第5話 VR研究会
直人はVR研に入るためのドアを開けた。
その中はとても広く、大きく分けると二つの区画からなっていた。
ひとつはいくつかのソファーと長机が置いてあるスペースで入口から入るとすぐある区画である。もう一つの区画はソファーの区画とガラス張りの壁でくぎられていて、いくつものコンピューターがある区画だった。ソファーには3人座っていたが、そのうちの一人が直人たちの方へ歩み寄ってきた。
「新入生?入会希望者ですか?」
「今日はどんなものかと見学に来ただけなんですけど、見学させてもらっていいですか?」
啓太が尋ねる。
「もちろん、もちろん。新入生は歓迎するよ。しかも6人もなんて嬉しい限りだ。今の時代VRはなくてはならない技術だけど、スポーツ系のクラブと比べるとオタクっぽくて地味だからね。」
「まずは自己紹介で、僕は副会長をしている宇津木聡と言います。3年生です。それとそっちに座ってるのが水田さんと遠藤君です。」
二人は軽く会釈した。
「会員は今のところ幽霊会員も入れると、2-3年生で13人です。」
「そして....今いるところは会議室兼休憩所で、歓談するところでもあるけどできたものの発表会のために使ったりもします。」
そう言うと宇津木は投射用のシャッターを下ろしてみせた。
「いちお東京帝都高校は日本一のレベルの高校なので結構潤沢な研究予算がもらえていて、ここからいくつかの作品が国や企業に採用されているんだよね。で、そのお金がまた研究会の活動資金になる仕組みになってます。」
「そしてガラスで仕切られている向こう側が開発研究施設になってます。どのデスクにも基本的に最新型のコンピューターと高解像度ディスプレイ3つをつけていて、作業しやすい環境になってます。視覚デバイスとか触った感覚を感知する触覚感知デバイスとかの開発は向こう側の端の机のある場所になってます。工具とかも一式揃ってる感じで、足りなかったら会費で注文してます。」
「活動内容としては文化祭用のVRゲーム作成と年にいくつかあるVR作成コンテストに参加ぐらいだけど、個人的な開発で特許を取ったりすると、企業または大学から採用のオファーを受ける事があったりします。今年は会長が視覚デバイスの知覚センサーを大幅に向上されることに成功して、東京帝都大学からすでにオファーが来ているみたいなことを言ったので、自分の進路にも活かせる所にはなっていると思います。でもそんな堅い事ばっかじゃなくて、できた作品でみんなで遊んだりしてて、幽霊会員もいるけど楽しくやってる感じかな。以上おおざっぱだけどそんな感じです。何か質問ある?」
「VRの開発には情報の自己処理の為にAIが必要だとは思うのですが、AI独自の開発はやっているんですか?」
直人が質問した。
「AIに関しては既存のモデルのを基本的には使っていて、必要があればアプリケーションで少しいじるくらいかな?例えばすべて完璧に処理するよりもエラーを少しだすようにするとVR中のアバターの行動、発言が予想できなくできたりして、それはそれで面白かったりするので。後は何か特別やりたいことがあれば応相談って感じかな。」
「そうですか。基本的にはなんでもやらせてくれるんですね。」
「そうだね。わからないけど一般の企業と同じくらいの水準はあるんじゃないかな?」
近衛柊子が口を開く。
「私たち近衛グループの会社に較べれば、こんなところ低水準だわ。相葉直人、VR関連で研究開発したいのであれば、なおさら私と婚姻を結ぶべきね。あらゆる環境を私はあなたに提供できるわ。」
柊子の発言にみなあきれた顔をみせたたが、宇津木だけは違った。
「君は近衛グループの人なの?最新型のグラスゴーグル型エンペラーモデル5の性能は本当にすごかった。あんなものができるなんて本当にすごい。しかも展示会でみたフルダイブ型の試作品も触覚センサーを液晶にするっていう発想がすごかった。もちろん、そんなものを開発できる会社とは比較しようがないよね。ここのは近衛グループからの製品もいっぱいあるし、会社の人ともコンタクトがあるし、君名前は?是非うちの会に入ってくれない?」
柊子は宇津木の反応に少しびっくりしたが、少し自慢げな顔になった。
「もちろんよろしくてよ。私の名前は近衛柊子、近衛財閥、近衛一郎の孫です。なんなら、開発の為に機械でも人材でも会社からいくらでも提供するわ。」
柊子の言葉に宇津木の目が輝く。
続けて春彦が発言する。
「フィアンセの柊子さんに全部負担させるわけにはいきません。僕には運用資金はださせてください。」
春彦の言葉に宇津木の目が輝く。
こうして直人についてきただけだが、柊子と春彦の入会が真っ先にきまった。
他の4人も結局入会を決め、VR研究会での6人の新たな学校生活が始まった。
やっと説明回が終わり、これからまだまだ続きます。ブックマークお願いします。
今のところは話が進んでいないので何ともですが、感想、評価もいただけると嬉しいです。