第5話 クローナ
シェン・ククと名乗る男が戦線布告をしてから5時間が経過した。
◇◇◇
〜冒険者ギルドにて〜
クレアとサヤカ他にもはじめて見る冒険者らしき人々が長机の後ろに座っていた。
「みんな集まってもらってすまない」
禿げたおじさんという言葉が似合う男性がこの場を仕切る。
「私は現ギルドマスターレアルの代理のフュリオだ、君たちAランク冒険者Sランク冒険者そしてEXランク冒険者君たちほどの実力者に集まってもらったのは知っての通りあのシェン・ククという者から攻撃を受けたことについてだ」
説明とともに白エルフ属の人達から資料が配られる。
「今配られた資料は今回の攻撃による状況を現段階でまとめた物だ。今回の被害で軍港は大きな被害を受けた。魔力結界搭載型戦艦は大多数が轟沈かろうじて残ったものも大破、使い物になりそうな艦は一切なかった。さらに魔力結界大きさによりを積めなかった巡洋艦以下の船は蒸発して消えてなくなった。」
ざわざわと当たりが騒がしくなる
「ねぇサヤカ魔力結界搭載型戦艦が轟沈ってそんなにヤバイの?」
「基本的にこの世界最強と言ってもいい防御力を誇る世界最先端かつ世界最強の戦艦だよー、君の世界のものだとに言うと核シェルターの2倍の強度はあるよー」
核それは99000キロトンという量の火薬に匹敵する爆発力を持った人類最強の矛である。
その矛を防げる人類最強の盾それが核シェルターだ。
その2倍の強度と言うものはおそらくどんな物理攻撃でも耐えるだろう。
だがそんな強度のものを破壊したとなれば威力の凄さが伝わる。
「一度落ち着いてくれ、今回集まってもらったのは皆を不安にさせるためではない。この物体に対しての有効打を考えて頂きたく集まってもらった。ここに居るのは人間離れした冒険者の中でもさらにトップ層の君たちだ。何か打開策を考えてもらいたい。」
そんな中金髪ロングでメガネの背の高いお姉様と言う言葉が似合う女性が出てきた。
「少しいいですか?」
ひんやりとした冷たい声が会議室に響く。
「この資料ですが、私ならもっと質の高い正確な情報を持っています」
フュリオがその話に食いつく。
「それは本当か!」
「ええ、ほんとうですとも」
「ならばその情報を提供してはくれないか?」
ニヤリとクローナは笑う。
「ええ構いませんよ……いくらまでなら出せますかねぇ?」
フュリオは驚き問いかける。
「この緊急事態に金か!」
「えぇ、緊急事態だからですよ、この国はいつ滅んでもおかしくない状況にあります!だから!こそ国を出ても生活していくだけの金が要るんですよ!」
「しかし国が滅べば君も死ぬだろうが!」
「私は死ぬことはありませんねぇ、これでもEXジョブなんですよ、で?どうなんです?金は出せるんですか?出せないんですか?」
「ラッドルカ金貨10万枚でどうだ?」
「国が滅ぶって騒いでる中国の金が役に立ちますか?少し考えれば分かるんじゃないですかねぇ?えぇ?金貨よりも同額の量の金を渡せ、金貨なんて国ありきのものなんですよ!」
「わかったいいだろう……用意させよう」
「契約は成立というわけですね?」
おもむろにクローナは本を開く、すると風が吹き荒れる。
『我と契約を結べ』
と言った。意味は理解できるが日本語とも英語とも取れない謎の言語だった。しかし何故か意味がわかる不思議な言葉だ。
「ええ終わりましたよ、契約を破れば頭が吹っ飛んで死にます。まぁ私も情報を伝えなければ死にますがねぇ」
「貴様!何をしたか分かっているのか!」
フィユリオの怒号が響き渡る。
「私を殺そうとしてもらっても構いません。が私ならここにいる人たち全員を相手しても逃げ切れますよ。大体しっかりと契約を守ってもらえれば良いんじゃないですかねぇ?それとも最初から守る気がなかったのですか?」
