法の枷
[1F冒険者ギルド受付]
11:30
「人を殺してみたい」
「はっい?」
笑顔が一瞬で引きつる冒険者ギルド受付嬢筆頭(勝手に命名)エリーさん
「あ、いやそうじゃなくて人をk・・・」
「人を・・・あやm・・・」
昨日決めた最優先目標のひとつをどう言葉に表現すべきかぱっと出てこない
「うーんと、人を殺す経験をして・・・」
エリーさんが青くなってるが・・・話を聞いてくれてるので最後まで伝える
「人を手に掛けなければならなくなった場合、迷いがあっては生死に関わる」
「俺一人ならいいんですが、仲間がいた場合取り返しがつかないとおもいまして」
これはパット思いついた程度の事かもしれない、殺人後どういう感情になるのか
好奇心が沸く人もいるのではないか、映画でみた血を必死に洗い流すような状況
人の人生を絶った事を重く受け止め、鬱になるなど
「それと、剣での戦いで怪我や痛みに対して限界を見極めたい」
言ってる事はわかるが何を言ってるのかわからない
エリーさんはそういう顔をしている
「あ、なるほど、わかりましたでは・・・えーと」
「モンスターではなく人ですよね?」
「・・・ええ、モンスターは即殺れるとおもいますので、今は問題にしてません」
なぜか頭を抱えるエリーさん選択を間違えてはいないはずだが
この会話の後エリーさんの雰囲気が変わった気がする
「承りました、こういった場合人員確保が必要と思われるので」
「この件も明日まで掛かると思いますがよろしいでしょうか?」
「ええ、お手数掛けて申し訳ないお任せします」
「それでは明日、各確認作業後にこちらにおこしください」
やる事はおわったようで冒険者ギルドを出て考える
さて暇になった、適当に地理を覚える為にぷらぷらするべきか?
武器防具の下見もひつようだよなぁ
受付嬢達の会話
「勇者様けっこうかっこよかったねー」
「はは、そうね普通の職にはないオーラがあったわね」
「デートに誘っちゃおうか?」
「やめときなさい!!」
「エリーさん?」
「勇者という存在はなんなのか、短時間の対応だったけども、思い知らされたわ」
「神の考えはわからない、それと同一とみてもいい」
「経験の為と魔法を正面からうけて死にかける」
「死に掛けたのに平然としてる様は、常軌を逸していたわよ」
「生死をわける迷いがあってはいけないと、人を殺す経験をつみたいという」
「モンスターではないんですねと確認したのだけどね」
「問題にしてないと返された」
「最終確認程度の事なんでしょう、人を手にかける」
「目の前にいるのはそういう道を歩む存在なのだと、理解したわ」
「思い出しただけで、冷や汗がでてくる」
エリーの話は鬼気迫るものがある
「なにげない雑談をする、助言をするのもいい、大抵の事を許してくれるかもしれない」
「だけどそれはダメ絶対に、そこに信念も真剣さもない」
「賭けというのはね、ある程度勝てる見込みがあるから面白いし行えるの」
「けどこれは賭けじゃない賭けにならない
賭けを吹っ掛けたと思った、その瞬間から首には剣が突きつけられてる」
「1/2で勝てるとかそういう話じゃない」
「ハッタリも、イカサマない、水を飲んだだけ、息をしただけ
それだけで人生が終わるそういった、不条理でしかないと思える物よ」
「わかってないのは逆上せた馬鹿だけ」
「勝てたとして得られるのは、きっと死ななかったという安心だけ」
「賭けを吹っ掛けたのはこちらでも、終わらせられるのはあちらよ」
「掛金はあなたの命、あっちの掛金はなにもないのよ、掛金だと思ってたものはマボロシ」
「勇者という使命の為になるのか、そういう思考をされたら終わり」
「いえ、そういう思考しかないと断言できる行動」
「相手の思考は私達とは違う、異性であり、別の世界の常識を持つ」
「神の使途である勇者」
「そして考えなさい馬鹿なごろつきが平民を斬るのではないのよ」
