青と白
憧れたのはあの空でした
落下しているという感覚が薄れ、飛んでいるような感覚に支配された。
流れる風景と硝子に私の影が重なる。
私は青い空に憧れた、独りの救えない少女だ。
3秒の間、私は走馬灯の様に流れる記憶に涙を流す。
その涙さえ私を置いてきぼりにしていくけど。
私はあの時、どうすれば良かったの?
落ちてく貴方を追って空を飛べば良かったの?
落ちる前に貴方を引き留めれば良かったの?
それとも、空に憧れなければ良かったの?
ねぇ教えてよ。
貴方はもう白い羽を持ってあの青い空を飛んでるんでしょう?
ならせめて私の隣を飛んで。
そして子守唄を歌って眠らせて。
1秒。
地面はすぐそこ。
あの青い青い青い真っ青な空は足元、遠い遠い遠い遠い記憶の中に貼り付いて消えない青。
嗚呼、やり直せるならやり直したい。
そんなほんの一粒の後悔もあの空に呑まれて消えていく。
私の心と声と涙と思い出も。
*
一人の女性がビルの10階から飛び降りた。
その落下地点に響き渡るは悲鳴とサイレンの音とシャッター音。
*
世界は無情で残酷で冷酷。