「……いや……そんな事は……」
「おやおやはっきり説明出来ないとは怪しぃですねぇ?ええ?そこのところどうなんですかぁ?……まぁあなたを虐めても仕方ないですねぇ、情報でも提供しますかねぇ」
そんな事はを言いながら懐からガラス細工のビンのようなものを机に立てる。
「ねぇサヤカ今からいっぱい質問してもいい?」
「いーよー、どうせ断ってもきくでしょー」
「まぁそうなんだけどさ、まずあの人誰?」
「あの人はねクローナさんって言うんだよー、EXジョブでね能力はあの本から魔物を召喚して戦う【魔将軍】って言うジョブについてるめっちゃ強い人だよー」
「あれがEXジョブか……みんなあんな感じで怖い人なの?」
「うーん僕もあんまりEXジョブと話す機会がないから分からないけど……レアルさんは優しいかなー」
「そうなんだ、もう一つ質問なんだけど、あの机の上に置いたガラスの塊って何?」
「うーん簡単に言うと魔法版プロジェクターかな……ほら始まるみたいだよ」
ガラス瓶の底に当たる部品をクローナがグリグリと回しピントを合わせる。
するとガラス瓶の上側から光が放出されスクリーンんのようになる。
「今わかってる情報ですが、攻めてきてるのはこの国のどこでもありませねぇ、とりあえずコレを見てください」
空中に出来た光のスクリーンにたこ型の空飛ぶ金属の塊ができる。
「コレがリューデリアを吹き飛ばした正体です。この金属の塊は飛行能力と大型魔力結界さらには魔力圧縮式の重砲、光を圧縮したレーザーと思われる対空砲、他にも兵器は搭載されてると予測できる。私わこの星にはここまでの兵器を作り出すことは不可能だと考えます。ここで出される結論は一つです。攻めてきている軍勢は本当にこの星ノ生物ではないといえるでしょう。えぇ」
この言葉を聞いて周りがざわめき始める。
「さらに魔力結界の強度は我々が保持するものと比べ圧倒的な強度を誇っている。次にコレを見ていただきたい」
スクリーンの映像が切り替わり青い空とひし形の金属の塊白いドラゴンが数十体映し出される。
「こいつらはコスト重視で私が作った物ですが、火力は並の魔力結界なら貫きAクラスジョブの魔法ですら傷つかない鱗を持っています。ですが–––––––––」
スクリーンに映し出されたドラゴンがひし形の金属の塊を打ち下ろすように一斉に口から太い光の線が放出される。
しかしその光がひし形の金属の塊に当たる前に陽炎のように空間が歪み防水加工した板に水をかけたように弾かれる。
そしてたこ型の金属の塊がきらりと光ると次々にドラゴンが次々と地面に向かって落ちていき光のチリとなる。
そしてスクリーンが砂嵐に飲まれる。
「コレが現状です。超高火力の魔力圧縮砲でも結構に破壊が出来るところか怪しい強度ですねぇ」
「どうにかならんのかね?」
「フィーレメント金貨10万枚の働きはしますよ。という訳で魔力結界を破りました。」
朝のおはようツイートのような軽い一言により空気が固まる。
「ど……どういう事だ?」
「そのままの意味です。先程ですが我らがイケメンかつ最強のレアル様と共同戦線を築かせて頂き破壊に成功しました。」
「それは本当か!」
「ここで嘘をついてなんのメリットがあるんですかねぇ?」
「良くやってくれた」
「勝ったわけじゃないんですがねぇ……おっとコレは少しめんどくさいことになりましたねぇ、少々骨が折れそうですねぇ」
そんな独り言を呟き本を開く。
「すみません今から魔力切れで倒れるんで運んで貰えますか?」
『コールジェネラル』
『コールバタリオン』
『コールドラゴン』
『コールウィザード』
『クリエイトフォートレス』
『今召喚した者たちに告ぐ、愛する人を守って下さいお願いしますよ?』
微笑みそう唱えてクローナは倒れた。
byエンペラー