第4話 戦線布告
「なにが起こったんだ……。」
いち早く南方での異常に関する情報をつかんだのは、ラッドルカ国王都支部だった。
ここには、各支部とつながる魔導通信装置があった。通常は通信会議を行うために使われるが、緊急時には各支部の魔導装置に介入し、防犯カメラや集まった情報なども見ることができるという優れものだ。また、魔力の流れの異常を検知して緊急アラームが鳴ることや、各支部からの緊急要請を得ることで、各支部の異常を即座に把握することができる。
……のはずなのだが。
今回の異常ではアラームが鳴らなかったのだ。
王都にいてもわかるほどのあの以上の中で、アラームもならない、どこからの緊急要請も来ない、これは誰が見てもわかるほど、明らかにおかしかった。
王都支部のスタッフ達は、急いでリューデリア軍港支部のメイン魔導装置にアクセスした。
リューデリア軍港支部の魔導装置は、軍港の近くという事もあり、他とは比べ物にならない防御装置が張られている。そこにアクセスした選択は正しかった。ほかの都市支部の魔導装置はほとんど壊滅していたからだ。
「つながりました!!」
ほとんどの防犯カメラにつながらない中で唯一生き残っていた防犯カメラへのアクセスに成功したスタッフが声を上げる。
王都支部内のスタッフたちの目が、リューデリア軍港の様子を写した防犯カメラ映像に集まった。
そして……絶句した。
そこには、数秒間続いた爆発的な光の後、がれきの山と化した軍港支部の様子が映っていた。
先ほどまでそこにいた冒険者たちの姿は、どこにもなかった。
あの時の光の柱とそのあとに突如として襲ってきた衝撃波、通称「ラッドルカ謎の大災害」。
南方にラッドルカ国が所有していた植民地のほとんどが瓦礫と化し、大陸最高峰の山々が連なっていたバウアー山脈も姿を消し、そして植民地からの連絡が一切途絶えたという極めて謎の多い事態に、ラッドルカ国のみならず、世界中の国が震撼した。
大災害による影響はラッドルカの植民地とその周辺諸国だけにとどまったものの、その後のラッドルカ国は大きな混乱に陥った。あそこには軍港があり、ちょうどこの時期に行われている世界海軍記念式典に参加する軍艦が多く停泊していた。そのすべてと連絡がつかなくなっていたのだ。
ラッドルカ国はすぐに、本土に残っていた旧型の戦艦を集めて向かわせたものの、何分進行速度が遅く、着くまでにあと数日はかかる予定だ。
周辺諸国も少なからず被害をうけ、また、ラッドルカ領植民地の国境が瓦礫の山となっていたために、周辺諸国への状況確認の要請もできなかった。
今回の記念式典はラッドルカ国が主催していたため、貴重な艦船を失った参加国たちはラッドルカ国に状況報告と責任追及を要求し、状況を確認できないラッドルカ国は非難の集中砲火を浴びた。
2日後。
ラッドルカ国元老院にて。
「……以上が、唯一残っていた防犯カメラ映像から得られた情報です」
「…………。」
誰も口を開かない。
誰も信じたくはないのだ。あの一瞬で数十万人の命が亡くなったことを。
静寂を破って、それは大災害と同じく突然起こった。
ブゥゥゥウウウウン。
音が振動となって、世界を揺るがした。
世界中の人々の目が、音の発生源、すなわち全天の頂点に現れた真っ黒なモニターに注がれた。数秒ほど待って、モニターに白い軍服を着た男が映った。
『この星のみなさん、まずは初めまして。私の名はシェン・クク。
私たちは、君たちが「太陽系」と呼ぶこの地帯から遠く離れた銀河系よりはるばるやって
きた『リバエル星第八宇宙航空隊』である!!私たちの任務はこの星を確保することであ
る!!これは宣戦布告と受け取ってもらって構わない!それではこの辺で失礼する。』
地球に住む全員の口がポッカリ開いていた。
byサティロス2