「勇者足る者が邪魔だと判断して斬るの、それは恐ろしい事よ」
「誰もあなた達を弁護しないでしょう」
「賢者様やアークビショップ様が簡単に動くわけを理解なさい」
「問題はこのギルドに関わる者全員で償う必要があるでしょうね」
「そのときは跡形もないでしょう、あの人形的のように」
「改める事ね、相手は勇者という選ばれた存在なんだと」
「自分達とは違う次元を歩む者だと」
今では青ざめる者達を置いて、気合を入れなおすエリーであった
とかいう話があったとかなかったとか
[宿 マンダム自室]
15:00
それは暇ができ、なんとなしに投げかけた賢者への問いから始まった
賢者は暇なんだろうと思う勇者
「誤解って怖いな、なぜ斬る前提なのかコレガワカラナイ」
「誤解でもないような気がするがのう」
「あんまり盗み聞きはよくないのでは?」
「誤解ならといたほうがよいじゃろ?」
「・・・・」
「おぬし迷いなんてほとんどないじゃろ」
「・・・うーん、あ、ある?」
「ないと言うことじゃろう」
「恋愛に興味は?」
「ないですね、あっちにいたときから」
「なにかを極めるなら、他の事は捨てるしかないってのが歴史的にわかってます」
「剣の道に生きた方で無駄と断じた人もいます」
「がむしゃらにひとつの事に打ち込むってのはまったく苦にならなかった」
「矛盾してますが、苦行ですら楽しかったのかもと思えてしまう」
[二人の格闘家]
「まったく同じ能力の者が、武道をやったとして片方は片手間に片方は修羅のごとく」
「どちらが強いかなんて結果を見ないでもわかるでしょう」
「有名な話で二人の格闘家がいまして、一人は格闘一筋、一人は家族持ち」
「二人は何度か闘うんですが、後年格闘一筋の人には負け越しです」
「家族持ちの方は、それが力になるような状況でもないですが」
「劣ってるんです、家族が危機とかそういう状況じゃなきゃ力がでない」
「話にならない、格闘一筋なら普通に出せた力ではと」
「ふむ」
「結局のう、そういう人間には至れぬ道があるのよ」
「なにかに縋った時点でそれは足を止めたのと変わらぬ」
「そういう考えもあるからのう」
「仙人どもならなにかわかるかもしれぬが」
「そういえば仙人って存在が体言してましたねこっちでは」
「答えがでちゃってるのかなぁ・・・」
「愛の力は御伽噺の中だけですね」
「我々賢者も似たようなものかのう、他にかまけててはこうしてはいまい」
「夢ないっすね魔法あるのに」
「HAHAHA、そんなもんじゃ」
「とはいえ似たような物で守る力は否定できませんね、自分が倒れたらあの人達が仲間がって」
「うむ、それは理解できる事じゃのう」
「そこにあるのは責任感、義務感、正義の心、色々あります
人はなんだかんだ、他人からしたらどうでもいい理由で命を張れる事も知っている」
「やっぱり経験ありますか?」
「今思えばじゃがのう」
「恋愛が悪いとはいいませんが、結局必要かどうかで言えば必要ないんでしょうね」
「こっちでしかできない事はあっても、恋愛なんてあっちでもできますし」
「すまぬのう・・・わしらはそなたから、何か奪ったのかもしれぬ」
「まったく気にしてないので、というかお礼を言いたいくらいなんですが」
「与えられたと感じる事の方が多いと思います」
「危険ですかね?」
「危険じゃな、だがわかっておるなら問題あるまい」
「いやどうじゃろ今の発言は保留じゃな」
[極めるとは]
「極めるといっておったが、それが前提とはちと高い志じゃのう」
「極めるとはなにか、俺程度じゃまだまだ語れないでしょうが」
「武に関して言えるのは・・・」
「自分には心の師というものがいまして、その人が目指すのは決して終わらない
決して到達しない目標なんです」
「まわりは到達したと思うかもしれないが、本人は決してそう思わない」
「極めたといえるそんな所に到達した瞬間
