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ふわふわウサギちゃんの一生  作者: 星天おとぎ
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ふわウサちゃんその後

あの日、ふわウサちゃんの屍体を、タヌキ村にそびえる一本杉の下に埋めたのは、ぽんポコりンだった。


ぽんポコりンは、通りすがりの若者に化けて、ニンゲンたちからウサギちゃんを取り返してきた。そうして、ウサギちゃんをだいじに埋めた。野菊を一輪、盛った土の前に供え、手をあわせる。


「ウサギさん……」


ぽんポコりンは、これまでも、シャーロッド街道に出て亡くなった、数多くの仲間たちを見てきた。一本杉のまわりは、だから安らかに眠る仲間たちで賑わっていた。


「また、救えなかったのか……」


シャーロッド街道へ往く仲間を見つけるたび、ぽんポコりンは声をかけてひきとめようとしてきた。説得は、けれど、うまくいかないことのほうが多かった。今日だって、「旅に出る」と云うウサギを、ふわふわでかわいいウサギを一羽、なくしてしまった。


「……」


ーー救えなくてごめんね。


その一言を飲み込む。


このことばは、一体 誰に対しての申し訳ないきもちなのか。


死んだ仲間は帰っては来ない。そもそも、彼らは、タヌキに救ってほしいなどと、思っていなかっただろうに……。


ただ、詫びを入れたくなるこのきもちが、常に ある。それはタヌキを離してくれない。きっと、仲間たちを救いたくても救えずにいる、ふがいない自分自身に対して、謝ってでもいるのだろうか。……


「ぼくは、ろまんちっく、なのかな……」


ぽんポコりンは、そっと墓前から立ち上がり、ぽんぽこぽんぽこと、立ち去っていく。東雲の曙光が、そのタヌキの正面で地平線をわずかに揺らして、うすい影が、大地に落ちる。



ーーむくっ、とそのとき、何かうごめくものが朝日に照らされ、色を帯びた。ふわウサの墓から陽炎のようにユラユラと立ちのぼった、それは、淡いももいろのはなうさちゃんストラップだった。ふわウサのおきにいりで、ももいろのリュックにくくりつけられて、旅についていったのだった。


「ハナウサ……ハナウサ……」


ストラップは妙な音を出しつつ、空気中を漂う。そうして、サアッと吹く一陣の風にのり、どこか遠くへ飛ばされていく。


「ハナウサ……ハナウサ……」


そのストラップが流れ着いたのは、はなうさちゃんのお屋敷だった。ウサギノ森の東端、朝日がいちばんに降りそそぐ場所に建っている。


「……ハナウサ……ハナウサ……」


こつん、と、それはお屋敷の入り口である木の、ぶくぶくと大地から盛り上がった太い根のひとつにぶつかり、ぱちん、と音を立てて弾ける。後には静寂が満ちる。


……それをかろやかにやぶったのは、はなうさちゃんだった。


「ふあああっ、おはよう、朝」


はなうさちゃんはちょうどお屋敷から出て来て、入り口の前で大きく、伸びをする。


ザアアアッと、木の葉がこすれる音が頭の上から降ってくる。耳をぴょこんと立てて、木の根元にぴょんこと腰かけると、まるでつい先程までそこに何かが座っていたかのように、冷え切らぬぬくもりが残っていた。はなうさちゃんはふっと笑って、そばにあったぶくぶくの根のひとつを、そっとなでた。




ふわウサの死後にも、それぞれだいじな想いを抱えて動いてゆくのですね。もしかしたら、まだつづいていくかも知れません。……

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