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マスターガイスト  作者: 諏訪未来
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第7話 VR討論会


「ヴァーチャルリアリティ、『ガイストの真実の世界』へようこそ~。ここではあなたの悩みをこの部屋のマスター、ガイストがきっちり、きっぱり、さっぱり解決してくれまーす。参加している他のみんなとも交流できるから楽しんでいってね。」


「今日は月に一度の討論会の日です。みんなと一緒にテーマに沿って討論して、みんなで一緒に噂の真相について迫っていきましょう!!最後はわれらのマスターガイストが真相についての答えを出してくれるはずです。」


「さてさてさてさて、今日の題材は......みんなも今使っているVRについてです。我こそは!!または何か言いたい!!と言う方はすぐに参加ボタンを押してください。抽選で5人の方に、この舞台に出て来てもらって討論してもらいます。ちなみに、抽選に漏れた方も、ただの観客の方もツイートすると、この大画面に表示されるので気軽に発言してね!!」


メイドアバターのミイナのアナウンスの後、しばらくしてから参加の募集が打ち切られ、そして5人の代表が発表された。


「それでは発表したいと思います。一人目は...豆の大人さん、二人目は..コズエさん、三人目は...ラーメン味噌男さん、四人目は...ミントさん、そして最後は.....金封マンさんでーす。みなさんおめでとうございまーす!!」


名前を呼ばれたアバターたちは競技場の中央に設置された舞台の上に集まってきて、そこにあった円卓の机の席についた。


「それでは誰から始めましょうか?」


豆の大人:「じゃー一番最初に名前呼ばれたんで、僕からにしましょうか?僕は『豆の大人』って言います。VR使って、働かない組みに入ったくちです。VR使っている時間はかなり長くて、食事、睡眠とトイレ以外はVR使ってます。仮想空間では彼女はいるけど、現実ではいないし、どうせならもう脳移植して生理的な機能をとってしまおうかと考えてるですけど、実際どうかなと思って、みなさんの体験談が聞けたらいいなとおもってるんだけど、どうでしょ?」


金封マン:「脳移植って基本は医療目的でお年寄りとか身体が不自由な人たち向けだよね。まだ若そうだけどもうあがっちゃってんね。」


ミント:「あら?これからはそれが主流になるんじゃないの?まだ実用化されてから数年だから利用者が少ないだけで...仮想空間の方が便利だし、なんでもできてしまうんだからわかるきがするわ。」


ラーメン味噌男:「でも身体は維持したいよ。それに脳移植した人は脳だけのはずなのに長生きしないっていう噂は聞いたことあるよ。」


金封マン:「それね。俺も聞いたことある。でもVRのやりすぎで寿命が短くなるっていう噂の派生だったとおもうんだけど...確か、働き組と働かない組の寿命を較べた時に働かない組の寿命が短いって研究データがあるらしい。」


豆の大人:「VRやりすぎって寿命縮まるの?」


ラーメン味噌男:「それは脳だけに負担かけてるんだからそうなるのは想像に難くないよね。」


金封マン:「今はその不具合を軽減するためにVR酔いの軽減とか改良されているけど、負担があるのは間違いないだろうね。でもVRのせいっていうよりも、VRが便利すぎて身体を動かさないのが原因っていうのが原因かもしれないし...」


豆の大人:「確かに僕は現実世界では全く運動してません...」


ミント:「このデータかな?過去5年のVR使用者の平均寿命を労働者と非労働者でわけて算出した場合、非労働者が18.4%も低くなってるわね。労働者の寿命はVR使わない人達の平均寿命とあまり変わらないから、この18.4%は脅威ね。」


ラーメン味噌男:「ってことはVR使う事自体はあんまり影響ないってことだよね。」


豆の大人:「それって情報源どこですか?AIやVRの反対派の仕業かもしれません。彼らは頻繁にデモやって事件沙汰になってますから...」


ミント:「出典は厚生労働省ってなってるけど....」


ラーメン味噌男:「18.4%はさすがに高すぎるでしょ。一般には報道されてないからガセネタか政府が隠蔽しているかのどっちかだね。」


金封マン:「政府が隠蔽か...そういえば、今のAI社会の転換期になったのは亀山総理大臣の時だったよね。原因は確か役所の不正発覚で前千堂総理が辞任して、不正をなくすためにAIを導入しましょうって流れで。確かにAIで効率化された世界にはなったとは思うけど、それで何かの不正が無くなったかどうかはまだ判断の難しいところだね。」


豆の大人:「それではこのデータが真実だったとし、政府が隠す必要があるんですかね?」


ミント:「それはお金が動いているからじゃない?それで得をしたのって...」


ラーメン味噌男:「勝ち組は明らかにAI、VR、アンドロイドの技術を独占している近衛財団だろうね。今世界で一番設けている財団だから。脳移植技術の開発とそれに伴う最新のVR機器の販売と管理で一気にきたよね。」


金封マン:「その前はエレクトロオプティカル(EO)社がVR関連は主流だったけど、それも取り込んで。さすが近衛の財力だ。EO社はかなり最先端を行っていたのに、買収されるなんてもったいなかったな。もうちょっとまってれば巨万の富を手に入れられていたのに...」