新たな道が見えてしまう、そういう人なんだと思います」
「今思うとあの人の生き方や、考えは
限界なんてない、終わりなんてない・・・・ただひたすら歩むのみ
そう言ってる気がします」
「ふむ、わからなくもないのう、なにせ極めたから賢者になるのに
学ぶ事はふえる一方じゃわい」
笑いあう勇者と賢者
「師匠から学んだといえば・・・」
「楽しむ為に鍛えていたはずなんです」
「勝ち負けではなく別の方向に持っていこうと
なにかを成し遂げた時、仲間と分かち合えるそう思ってたが違いました」
「気が付いたら隣には誰もいない」
「難儀な話じゃのう」
「別の場所で別の仲間達を求める事もできなかった・・・」
「結局力ない自分のせいですね・・・はは」
「勇者リュウよ!!」
「はい?」
「そなたは勇者じゃ、そしてその話からするにいずれ
誰も到達できぬ場所に立つ事になろう、だが絶望しないでほしい」
「そして我々をゆるしてほしい」
「勝手な話じゃがのう、それまでは絶対じゃ、そこに至るまでは共に歩めるはずじゃ」
「最後までは来てくれないんですか?」
「老人に無理をいいおる、お主が選んだ仲間なら来てくれるかも知れぬぞ?」
「すいません少し意地悪でした、絶望なんてしませんよ
あちらでも結局師匠のおかげか歩みは止まらなかったですし」
「こちらはこちらで、どうやら到達してる人が結構いるようですし」
「結果一人になってもそれは幸せな事であって、絶望する事じゃない
あっちとは全然ちがいますからね」
「ならよいか、楽しむのじゃな」
「押忍!!」
「農家は農業を出来ない人の為、王は王ではない人の為、その役を担ってる」
「なら俺は力ある者として力なき者の為」
「ふむ、年齢に沿わない考えじゃのう」
「あっちの世界で見たり聞いたりした先人の教えと、勇者に選ばれた事のせいですかね」
「なるほどのう、教育がしっかりしてるという事かのう」
「じゃが、その考えじゃと、役をこなしてない者は斬るのかのう」
「うーん、それは保留って事でおねがいします」
「賢者ザレス、お聞きしたい俺は勇者足りえますか」
「わからん、写本よんだじゃろう」
「それは結論と受けても?」
「結論というには、付き合いが短い気もするが代々そうじゃからのう」
「悪の勇者っているんですか?」
「おったのう、行く末の結果悪になった例が」
「対抗できたという事ですね」
「抗えぬほど強大ともいえぬし、悪に走った者が強大にもならぬしな」
「ああ、なるほど」
「悪に走った場合勇者としての力は発揮できない」
「まあ、そういう事じゃのう少なくとも自然は味方せんじゃろうな」
「勇者ってのはその時代に一人しかあらわれないので?」
「いや、そういうこともないがまれじゃな」
「写本から考えるに神以外の存在がある?」
「なにもいえないのう、情報がないからな」
「祝福とはなんなのか」
「わからんのう、そう言われてるだけとも実際あるとも」
「じっちゃんって呼んでもいいですか?」
「急じゃのうびっくりしたわい」
「すきにせい」
「よっしゃーーーーー」
「ただの子供のような顔をしよる」
なんの為に命を賭けるか、なんの為に戦うのか
もちろん力なき者が助けを求めるなら力を貸そう
だが、戦いが始まればそれはもう別の話だ、救いの手を出す理由と
戦う理由は別、俺の心はこの世界に召喚された時点で決まってる
それは決して揺るがない
俺は俺の為に戦い、楽しみ、あの人に追いつく為に立ち続ける
師匠=心の師です勝手におもってるだけです
鍛えるって話は野球の練習の事です、事細かにスポーツや野球を説明するより
わかりやすいだろうと判断し語っています
受付達の雑談書き出しがおもいつかず、よくあるものにしてますが思いついたら修正します
ざ・ご都合主義、最初は適当な尺稼ぎにしたんですが
その後の賢者との問答に繋げ易くなっていったんでこうしました