第1話 サヤカとの出会い
◇◇◇
視界には水色の縞パンが広がっていた
「ねぇねぇ、そろそろ僕の上から退いてくれないかな……恥ずかしいんだけど……」
可愛らしい女の子の声が聞こえる……いや待て、この状況かなりマズくないか!誰か知らない女の子の下に俺がいるって下手すりゃ犯罪じゃねーか!……いやでも待てよ、この状況はいわゆるラッキースケベ的なやつなのではないか、なら仕方がないだってただのラッキーですもの、普段の行いが良いおかげで神様がささやかなプレゼントをくれた、そう考えると納得がいく、つまりこの時間をもっと楽しまなければいけないそうだろう!
「あと5分!」
「どうしてそーなるのかな?」
「あと5分だけで良いんです、あと5分でこの香りを覚えるんで!」
「それはやめて欲しいかな、流石の僕でも引くよ」
おや?待てよ……
「お前誰だよ!」
そう言って青年は跳ね起きた。
「僕かい?、僕の名前はサヤカ、君をこの世界に連れてきた可愛いフライパンさ!」
「ちょっっっっとまて、今困ってるからまず何処から突っ込めば良いの??」
「ん?何か僕の自己紹介におかしな所でもあったかな?」
「サヤカさんだっけ?」
「そうだよ僕はサヤカ、サヤカって呼んで!」
「じゃあサヤカ、フライパンって何?」
「知らないフライパン料理するやつだよ!」
「違う違うそうじゃない、可愛いフライパンっていう自己紹介についてなんだけど……」
「あーそういうこと!僕はフライパンだよ」
「は?」
ダメだ会話が成り立たない、僕はフライパンだよ!って頭おかしいじゃん
「あー僕を頭おかしいじゃんとかそんなこと思ってるでしょ?」
「えっ……ナンノコトデスカ」
「あー目をそらした!嘘つきだー」
やばい見抜かれた。
「しょうがないなぁ、百聞は一見にしかずーって言うしね」
そう言うとサヤカと名乗る少女はおもむろに俺の手を握ってきた。
「ふぇ!?」
「驚き過ぎだよ〜、あと僕を落とさないでよー」
にこやかに笑うと少女は白い光につつまれる。
「ナニコレ」
俺は黒くずっしりとしたフライパンを握っていた。
「えぇぇぇえええええ」
「どうびっくりした?」
そう言ってフライパンは少女に戻る。
「これで僕がフライパンだってこと信じてくれたかな?」
怖い、何この娘、本当に怖い、フライパンって何フライパンってしかも持ったかんじ結構いいフライパンだったし、なんなのマジで
「やばいわ、マジなやつじゃん」
「僕は最初から言ってたよ、フライパンだよーって」
「………………」
「あれれ?どうしちゃったのかな?僕が可愛くって見とれちゃった?」
「………………」
「何か反応がないと僕も困るんだけど……」
「……アレ……そいういやここどこ?」
「今更かい?そうだねーなんて言えば良いんだろ、簡単に言えば異世界かなー?」
「ごめん意味わかんないんだけど……」
「あれれ?さっきもこの展開見た気がするぞーまぁ周りでも見渡して見たらいいんじゃないかなぁ?」
周りを見渡せって言われても別にそこまでのものはない、今いるところが街の広場みたいなところだ、たしかに日本じゃない事は町並みからしてわかる石畳やカラフルな木造建築、そして赤い屋根
「いや確かに日本じゃないけど、多分ドイツとかの可能性があるじゃん」
「うーんそうだなぁ、分かりやすいのでいうとよく人を見てみると分かりやすいんじゃないかな?」
人、別に特に変わった人は……、アレ?なんだこれコスプレか?猫耳が生えてるんですが……
「わかったー?せーかいは人じゃないのがいる!でしたー」
「でしたーじゃねーよ、やばいどうすんだよコレ!本当にここどこだよ!」
「うーん正確に言うとここはラッドルカ国、この世界最強の工業国さ!」
「へーソーダッタノカー、うん、ではサヤカさんに質問!なぜこんなことになってるのでしょーか?」
「もしかして君僕との出会いを忘れちゃったの?」
こいつとの出会い?……えーとここにくる前って何してたっけ
◇◇◇
ブー
涼しい秋頃に昔ながらのアパートに古いチャイムが鳴り響く
「おっきたきた」
そう俺はこの時”あるもの”をとても楽しみにしていた。
ドアが壊れそうな勢いでドアを開け配達員のところに向かう。
「印鑑お願いします。」
その言葉を聞きつけ音速で印鑑を取りに戻り帰ってくるこの間わずか5秒
「ありがとうございましたー」
その言葉を聞く前に部屋に戻り素手で段ボールをこじ開ける。
そこには黒光した綺麗なフライパンがあった。
このフライパンこそが大手フライパンメーカーのオーダーメイド、『サヤカ』俺専用のフライパンだ。
このフライパンは異世界の料理を可能とするべく作られたものらしい。
「これで、俺の持つ最高の技術を使い料理を作る!」
一人しかいない部屋の中で堂々と宣言した時だった。
「あれ……視界が……だん……だん……暗く……」
◇◇◇
「どうどう?思い出したかな?」
「え……俺死んだの?」
