第4話 人気者の性
直人は啓太と一緒にVR研の前まで来た。直人にとっては来たというよりは辿りついたといった方が正確かもしれない。当初の予定では二人で行くはずだったが、なんだかんだでVR研の前に着くまでには計6人になっていた....
須藤里香とはその後午前中を費やし二人の時間を楽しんだ。
体調が悪かったのは本当だったし、何よりもこの高校、そしてこの国が交際を推奨しているのだから今の時間を大切にしたいと直人は思い、授業をさぼることに対しては何の後ろめたさはなかった。それよりももっと里香の事を知りたいと思った。里香と話していると、その声、話し方、しぐさ全てが直人を癒しているように感じられた。まるで彼女から直人の為だけに癒しの粒子が放たれているかのようだった。
一方、里香も最初は告白されてびっくりしたが、直人のかわいらしさに加えてその話の奥深さを知って自分の答えが正しかったと感じていた。何よりも自分がドキドキしている。自分が直人を好きになっていっていることを肌で感じていたのだった。
二人は午後からは授業に参加することにしたが、放課後一緒にVR研に行く事を約束した。
その日最後の世界史の授業がおわり、直人がデータの保存をしてからVR用のゴーグルを外すと目の前には近衛柊子が立っていた。直人は一瞬驚いたが、それと同時に柊子は話を切り出してきた。
「相葉直人、あなたは私と一緒に生徒会に入りなさい。」
「あなたのような極めて優秀な人材はこの学校でもトップに君臨し、学校を指揮するべきなのです。あなたの頭脳の素晴らしさはすでに証明済みですから、あとは私と一緒に生徒会で学校を指揮、管理することを一緒に覚えればいいのです。その経験は将来近衛グループを統括するのに必ず役立つことでしょう。それに生徒会で一緒にすごしさえすれば、あなたは私の虜になり求婚を求めるはずです。」
直人があっけにとられていると、また伊集院春彦がやってきて話を遮った。
「だから柊子さん、相葉などのどこの馬の骨ともわからない低俗で身分の低いやからではなくて私と生徒会で一緒に指揮をとるべきです。そもそも私はすでに人を使うことには長けていますし、使用しているメイドの数も柊子さんには負けないでしょう。いくつかのイベントで大使として出席することもありますし、いろんな方面で顔がききます。それを生徒会でいかせれば.......」
「そんなことは私がやればいいだけのことです。私ができないものを私のパートナーには担って頂いて、来るべきこの国の未来を......」
話が長くなってきたので、直人はまたこっそりと抜け出そうとした。
が、今回は柊子につかまってしまった。
「今回は逃がしませんよ。」
「そんなこと言われても今日は友達とこれからVR研究会に行く予定で、もう行かなきゃいけないんだけど...」
「VR研究会。あなたはそこに入るつもりなのですか?」
「今回は見学だけだけど、おそらくは....」
「では私もいきます。とにもかくにも私の魅力を伝えるには一緒にいる時間を増やす必要があるのですから。それと生徒会とVR研究会を掛け持ちしなさい。その方があなたのためになるでしょう。」
そこに七瀬茉由が近寄ってきた。
「直人、VR研に入るの?私も見にいこうかなー??」
柊子の矛先が茉由に向く。
「直人?呼び捨てとは、貴方は相葉直人とどういう関係なのですか?まさかあなたが恋こがれて、一方的に好意を示してそのような呼び方を?それはいけません。相葉直人の気持ちを考えるべきです。一方的では相葉直人が迷惑するだけです。私があなたにアドバイスしましょう。そういうことはやめなさい。」
茉由はあっけにとられた。
「茉由は幼馴染なんだ。茉由、啓太と行く予定だから一緒にいく?」
「牧野くんも一緒なのね、うん行く。」
「じゃー柊子も行こうか。」
近衛柊子は自分が『柊子』と呼ばれたことにドキっとして、顔がぽっとなった。
「はい、もちろん行きますわ。」
3人はB組の教室にいったが、なぜか伊集院春彦も後ろから一定の距離をとってついてきた。
「啓太~行くか!!里香もいける?」
直人の言葉に直人と里香以外の全員が驚いた。
「直人は須藤さんともう知り合いだったの?」と啓太がきりだした。
「うん。俺の彼女になってもらった。」
直人と里香以外の全員が「えーーーーっ!!!」と驚きの声を発した。
里香は恥ずかしくなり顔を赤くしてうつむいた。
近衛柊子の顔も赤くなったが、里香とは別の理由だった。
「いつから?」
「今日から」
「今朝あんな話してて、一日でお前に彼女ができると思わなかったよ。びっくり!!なおと~須藤さんを射止めるなんて、お前はかなり数の男どもを敵にまわしたな。B組の天使だったのに....」
「俺もびっくりしたよ、偶然天使が現れて救われたんだから。」
「わ...私はそんな交際は認めません。そもそも...どこの馬の骨ともわからない女に相葉直人を渡すわけにはいきません。相葉直人の能力を活かすことができません。それに私の魅力に気づく前に交際をしてしまっただけの話で、一緒にいさえすればかならず相葉直人は私に求婚するはずです。私は須藤里香、あなたに宣戦布告します!!」
そこへまた伊集院春彦が口を挟む。
「だから柊子さん、相葉などではなくて私と交際するべきです。身分の低いものは低いもの同志がお似合いということですよ。高いもの同士一緒になってさらなる高みを目指しましょう!!」
「春彦さんは黙ってて、これは女同士の戦いなのですから。」
「モテる男はツライね〜」啓太がちゃかす。
「近衛さん、そうですね。直人さんと一緒に居てはどうでしょうか?私も今日直人さんと初めてお会いして、素敵な人だと思いました。ですがまだ私でいいのか分かりませんし、二人の気持ちがどれけ強いものなのかもかわかりません。近衛さんが居る事でどれだけ二人の気持ちが強いのか、または強くなっていくのか、そう言う所がゆっくりと判断出来ればいいのではないでしょうか?」
「私に当て馬のように振る舞えとおっしゃているのかしら?いいでしょう。あなたから相葉直人を奪ってあげましょう。余裕をこいて後悔なさらない事ね。」
「まーまー今日はそこら辺にしてVR研に行こう」
そう言って直人は里香の手をとって二人は歩き出した。
近衛柊子はその様子をヤキモキして見ながら後ろから付いてきた。
春彦は「てをつなぎましょうか?」と柊子に言ったが、ただ無視をした。
茉由は啓太と一緒に歩いていたが、意味深げな目で先を行く直人たちをみていた。
そんなこんなでやっと一行は「VR研究会」とかいていある表札がかかった部屋の前までやってっきたのだった。
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