豆の大人:「近衛グループですか...確かに近衛グループなら政治家とのつながりはあるでしょうし、何か隠していても不思議ではないですよね。でも、みんなが使っているデバイスもおそらくは近衛エレクトロニクス(KO)社かその関連会社のものだと思うし、もうなくてはならないものになっているのは事実で、そのデータが公表された所で労働組に入ろうと思う人は少ないんじゃないのかな...」


ミント:「よくも悪くも、近衛財団にこの国がどっぷりってことね。」


コズエ:「あの!!...全然会話に参加してなかったんですけど、私は脳移植したんですが...」


会場からはどよめきが起こった。


豆の大人:「コズエさんは脳移植したんですか!!それで、感覚としてはどうなんでしょう?」


コズエ:「私は事故で体のほとんどが不随の状態でになってしまい、顔の方も眼底骨折だったので綺麗に修復するのは難しいという事で、脳移植をしたんです。ですので、生理機能をとることが目的で脳移植をしたわけではないのですが、慣れれば生活には問題ありません。まだ発展途上の部分はあるらしく、定期的にメンテナンスをする必要があるんですけど、5年使っていますが今のところは特に問題ないです。ただやはり、味覚のセンサーが複雑化していないせいか、味の感じ方が昔とはまったく違うのは悲しいところです。また私は仮想世界よりも、現実世界を充実して過ごしていたので、夫との体のふれあいが無くなってしまったのはやはりつらい経験でした。たしかに脳は私で人間に似せたロボットなんて抱きたくないですよね。なので、そのような観点がクリアできるのであれば、脳移植をしてもいいのではないでしょうか。」


ミント:「コズエさん話してくれてありがとう。やっぱり、脳移植は主に治療が目的で行われているものなのね。」


豆の大人:「やっぱり経験者ではないとわからないことって多いですよね。コズエさんありがとうございます。簡単に答えを出すのではなく、もうちょっとゆっくり考えた方がいいのかなぁ...現実に、あるとはおもいませんが、彼女できないともかぎらないし。そしたら肉体がある事は大事かもしれません。」


ラーメン味噌男:「脳移植はいつでもできるから早くからやる必要ないって事で結論なのかな?」


メイドアバターのミイナが発言をした。


「はーい、みなさーーん!!それでは豆の大人さんの疑問がひと段落したところで、われらがマスター、ガイストにお言葉をいただきましょう!!」


「みんなで呼んでみましょう。せーの...」


「マスターーーー!!」


雷がなって灰色の雲が空に立ち込め、その中から片手に鎌を持った死神の装いをしたマスターガイストがゆっくりと降りて来て舞台上に着地した。


「今日はみんなが興味をもっているテーマでよく議論してくれた。いままで明らかになっていなかった噂を知るいい機会になったのではないかとおもう。私からも今までのテーマに沿って話された真実を提供したいと思う。さきほどからみんなで話いている厚生労働省のデータだが、本物だ。厚生労働省の末端端末で書かれたログが残っている。その端末の他の資料を探ってみると冒頭での噂についての資料があった。それによると....」


ガイストの動きが一瞬止まった。


「脳移植者の38%で脳機能の低下や死亡など何らかの異常が報告されている...」


会場からはどよめきが起こった。


コズエ:「38%って...」


金封マン:「脳移植が開始されて数年でその数字って技術が不完全ってことなんじゃ...」


ミント:「厚生労働省はデータを隠蔽しているのね。」


ガイスト「しかし、これも労働者、非労働者でわけるとその数字が全く違ってくる。労働者の場合はたったの0.4%になっている。ということは38%ほぼ全てが非労働者といことなる...」


コズエ:「それっていったいどういう事?」


ミント:「意図的に操作されているとしか思えないわね。」


コズエ:「差別されているって事?」


ガイスト「技術開発者は近衛和久、近衛エレクトロニクス(KO)社になっていて...今は近衛エレクトロニクス(KO)社の社長だな。」


金封マン:「近衛エレクトロニクス(KO)社と政府がぐるになって非労働者を差別しているってことになるよね。」


豆の大人:「差別といえば人物のAIによる価値認定も政府主導で行われていますよね。」


ミント:「こうなると国のAIによる意思決定も客観性に疑問が残るわね。」


コズエ:「私そのうち死ぬのかな...」


ラーメン味噌男:「これはみんなで告発すべきなんじゃないのかな。」


金封マン:「でも証拠は?マスターガイストの資料じゃ正規の情報じゃないし、何の立証にもならないよ。」


ミント:「それもそうね。私たちでどうにか確たる証拠を集めなきゃね。」


ラーメン味噌男:「みんなライブでこれ見てるわけだし、みんなで頑張れば何かつかめるかも。」


ミント:「じゃー私はみんなが情報提供できるようにサイトを作っておくわ。」


金封マン:「それはいい事かもね。」


メイドアバターのミイナが発言をした。


「はーい、みなさーーん!!それではひと段落したとおもうので今日の討論会はここまでにしましょう。とても有意義な討論会になったのではないでしょうか。討論会は終了しますが、いままでのことで情報提供サイトとか、もっと関心がある方はミントさんのところで引き続きお話しでいいですかね?」


ミントがうなずく。


「それと、また我らがマスターに用のある方はメールボックスに投稿しておいてください。マスターが読んでくれるとおもいます。それではみなさん、今日は討論会に来てくれてありがとうです。また明日お会いしましょうね!!ばいばーい!!」


するとメイドアバター達とガイストは会場から姿を消した。


ガイストが去った後も衝撃の事実に会場はざわついていた....





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