「どうしてそうなるんだよ!、いいかい君はこの世界に呼ばれたんだよ」
「いや意味わかんないんですけど……」
「書いてあったでしょ?異世界の料理を可能とするって」
「はぁぁあああ?」
確かにそんな事は開発段階の会議で言ってた気がする、なぜ俺はそんな時にうたた寝してたんだ、ていうか異世界の料理を可能とするって比喩だと思うじゃんなんでそれをマジでやるのかなぁ
「理解してくれたかな?」
「これ帰れるの?」
「うーん多分無理だね」
「バカじゃん、このフライパン作ったやつ絶対ぶっ飛ばすからな、覚悟しろよ、マジで」
「元の世界に戻れないから無理だと思うよ」
「クッソ覚えてろよー」
「まぁそんな時もあるさ!ポジティブに行こう」
「マジでそれやめたほうがいいぞ、俺はその発言で親友を失った」
「何したのさ?」
「話せば長くなるんだがな……あれ?」
「ん?どうしたの思い出して悲しくなっちゃった?」
「俺たちって今日どこ泊まればいいんだよ」
「うーん野宿?」
「野宿?じゃねーよ嫌だよ何とかならないのかよ」
「そうだねー……あっそうだ!今からギルドに行こう!」
「あのーすみません……ギルドって……なんですか?」
「えーそんなも知らないのー常識だよー」
「いや俺日本人だから、ギルドなんて多分コブラの海賊ギルドぐらいしか知らねーよ」
「コブラなんて渋いねぇ、まぁギルドについてこのサヤカちゃんが教えて差し上げよー」
「ありがてぇありがてぇ」
「まずね、ギルドっていうのは簡単に言うとハローワークみたいな感じだねー」
「っていうとお仕事がもらえんの?」
「まぁそうだねー日雇いのクエストと身分証明書の代わりになるギルドカードがもらえるんだよー」
「へーソーダッタノカー」
「まぁ行ってみればわかるよ」
「ところでさぁ、道わかるの?」
「僕を誰だと思ってるんだい?この世界に呼んだ本人だよー流石にわかるよー」
「まぁそうだよなこれで分からんなんて言い出したら炒めて炒飯の具材にしてたわ」
「うーん下調べしててよかったよー、そーいやさぁ」
「なに?」
「君の名前聞いてなかったね、君に名前は?」
「俺か?俺は林道K司」
「ねぇKってなに?」
「ミドルネーム」
「なにそれーねぇなんていうの?」
「……クリア」
「じゃあクリアくんだね、ギルドに行こ!クリア」
「うっせぇその呼び方やめろ、マジで!はずかしいから」
「何でよクリア、何でダメなのクリアどうしてダメなのクリア」
「うんわかったもうわかった早くギルドに連れってマジで」
「なにキレてるのさクリアまぁそんな事はどうでもいいよねクリアじゃあはぐれないようについてきてねクリア」
「うっせぇ、あっちょっと待て先行くな」
◇◇◇
ギルド前にて—
「えー……思ってたのと違う」
そこに建っていたのはギルドというより大手企業の大型ビル、と言った感じだ。
「そう?ギルドって現実的に考えるとこんな感じじゃ無いかなー」
「中になに詰めたらそうなるんだよ!」
「あんまり覚えてないけど、国の移動ができる魔法転送装置とか、食堂とか宿泊施設とかクエストを受けるとことかあとは素材を売ったり武具を買ったりできるとことかあーとーえー……研究施設とかもあったはず」
「すげーめっちゃ施設詰まってんじゃん」
「まぁ国が管理してる大型施設だからね」
「このデカイの国が管理してるの!」
「まぁ儲かるからねぇ」
「こんなんで儲かるんだへー」
そんな雑談をしながらガラスの自動ドアを抜る
そこには外から受けた印象通り最新の技術が使われていますと言わんばかりのモニターやホログラムの数々が並んでいた。
「やっほーみんな元気ー?」
そんな事を言いながらサヤカはギルドに突撃する。
するとその声を聞きつけたチンピラのような男がこっちを振り返る。
「ヤベェってなんか目付けられたぞ」
「だいじょーぶだいじょーぶ」
「おうサヤカじゃねーかひさしぶりだなぁ、そっちの連れは彼氏かい?」
「そんなんじゃないよー、うーんパートナーかな?」
「へぇ羨ましいなかんなかぁいいこと娘とパーティーが組めるんだからな、ガハハハハハ」
そう男が大きな声で笑い飛ばした。
……え?こいつ何もんだよこんな大男と友達とかマジで何もんだよ。
「ほらほらクリア、いこ!」
「いやあいつ何もんだよいかにもヤベェって感じのやつだったよ!」
「あーあれ、元山賊のゴイズさん」
「いやヤベェ人じゃん、絶対ヤベェ」
「多分大丈夫だよー友達だからね!」
「実際で初めて見たヤベェ友達持ってる奴」
「まぁそーんな事どーでもいーんだよ、早くジョブ決めいこ!」
「うーん、当たり前のことのように言ってるけどソレなに?」
「まぁ簡単に言うとねー軍隊って入りでしょ?」
「いるね」
「その軍隊の兵種みたいなもんだねー」
兵種っていうと得意分野とか技能とかで分けるやつか
「でもそんなのどうやってきめるの?」
「まぁついて来たら分かるよ」
いやついて来たらわかるって……てもう行ってるし!
