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マスターガイスト  作者: 諏訪未来
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第3話 春の現


<<校門にて>>


ーーー 新聞部お願いしまーす....バスケットボール部でーす....サッカー部でーす...茶道部はお茶出してまーす..... ーーー



「毎日勧誘すごいね。直人はなんか部活入るの?」


「んーVR研究会ってのがあるからそれにしようかなと思っているんだよね。」


「VR研究会か。」


「インフラの整備とかの仕事はもうアンドロイドが全部やってくれるから、人間に残された仕事は仮想空間での娯楽の創作かVRのフルダイブ技術とかの研究開発だろうし、今から何かできないかなって思っているんだよね。」


「真面目だなぁ...恋愛に現を抜かすって事はないの?」


「その予定ではいるんだけどね。」


「VR研究会に入っても恋愛できる程余裕って事か。」


「というよりも今捕まえておかないと、卒業後はもう整形だの擬態だのオリジナルが消失しちゃうでしょ?だから今のうちにオリジナルと恋したいなと思っているだけ。」


「まぁ子孫を残すにしても、オリジナルがどんなかわからなかったら、子供が生まれても似てなーーいって事もあり得るだろうからね。オリジナルを知っておく事は大事だね。」


「そそ。高校までは脳が成長するから脳移植はできないし、オリジナルを知れる最後のチャンスって訳。本気で恋したいじゃん?」


「直人の言葉とは思えないな〜」


「ほら俺は家族を亡くしたでしょ?もちろん叔父さんには感謝してるし家族だとは思っているけど、普通の家族の温かみってあんまり経験できなかったから、自分は暖かい家庭ってやつを作ってみたいと思っちゃうんだよね。そう思うと何も飾ってない素を出している子と知り合えたらと思っているの。」


「確かにな〜俺も父親亡くしているから分かる気がする。だから近衛柊子とか来ても振っちゃう訳ね?」


「あれは極端でしょ。あの財閥に入ったら自分が自分でいられなくなる気がするし。それに、いまは子供生むのも胎盤型装置に受精卵を預けて産むのが可能だから、なんかあの家だったら機械的に全部済まされそうで虚しい気がする。」


「名門に生まれた性みたいなものでああなっちゃうのかな?」


「本人は至って真面目に自分のすべき事をしているだけだとは思うけどね。で、啓太はどっか入るの?」


「直人がVR研究会に入るなら、俺も入ろっかな〜、娯楽の創作ならできそうだし。いっぱいかわいいアバタ作って、それを手に入れるゲームとか楽しそうだし。」


「今の世の中そういうゲームをして時間を費やしている人多そうだよね。」


「今流行っているのか...今流行ってるのはライブ配信かな?...『ガイストの真実の世界』って知ってる?今一番流行っててなんでも悩み事を解消しちゃうっていうガイストがカリスマ的人気なんだよね。ガイストは他のゲームにたまに現れて、無敵の強さで優勝をかっさらって行くの。誰も知らないような秘密までバラしてくれるから、ライブ配信時の『ガイストの真実の世界』はアクセス数世界一なんだって。それだけで相当儲けてるはず。まぁ今の時代、お金はほとんど必要ないけどね。なんかそんな感じの流行るサイトつくりたいな〜」


「啓太ならできるんじゃない?いつも女の子受けいいし。相手の気持ちわかりそう。」


「そう?そうだよね?流石直人くん、わかってるね〜!!ははははは.....」


「じゃー早速放課後行ってみようか?」


「よしっ!!いこー!!」




★★★★★★★★★★



直人は教室に行く前に図書館に向かった。東京帝都高等学校は日本トップの高校ということもあり、その蔵書数は日本の高校で一番であった。洋書から専門書、新聞に至るまであらゆるジャンルの本がそこにはあった。また試験前には生徒たちにこぞって利用され、たくさんの自習室も完備されていた。


直人は検索コーナーから新聞の貯蔵庫へ行き、7年前の2118年の11月23日からその後10日間の新聞を探した。


―――


東京郊外にて一家惨殺 子ども一人は生存


11月22日東京の八王子市で、その家にすむ相葉博嗣さん一家が何者かによって殺害された。家の中は荒されており物取りの犯行が疑われたが、遺体にはそれぞれ数か所刺された跡があり、怨恨の可能性も含めて警察は捜査を開始した。なお相葉博嗣さんの長男は生存しており、警察は..............


―――


各社とも一面でこの事件のことを伝えてる。


母親の遺体....妹から流れ出していた血......そしてあの匂い.....


直人の頭のなかにあの映像がまた浮かび上がってきた。


直人は冷や汗をかき、めまいがしたが、一つ一つ自分の持っていた電子デバイスでその記事をコピーしデジタル情報として移していった。それが終わると壁に片手をつき、壁をつたいながら出口へ向かった。


そこへ一人の女生徒が来て「大丈夫ですか?」といって肩をかし、直人を図書館の外まで連れ出してくれた。直人は図書館の横にあった桜の木の下に倒れるように横になった。


「大丈夫ですか?落ち着いたら保健室にいきましょう。」


めまいで視界が定まらなかったが、目の前にはとても美しい女の子が座っていた。その美しさに定まらなかった視界が定まり、直人は自分がその女性に見とれていることに気づいた。


「ありがとう。でももうちょっと横になっていれば大丈夫だから。」


「本当ですか?保険の先生よんできますけど?」


「ほんとに大丈夫、こんなきれいな桜の木の下で、君みたいなきれいな子と二人きりで居れるんだ。そりゃすぐに気分もよくなるさ。」


女生徒の顔が赤くなった。


直人はハッとし、自分がくさい言葉を無自覚に言ってしまったと気づいた。


「私でよければ喜んでここにいますよ、相葉直人さん。」


女生徒は美しく微笑み、直人の手を握った。


春の日差しに桜の花びらがひらひらと舞い落ち、美しい空間が二人を包む....


しばらくしてから直人が口をひらいた。


「ところでなんで俺の名前知ってるの?」


「それは入学式で代表で挨拶してたから、あなたは有名人ですし。」


「そう言えばそっか...」


「図書館で何かあったんですか?気分が悪くなるなんて....」


「探し物をしていたんだけど、紙媒体の情報ならここで得られるんじゃないかなと思ってね。でも酔っちゃったみたいね。」


「そうですか。病気でないのならよかったです。」


「君はどうして図書館に?」


「それは単純に本がすきだからですよ。」


「普通はそうか。」


二人は笑いあった。


「あの....君のお名前は?」


「すみません、名乗ってなかったですね。1年B組の須藤里香です。」


「里香さんか...いい名前だ。」


「そうですか?そう言ってもらえると嬉しいです。」


「あの~初対面なんだけどさ..........」


「俺と付き合ってくれない?」


里香はびっくりしたのと恥ずかしいのとで顔がまた赤くなった。


そしてしばらく考え込んでから口を開いた。


「友達からでよければ....よろこんで。」



読んでいただきありがとうございます。まだまだ続きますのでブックマークお願いします。

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