プロローグ
残酷な描写が含まれています。
「キーーン コーーン カーーン コーーン」
私立崎朋小学校で17時を告げる鐘がり、学校に残っていた子供達は一斉に帰り支度を始めた。相葉直人も友達と一緒に校庭で遊んでいたが、ランドセルを背負って帰宅の途につく。
「じゃーまた明日ね。」
直人は友達と途中の道で別れてから自分の家へと足を向けた。
そのまま歩みを進めていくと、自分の住んでいる家が見えて来る。
直人の家は庭付き一戸建ての一軒家ではあるが、隣接する他の家々と比べても平均的なたた住まいで、特に目立った外観ではなかった。しかし、冬になりかけのこの時期のこの時間は、日も暮れて、家からの暖かい灯りがいつも直人を出迎えてくれるのだった。
だが、その日はいつもあるはずの家の灯りが全くついていない。
「あれ?みんな出かけているのかな...」
直人はドアノブに手を掛けてみる。
玄関の鍵は開いていた。
そのまま玄関の扉を開けたが、その中の光景を見て直人は声を失った。
薄暗い家の中で妹の楓がうつ伏せに倒れていたのだった。
そしてその身体からは赤黒い血が流れ出している。
背中には数カ所何かで刺された切り傷があった。
「かえで........」
直人はゆっくり楓に近づき、右手の指で楓の頬を触ってみた。
その顔はもうすでに冷たくなり、明らかに死んでいるのがわかる。
直人は嫌な予感がして、恐る恐る家の中に入ってみた。
「なんなんだよこれは.....」
静まり返った家の中はどこもかしこも荒らされていて、さらに、あちらこちらに血がとび散っていた。
その光景に身体がこわばり身体がうまく動かない。
ようやく辿り着いた台所では、床でうずくまって死んでいる母の姿を見つけた。
母の身体にも、腕や背中など複数箇所刺された跡がある。
「お、お母さん.....」
直人の目からは悲しいと言う感情よりもストレスのせいで涙が溢れ出してきた。
溢れた涙は床に落ち、そこにあった母親の血と混じって行く...
直人の体はますます強張り、直人は息ができなくなっていく.....
空気を求め、直人はよろけながらも外へ向かう...
しかし、視野はどんどん狭くなって行く.......
そして、ついに直人は気を失ってしまう。