◇◇◇
クリアたちは自販機を全てタッチパネルにしたような大きなスマホのようなものがたくさん置いてある階に来ていた。
「ねえ、何ここ?」
「ここは2階だねさっきの上の階だよ」
「知ってるよ!さっきから後ろについて来てたからね、そういうことじゃねーよ、あー質問を変えるわ、ここはどんなフロアですか?」
「あーそゆこっと、ここはジョブの診断と訓練の予約闘技場のエントリーができるフロアだよー」
闘技場なんかもあるんだ。
「へーすげーそんなことも出来るんだ、すげーな」
「さーて紹介も終わったし早速ジョブの診断しよーよ」
そう言ってサヤカは大きなスマホのような機械の前のたった。
「これの使い方を教えるねコレに触るとね」
「ジョブ診断ヲ開始シマス」
機械音と共に画面が青く光ってサヤカのステータスが表示される。
「こうやって診断出来るんだよ!」
「診断ケッカジョブ【パラディン】ランクA登録済ミデス」
「なにそれかっけー、ってかパラディンってなに?」
「それは僕のジョブだねー味方を高い防御力で守るんだよー」
「じゃあランクってなに?」
「同じジョブでも強さとか、実力とか、が違うでしょー、それを分かりやすく11段階で上から順にS、A、B、C、D、E、F、G、H、I、Jこの順に表してるよーちなみにこの世界の先進国は大体このシステム使ってるから、外国でも通用するよー」
「めっちゃ便利じゃん!どんなハイテク技術だよ!」
「まあやってみてよーどうせランクじゃ僕に勝てないんだけどねー」
「よし決めた絶対勝つから!」
「無理だよー歴代最高で今はギルドマスターのレアルさんですら最初はAだったんだからねー」
「誰だよレアルさん」
「レアルさんはねーレアルさんだよー」
「どんな人だよ!」
「うーんめっちゃ強い剣士って感じかなー確かランクもすっごい高かったはずだよー」
「へぇーそんな人もいるんだ、そういやAランクってどのくらいなの?」
「僕が9年ぐらい修行してやっとって感じだねー」
「お前いくつだよ?」
「レディに歳を聞くのはちょっとねぇ……15だよー」
「そこしっかり教えてくれるんだ……えっお前俺より年下かよ!」
「びっくりしたー?」
「タメぐらいだと思ってた」
「それって老けてるってことー?」
「ちげーよ、てか早くじょぶ……?の診断やろーぜ」
「うーん話流したねー」
「コレに手を触れればいいのか?」
「うん!そーだよそしたらジョブの解析とギルドカードがもらえるんだよー」
「了解じゃあいくぞ」
そう言って俺は自販機に大きなタッチパネルをつけたような機械に手を置いた。
「ジョブ解析ヲ開始シマス」
電子音が流れ画面が青色に変わって数字が羅列されて行く。
「ジョブ開始完了シマシタ……ジョブ【シェフ】ランクEX」
「えっ……ランクEX……」
「ねえサヤカこれってすごいの?」
「やばい、やばいやばいやばいコレはやばいよ、ランクEXって」
するとその声を聞いた周りの冒険者たちもワラワラと集まって来た。
「ランクEXが出たらしいぜ」
「コレで八人目ね、私もレアルさん以外で初めてみた」
「すみませーんしゃしんとってもいいですか?」
え……?俺はたからくじでもあてたんか?