の球は直径50センチ、1メートル、2メートルと大きくなってゆく。
やがてその大きさは直径10メートルを超えたところで静止する。
『メガファイア』
そう唱え腕を振り下ろす。
少し遅れて巨大な炎の球は振り下された腕の方向に移動する。
球が地面に触れる前に瞬間に魔物は光のチリにロボットはドロドロに溶かされる。
その巨大な火球が地面に触れると空気を焦がす様な風が吹き荒れ爆発する。
「お願いします。」
「リョウカイシマシタ」
『『『『『テレポート』』』』』
ウィザードと呼ばれる魔物が数百集まって完成する魔法が金属の船を包む。
全て包み終わるとその船は姿を消す。
「やっと一息つけそうですね」
すると砂を巻き上げ超高速移動する物体が向かってくる。
ユーリは一度警戒するがすぐにそれを止める。
こんな場所でこんなに早く動ける奴は一人しかいない。
「終わったか!ユーリ」
「結構余裕でしたよ」
「ハッハッハ!なら良かった!」
「まぁ、この後の会見とかめんどくさいことになりそうですけどね」
「なんとかなるだろ!ハッハッハ!」
「僕のやることが増えるんですけどね」